父は、9人兄弟の末っ子だ。

父はすぐ上のお兄さんと一番仲がいい。

そのお兄さん、つまり私の伯父さんは

一風変わった人で、噂では

親戚からあまりよく思われていないようだ。


マイペースなところがあって、

いつも周囲を驚かせる。


たとえば誰かの新築の家に遊びに行くと、

かならず伯父は釘を打とうとする。


洗濯物ロープをひっかける釘を打ってやろうという

伯父なりのお祝いなのだろうが、

新築を建てた人にとってはかなり迷惑だ。


そんなユニークな伯父さん。


小さい頃、私はこの伯父さんが苦手だった。

強烈な新潟なまりで何を話しているのかわからない。

そのうえ、とても声が大きい。

いつも怒られているような気がして

ドキドキしてしまう。


その伯父さんが、

私の結婚式にも来てくれた。


披露宴の最後に、

新郎新婦とその両親のあいさつが組まれていた。


ところが、私の父だけがその時、席を外しており

家族で探したがなかなか見あたらない。


30分くらい経って、ようやくニコニコした父が現れ、

待ちくたびれた招待客にわびながらも

やっと式を進行出来、披露宴は終わった。


帰る招待客を出口で見送っていると

順番待ちしていた伯父さんが私の所へやってきて、

ぎゅっと私の両手をつかんだ。


そして、私にだけ聞こえるような小声で

けれども叱りつけるように、こういった。


「ミニもる、よ~く覚えておくんだぞ。

 幸せの裏では誰かが泣いているんだ。

 忘れるんじゃないぞ」

(というような内容を新潟弁でしゃべった)


「え?」


「お父ちゃんが、ずっとトイレで泣いていたの、

 お前、知らなかっただろうが」


「!」


「いいか。忘れるなよ!」


「はい・・・」


そうやって帰っていった伯父。


当時は、せっかくの結婚式なのに

どうしてこんな風に怒られなくちゃならないのかと

実はちょっとムカッと来ていたのだが、

あとになってじわじわと

そのありがたみがよくわかる。


今では、父方の親戚の中では

この伯父さんが一番好きだ。