登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
☆主人公は、村長のEと大工のDです。
【今回の登場人物たち】
D(大工) 大吾 デイビッドF(Dの弟子) 文也 フランクG(Dの弟子) 弦 ジョージM(ダズンのヘッド) 正道 マックスβ(ダズンのメンバー) 米太 ベイリーダズン(不良グループ→Dの見習い集団)E(村長&バーテンダー)栄一 エデン
本編でMとダズンが初登場した話はこちらです ↓
今回の話は、「第16章 見えない才能」の
続編ですが、本編を読まなくても大丈夫ですよ。
では、どうぞ。↓
見えない肩書(4)
弟子と見習いの間で選挙をすることになったのを
Fたちから聞き、親方のDは大笑いしました。
「そんなことやってたの?ははは。面白いな。
オレにも投票させてくれよ」
大工集団の全員がそろい、進行役になったM。
「親方の下にいるみんなで
誰をリーダーにするか決を取ろうと思う。
FとGさんと俺の3人が、それぞれ意見を言うから
それを聞いて、みんなで投票して欲しい」
まず現在リーダーのFがニコニコして言いました。
「おいらは正直、
リーダーなんてどうでもいいと思ってるっす。
みんなで仲良く仕事がしたいだけっす。以上っす」
続いてGが、瞳の奥を燃やして言いました。
「僕は、親方をサポートして
仕事をきっちりと回していきたい。
そのためには、このグループに
しっかりしたリーダーが必要だと思う。
で、僕は自分をかなり適任者だと思う。以上」
最後にMが、静かに自分の思いを継げました。
Mには、リーダーとして選んでもらう事よりも
目の前の仲間に言いたいことがありました。
「・・・俺は、ダズンのヘッドとして、
ずっとみんなを率いてきた。
ここに来てからは、親方たち3人とダズンとの間を
つなぐ役目を、少しは果たしてきたつもりだ。
だけど、やめたいって人が出てきて・・・
正直、俺は戸惑ってる。
本音を言えば、これからもみんなと一緒に働きたい。
けど、それを無理に押しつけることはできない。
たとえダズンのみんながいなくなっても、
俺はここに残って、末端としてでも修行をするつもりだ。
今まで、一緒にやってくれて、本当にありがとう。
・・・以上だ」
Mの言葉の後、一瞬、静寂が流れました。
誰も言葉を発せず、空気が止まったようでした。
ダズンのメンバーたちは、元ヘッドのMの「本気」を
ひしひしと感じ取っていました。
本当はーー、Mも含めて全員で抜けて、
また不良仲間として気ままにやっていけたらいい。
そんな甘い夢を持っていたのです。
けれど、Mは違いました。
仲間への思いを残しつつも、自分の道を選んでいる。
「Mがいないダズン」なんて、果たしてダズンと言えるのかーー。
そんな思いが、皆の胸にじわじわと広がっていきました。
ダズンの一人であるβは、自分に向きあいました。
ーーひょっとしたら、自分はGの言葉を言い訳にして、
ただ逃げたかっただけじゃないか?
ーー大工という仕事に、最初から真剣に
向き合っていなかったのではないか?
ーー適当に指示を聞き流していたから、
Gに注意されたのでは?
そんな後悔と疑問が、βの胸を締め付けるのでした。
ダズンの他のメンバーたちも、それぞれ
何かを感じ取ったようでした。
ポツポツと小さなざわめきが広がり、やがて、それも
自然と静まっていきました。
そして投票タイム。
候補者たちも、親方のDも、票を入れました。
箱の中に、15枚の紙。
(ダズンはMを含めて12人。それとD、F、Gの3人。)
投票結果を調べると、内訳は、
Fが11、Gが2、Mが2で、Fの圧勝でした。
「え?おいら?何で?」
と、Fはぽかんとしました。
「あなたがリーダーです。よろしくお願いします」
Mはそう言うと真剣な目でFを見ました。
「そ、そうなんすか?じゃあ、これまで通りで。
みんなで楽しくやろうね」と笑うF。
「僕は、先輩がリーダーなら、文句はなにもありません」
と言いつつも、ちょっとくやしそうなGでした。
そんな彼ら全員をニコニコしながら見ていた親方のD。
その日の夜のバーで水割り片手に、
バーテンダー姿のEに、事の顛末を話します。
カウンターの奥のEは頷いて、
「それは見ごたえがありましたね」とほほ笑みました。
(続く)
