二つのペットボトルがある。
「透明な存在」と自分で名のるペットボトルは
中身がからっぽだ。
(中身が入っているのかもしれないが
本人は気が付いていない。)
そのペットボトルは、
自分が捨てられている、
誰からも顧みられないと感じている。
立つ気力もなく、口を開けたまま横倒しになり
「水、水をくれ」と泣いている。
もしくは、口をきゅっと締めて、
余計な水分が入らないよう意地を張っている。
水が中に入っているとしても、
それを他者へやろうとはしない。
そんなもったいないことをしたら
損だと思っている。
そして、自分を捨てた人や
相手にしてくれない人たちを恨み続けている。
一方、「透明な心」という名のペットボトルは
中身にたっぷりと水を湛えている。
水はやはり顧みられないことが多い。
なぜならそれはありきたりな飲み物だから。
でもあるとき誰かが怪我をしたときは、
その水をかけて消毒出来る。
誰かが喉が渇いたときは、潤せる。
汚れた場所を洗い流せることも出来る。
中身が減ったら、自分で美しい湧き水を足し、
次の機会を待ち続ける。
自慢のミネラルウォーターを入れておく。
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誰かの役に立ちたいから、
きれいな水を常に蓄えていたい。
いつか、そういう存在になりたい。
(現在、修行中)
もし出来ることなら、
空っぽで倒れているペットボトルにも
注いであげられたらいいなと思う。
でも、まず注ぐ前に、
彼に自分で立ってもらう方が先なのか?
君は自分が空っぽに思えるけれど
そんなことはない。
まだまだこれから、いくらでも水は入る。
だから、ちょっと立ってご覧よ。
君にも出来ることはいっぱいあるんだよ。
そうやって、声をかけたら、
立ってもらえるだろうか。
・・・でも、声をかけるのはやめておこう。
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ほんの2~3日前の私なら、
空っぽのペットボトルの手をひっぱって
起き上がるのを手伝い、
「さあ、水をあげるよ」と
自分の水を注いであげようとしただろう。
でも、今は、それをするのは
おせっかいだと思っている。
彼が寝ているのは、
彼がそうしたがっているからだ。
だとしたら、邪魔をしてはいけないんだ。
いつか彼が自分の足で立ちたくなり、
自分の水を誰かに注ぎたいと思う日が
彼に訪れることを願いつつ、
ただそばで見守っていよう。