登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
E(村長・小学校教諭)栄一 エデンD(大工) 大吾 デイビッドS(ラーメン屋) 進 スタンO(スタイリスト) 織江 オリーブT(八百屋) 拓郎 テッドA(ボス・故人) 悪久太 アークC(牧場主・故人) 千太郎 クリス
では、本編をどうぞ。↓
見えない武勇伝(5)
「御馳走様、S。おまけの卵をありがとう」
「へい、毎度!」
Sのところでラーメンを食べ終わったEが
店の外に出ると、八百屋のTと他の村人が3人、
Eを取り囲んで「ちょっと話したいことがある」
と言いました。
「あ、はい。なんでしょう?」
ラーメン屋の正面から少しはずれたところで、
固まって話をすることにしました。
Tは言います。
「実はな、この間の留守中に、
昔のAとお前のことを、DとSに全部話したんだ。
俺たちの記憶の中にある、お前の姿をな」
「えっ!?」
「お前の悪口とかじゃないよ。そこは安心してくれよ」
「・・・」
「村の俺たちも、話をしていて気づいたんだが、
Aに振り回されていた頃のことを
冗談めかして言えるようになった。
やっと乗り越えられた、って気がしたんだ」
「・・・」
「あの頃は本当に、
この村にとって、きつい時代だったよな。
だからわざわざ、村の名前を変えてまで、
払拭したかったんだもんな」
「・・・そうですね・・・」
「お前とDが、長い時間をかけて
村の土台を築いてくれたからこそ、
俺たちはようやく、
過去を笑って話せるようになったんだ。
ありがとう、本当に」
「・・・。私は大したことをしてませんよ。
Dや村のみなさんがずいぶんと
協力してくれたから、
百輪村がここまでやってこれたんですよ」
「E。もっと自分を誇っていいんだぜ。
お前が村長にならなかったら、
まだAの時代をひきずったまま
俺たちは今も過ごしていたかもしれないんだ」
「いや、そんな・・・」
Tだけではなく、他の村民も声をかけてきます。
「お前がどんなことを考えて行動してたか、
そんなことはわからないが、
とにかく、俺たちは感謝してもしきれないんだ」
「村長っていう立場は大変かもしれないが、
俺たちみんなでこれからもお前を支えていくから、
今後もよろしく頼むよ」
Eは目にうっすらと涙を浮かべながら、
「・・・わかりました。
微力ながら、村長として頑張りますので、
引き続き、よろしくお願いします」
と、深々と頭を下げました。
「おいおい、そんなに謙遜しなくていいって!」
Tを含め、周りの村人たちは、苦笑します。
「なあ、E。俺たちが、なんで
お前の息子をジュニアって呼んでるかわかる?」
「いえ、知りません。どうしてですか?」
「敬愛する村長の二代目候補だろ?
だから、”ジュニア”。
俺たちなりの、ちょっと照れくさい尊敬の表現さ」
「うわ、そうだったんですか・・・
まいったな・・・ただのあだ名だと思ってました」
「まあ、先のことはわからんけども。
ジュニアがどのくらいの器なのかにもよるしな。
でも、自然とEの次世代を期待しちゃってさ。ははは」
「とにかくE。俺らの今の正直な気持ちって、
そういうことなんだよ」
「トップのくせに、偉ぶったりしない。
お前のそういう所が、みんな好きだからさ」
「・・・みなさん。・・・ありがたすぎて
・・・なんかもう、胸がいっぱいですよ」
「胸がいっぱい?いやいや、腹だろ?
さっき、卵2つも食ったじゃねえか」
Tの言葉に、Eもみんなも大笑いしました。
(続く)