小説です。「百輪村物語」の第三部です。

 

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登場人物名は、アルファベット表記です。

(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)

 

 
【今回の登場人物たち】
百輪村の人
V(元SE・パートタイマ) 美々 ビビ
E(村長・教諭)     栄一  エデン
 
草切村の人
草切マーケット・店長  (No Name)
α(パートタイマ・気弱) 在子  アルマ
δ(パートタイマ・賛同) 丑実  グロリア
γ(パートタイマ・強気) 寅代  デイジー

 

 

では、どうぞ。↓

 

見えない風穴(2)

 

 

 

百輪村のぬるま湯から飛び出した私は、

草切村のスーパー「草切マーケット」の

臨時のパートタイマーの面接を受け、

即時採用されました。

 

紺色でタイトな制服も貸してくれたし、

店の内装は明るくて広々としていて、

買い物しやすい雰囲気があります。

 

「Vです。今日からここで働かせてもらいます。

 よろしくお願いいたします」と

朝礼で挨拶し、拍手をもらいました。

 

先輩のパートのおばちゃんたちが、

最新のレジの打ち方とか接客の仕方とかを

レクチャーしてくれて、ホント、わくわくしました。

 

ここだったら、楽しく働けそう。

 

・・・と、そう思ってたんだけど、

働き出して、2か月ほど経って、事件がありました。

 

交代で取る昼休み、私がサンドイッチを食べてたら、

パートのおばちゃんたち数人が

業務用控室の端っこで何か文句を言ってました。

 

「またα(アルファ)さんったら嘘ついて仕事休んでるわ」

「この間は、子どもの行事で、今度は法事ですって」

「法事、何回あるのよって話よね~」

 

私はそれを聞いて「うわー、暗っ」って思いました。

百輪村の人たちは、そんな陰口なんか言わないから、

逆に新鮮ではあるけれど。

 

翌日、そのαさんと売り場で会ったから、

ちょっと聞いてみました。

「昨日、αさん、お休みしてたんですよね」

「え、あ、うん。・・・法事でね」

「それって、本当ですか?嘘ですか?」

「ええっ?!」

「いや、あの、事実を知りたいだけです。

 とがめるつもりじゃないんです。なんていうか・・・

 αさんが、何度も法事で休んでる、って噂になってて。

 このスーパーって休むとき、何か、

 理由がいるんですか?後学のため教えてください」

「あ、えっと・・・」

 

αさんは、言いにくそうに、教えてくれたんです。

パートのおばちゃんたち、

特にγ(ガンマ)さんやδ(デルタ)さんが、

同じパートの仲間たちの休みに敏感で、

有休もなかなか自由に取りにくいってこと。

 

その二人は、おとといの、

文句を言ってた人の輪の中にちゃんと入ってました。

私は頷いて、αさんに言いました。

 

「有休って、権利じゃないですか。

 理由なんて言わなくていいし、

 普通に取ったらいいと思いますけど?」

 

「う、うーん。

 あのね、実は、ちょっと体調が思わしくなくて、

 一応、一回、そう告げたのよ。

 でも、体の調子のことって軽く思われちゃってね。

 

 『みんなだって、色々と不調があるのよ!?』

 『少しくらい、我慢したらどう?』

 とか言われたから、法事ってことにしたの。

 

 何か別の言い訳考えなきゃ・・・。

 休むの、難しいわよね・・・」

 

「ふーん。そうですか。じゃあ、私が言いますよ」

 

「え?Vさん?」

 

 

(続く)