(前の記事のつづき)
場面変わって、大岡越前殿のお屋敷。
まずは広い女性部屋に通された。
年齢が様々な女性が数人、私の周りに座る。
「そちが未来から来たというおなごかえ?」
「はい。未来の瓦版屋(ということにしておく)です。
えっと、今の女性のお楽しみは何ですか?
富嶽三十六景とか、写楽ですか?」
と、なけなしの知識で尋ねると
女性陣にきょとんとした顔をされた。
あらら。江戸時代は長いから、何がいつ流行ったのか
よくわからないよ。私の質問はいつもトホホだわ。
それにお城の中では、町人達とは違う暮らしぶりかも。
1人の女性が答えてくれた。
「手前共は、お仕えすることに喜びを感じております。
子育ても楽しみの一つです。
子供の遊びは、もういたしません」
その答えで、子育ての話を聞いてみたくなった。
「なるほど。未来では、子育てよりも
自分の仕事や趣味、金銭に対して重きを置く
大人が多くなっておりまして・・・」と話し始めると、
女性達が胸を痛めて大泣きし始めた。
私はあわてて、「いや、あの、ですから、
子育てに関する知恵などを聞かせていただけたら」
そこへ元気の良いおばあさんが、突然、
「キエーーーィ」と奇声を発しつつ、長刀を持って現れ、
私の側の障子に、ブスリと刺した。
「まさか、未来のおなご全員がそうなったという
わけではあるまいな?!」
「ひいっ。い、一部でございますーーぅ」
「一部か。他は大丈夫なのだね?!」
「一部は心優しき女性が。でも他は五十歩百歩かな・・・」
「五十歩百歩とは何か?!」
「似たりよったりで・・・あわわ」
「では、ぬしもその一人じゃな?」
おばあさんは長刀を障子から抜くと、先をこっちに向けるので
「申しわけございません!私もそういうアホな女の
一人でございました。でも今は本などで
勉強しておりますので、なにとぞご勘弁をーー!」
と、私は本気120%で土下座した。
「なんじゃ。本があるなら、みなそれを読めば良い」
おばあさんは、急に普通のトーンに戻った。
「その手の本を嫌う人も多いんですよ」
「・・・ああ、なげかわしきこと。
それにしても、ぬしは、そういう時代にあって
よくぞ気づけたものよの」
「はあ。まさに、本のお陰でございます。
・・・で、おなご衆の方々にお尋ねしたいのですが」
と、前置きして、現代の核家族化や
地域のつきあいの薄さなども説明してから
「どうすれば良いと思われますか?」
と質問してみた。
長刀のおばあさんが、
「それはまず、地域のコミュニケーションじゃな」
とさらりと言うので、
「ぱ、ぱーどぅん?今、コミュニケーションって」言ったよね言ったよね・・・
「寄り合いのことであろう?何故かは知らぬが、
今、ふと、 言葉が頭をよぎったのじゃ」
おばあさんのセリフに、私もピンと来た。
ここは江戸時代じゃなくて、ひょっとして・・・。
「あの、皆さんは最近、お布団で休んでらっしゃいます?」
「ん?そういえば、寝てないような。
まあ、天気はよいし、病も無し。
未だにお迎えがこないのが、
不思議で仕方がないわ。ほほほ」
「あらあら、そのようなお元気さゆえでございましょう」
と、他の若い女性達はコロコロとお笑いなさる。
「お迎えが来ないわけだよ。ここもう、彼岸だよー!」
と、私は心でツッコミを入れた。
呼吸を整えてから
「みなさん、落ち着いてよく聞いてください。
私が読んでいる本によると、皆さんは既に
おかくれになっている可能性があります」
「なんと無礼な。未来人から見たらそうであろうがの」
「もし間違ってたらごめんなさい。でも、かなりしばらくの間
寝たことが無くても平気って、変だと思いません?」
「そう言われると・・・」
筆と半紙をお借りして、女性陣の前で、
横線をいくつか書いていく。
この世とあの世と、その中間の層「常夏の国」を
図式化して、江戸人にスピリチュアルを説明する私。
我ながら、何やってんだか。
そこへ「越前様がお呼びです」と使者の方が。
でも少し待っていただいて、キリのいいところまで話をする。
「・・・もうそろそろよろしいですか」
使者さんに強く促されたので、
もう席を立つしかなかったが、最後に
「またあとで私の瓦版(ブログ)のために、
子育ての話を聞かせてくださいませー」
と頼むのが精一杯だった。
(つづく)