登場人物名は、アルファベット表記です。
(和名と英名の、覚えやすい方で読んでください)
E(村長&教師) 栄一 エデンK(美容師・Eの妻) 加恵 カーラR(EとKの息子) 陸 ライアン(ジュニア)D(大工) 大吾 デイビッドJ(隣村のボクサー) 純 ジャックA(靴屋・ボス→故人) 悪久太 アークC(牧場主→故人) 千太郎 クリス
では、本編をどうぞ。↓
見えない輪廻(3)
居酒屋の他のテーブルでは、あちこちから
とても楽しそうな笑い声が上がっていますが、
3人のいるテーブルだけはとても静かでした。
やっとEは、身を起こして、座り直しました。
指先で目頭をこする仕草をし、
同じテーブルにいるDとJに話を始めます。
「どこから話したらいいのか・・・
最近、ジュニアが、
やたらと靴に興味を持ちだしたんだ。
靴で思い出したのは、昔、靴屋だったAだ。
ジュニアには、生まれつき背中にあざがある。
それで、Jに、Aが撃たれた場所を聞いた。
・・・位置が・・・合ってる」
「えー?だから、Aの生まれ変わりだっていうの?
それって、ただの偶然じゃない?ねえ、D?」
「ああ。万一、生まれ変わりだとしても、
なんで、そのAが、お前の所に来るんだよ?
わけがわからないじゃないか?」
Eは、壁に頭をもたせかけて、力なく言いました。
「もし、私の所に来るなら、死因の恨みだろう。
あの銃を調達したのが、私だから」
「なっ・・何?!」
「ええ?!じゃあ、俺、Eが手に入れた銃で、
Aに撃たれそうになってたってこと?
そんな話、今まで言わなかったじゃない?」
「カフェバーではJの話を聞くのが先だと思って、
言うのを控えてたんだ」
Eは、つらそうに説明します。
「今まで、黙ってて、ごめん。
・・・私は、ずっとAの子分だった。
ボスのAに言われれば、なんでも調達してきた。
あの日、Aが乗り込む先はプロボクサーという
情報しか知らなかったし。
・・・まさか、Jとこうして
一緒に酒を飲む日が来るなんて、
あの頃は想像もしなかった。
・・・それも不思議な話だな・・・」
Eは、そこで、大きく息を吐いてから、
またしゃべります。
「わかっただろう、私がどんな人間か。
軽蔑してくれて構わない。
マブダチも、やめてくれていい。
私は、業を背負ってジュニアを育てるんだ」
Jは、テーブルに置かれていたEの手を取って、
グッと握りました。
「銃の話、ホントにびっくりしたけど、
Eはぜんぜん悪くないよ。
だって、命令されて調達しただけでしょ?
そんなことより、俺、これからも、
Eとずっと一緒にいたいよ。・・・ダメ?」
「J・・・」
Dも、ふたりの手の上に、自分の手を重ねます。
「なあ、Aの人生は、もう終わったことだろ?
ジュニアは、ジュニアの人生を歩くんだ。
みんなで育てりゃあいいじゃないか。
ひとりで抱え込むなよ、E」
「ふたりとも・・・。ありがとう・・・」
「だって、マブダチじゃん?」
「おうよ」
Eは、二人の手のぬくもりを感じながら、
ほんの少しだけ、気が楽になりました。
(続く)