登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
C(牧場主→村の守護霊)千太郎 クリス
師匠(守護霊・Cの先生)
B(靴屋の妻) 若葉 バーバラ
A(靴屋・ボス) 悪久太 アーク
J(隣村のボクサー) 純 ジャック
では、本編をどうぞ。↓
見えない道(2)
ーー幼少期の私は、不思議とモテていたわ。
同年齢の男の子の誰もが、私を取り合ったの。
自分には魅力があるのねって、
単純にうれしかったわ。
けれど、いざこざも多くて、
それは面倒くさかったの。
誰にでも優しい顔をしたら
「Bが好きなのは俺の方だ」
って、ケンカにまで発展したわ。
「2人の前でどっちか選べ」とか。
私はその迫力が怖くて、嘘を言ったわ。
「どっちも好きよ」って。
そうしたら、両方に振られちゃったのよ。
どちらも好きって、何が悪いの?
どちらも傷つけたくなかっただけよ?
でもね、その頃は、自信があったの。
(自分にはまだ魅力があるから大丈夫だ)って。
でも、20歳に近づくにつれて、変だなって思ったわ。
(あら?以前よりだんだん
もてなくなってきたかも?)って。
そんな不安なころに、
別の村に住むAに見初められたわ。
あまりにも押しが強くて結婚したんだけど、
Aはものすごく嫉妬深くて、苦しかったの。
愛されるのは嬉しいけど、束縛は嫌。
まだ自分に魅力があるうちに、別の男を探したわ。
束縛しない男を探すために。
牧場主のCに、
「住み込みで働いて」と言われたときは、
乗り換えるチャンス、って思ったわ。
でも、ちょっとした行き違いで、
AがCを殺してしまったの。
私はますますAが嫌になったわ。
そうしたら隣村で、金持ちで、見た目優しそうで、
キックボクサーのチャンプであるJを発見したの。
この人なら、って思ったわ。
でもやっぱりAが来たの。しかも銃を持って。
2人はもみ合いになった。
Cみたいに、Jを殺そうとしてる・・・。
ううん、それよりも、本当にAが邪魔だったの。
「もう束縛はいや!」
私は自分の所に転がってきた銃で、引き金を引いたわ。
私は、Jを選んだの。
無理矢理、婚姻届けにサインもしてもらった。
でも、Jは、私のことは遊びだったみたい。
家に帰ってこなくなった。
私はもう、どうしていいかわからなくて。
一人は嫌なの。誰か、私を愛して。
そんな思いで、浮気を繰り返したわ。
Jがふらっと帰ってきたから、言ったの。
「あなたが帰ってこないから、浮気してるのよ」
彼は頭を振った。
「好きにすれば?俺も浮気してるし。
っていうか、俺たち、お互いを愛してないよな。
別れようよ。お金ならやるからさ」
「いやよ、別れない」
そうしたら、Jが
「俺の話を聞いてくれたら、まだ家にいてもいい」
と言うから、一生懸命耳を傾けてみた。
でも、Jの話はあちこちに飛ぶから、
うまく飲み込めなかったの。
私は、自分のことでもう精一杯で。
人の気持ちになんか、寄り添えないのよ。
だから、「よくわからない」と正直に伝えたら、
「じゃあ終わりだ」って言われて、
手切れ金と共に追い出されたの。
嘘を言っても、正直に言っても、私はうまくいかない。
私はJからもらった大金で、
遠くのシティで水商売の店を始めたわ。
そこそこ客に好かれ、何人かと寝たけど、
でも、私の心の中でリフレインがするの、
「欲しかったのは、こんな関係じゃない」って。
私は何をほしがっているの?
もう、わからなかった。
そのうちに、不景気で店がつぶれたわ。
私にはもう、男にも店にもすがれない・・・。
毎晩毎晩やけ酒を煽っていたら、
何も考えられなくなって・・・
重くなった体をテーブルにつっぷして、
グラスが倒れた音がしたところまでは覚えてる。
目を開けたら、この森の中にいたのよ。
・・・ねえ。先が見えないの。この森と同じでーー
Bは、そこまで言うと、黙り込みました。
(続く)