登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
E(村長・小学校教諭) 栄一 エデンD(大工) 大吾 デイビッドU(バーテンダー) 梅吉 ウニー
では、どうぞ。↓
見えない評価(4)
バーの店内がピリピリした雰囲気の中で、
Uがカクテルを作ります。
客として座っていたひとりの村人が、
数日前に全村民会議で聞いていた
”バーテンダーつぶし”が来たのだな、と気づき、
バーを飛び出して、村長のEを呼びに行きました。
「え?噂の人が来た?」
「はい。今、Uが困ってます」
「わかった。すぐに行きます」
Eはバーテンダーの服装に
着替えようかと思いましたが、
あえて普段着で向かうことにしました。
髪型もいつものオールバックをやめて
前髪を下していきます。
Eがバーのドアを押し開けると、
Uが半泣きの顔でEをちらっと見ました。
カウンターにいるスーツの男の前には、
Uが様々なカクテルを作ったのか、
いくつもの種類のグラスが並んでいます。
どれもこれも、難癖をつけられたようでした。
「あなたね、こんな酒の出し方で
バーテンダーを名乗っているんですか?
もうやめた方がいいんじゃないですか?」
と、スーツの男が大きめの声でUに言います。
Eは、いったん深呼吸をしてから、
その男性に近づき、そっと肩に手を載せました。
「まあまあ。熱くなるのは、その辺にしたらどうです?
私と一緒に飲みませんか?」
客は驚いて振り返り、Eを見ました。
「え?誰ですか、あなたは」
「通りすがりの客の一人ですよ。あなたと同じです」
「飲みたくても、どれも美味しくないですよ?」
「誰と飲むかで、味が変わることもありますよ。
こちらで一杯おごりますから、ね?
あのう、バーテンダーさん、
ゴッドファーザーを2つ作ってくれますか?」
と、Eは客のふりをしてUに言い、
スーツの男性の横に座りました。
「は、はい。では」
Uは、ちょっと安心したのか、2つ作って出します。
「じゃあ、乾杯」
Eは、スーツの人とグラスを合わせます。
そして、自分の後ろの客側にもグラスを軽く掲げて
微笑んだところ、店の緊張は一気にほぐれ、
お客たちはまた穏やかに歓談を始めました。
スーツの男性は、軽く舌打ちをしてから
ゴッドファーザーを一口飲み、
「・・・甘いな」と言いました。
「ゴッドファーザーが、ですか?」
「いや、あんただよ。他人に簡単に声掛けしてさ。
俺のことなんか、放っておけばいいのに」
「でも、あなたの背中が、
何かをしゃべりたがってましたよ?」
「・・・」
「どうせ、今夜だけのお付き合いです。
お話を聞きましょうか?どうです?」
「・・・。俺は会社の上司が大嫌いなんだ。
なんでも細かく査定してきやがって、
俺のいいところをぜんぜん見てくれやしない。
接待のバーでまで俺に恥をかかせやがって。
何から何までムカムカする」
「そうでしたか」
(続く)