吉原の遊女・花扇の物語

春をひさぐ
 

最終話

 

 

 

 

愛する人に何を残しますか?

 

 

春をひさぐ⑩菩薩の涙

 

花扇(かせん)に会える日が来た。

 

花扇は売れっ妓の花魁である為

会えるまでにずいぶんと待たされた。

 

 

前に来た時

ここにあった桜の木は

もう引き抜かれていた。

 

今は菖蒲が植わっている。

 

 

 

梅雨が近いと言うのに

雨が降らず

空気が乾燥している。

 

皆で水やりをしなければ

すぐに枯れてしまうのだと

誰かが言っていた。

 

自然と言うものは

思い通りにならないものだ。

 

それを無理に

思い通りに変えてしまう

この吉原遊郭のやり方が

平次は好きになれなかった。

 

 

 

 


 

花扇は相変わらず美しかった。

 

そして、どこか儚げだった。

 

平次は

花扇の母から受け取った手紙を

懐に忍ばせていたが、

それをいつ見せるべきか悩んでいた。

 

真実を告げた時の

あの老婆の悲痛な叫びを、

どこまで伝えるべきなのか?

 

平次には分からなかったのだ。

 

でも、一つだけ

はっきり言える事がある。

 

「お前の母は、

心の底からお前を愛していたんだ。」

と言う事だ。

 

ただ、世間を知らなかっただけ。

 

それはそれで罪ではあるのだが、

きっと花扇は母を許せるだろう。

 

そう信じ、ようやく

花扇に母の手紙を見せた。

 

 

花扇が手紙を読み終わるのを

見計らい、

「お母さんを許せるかい?」

と、平次が聞いた。

 

花扇はただ黙って

ゆっくり頷いた。

 

 

きっと花扇もまだ

心の整理がつかないのだろう。

 

花扇の心の時計が

動き出すには

少し時間が必要だ。

 

しかし確実に

何かが変わったはず。

 

空虚だった心が

満たされる日が来る。

 

平次はそう信じた。

 

 

 

その時・・、

ぽつぽつと

雨が降り出した。

 

あれほど降らなかった雨が

降り始めた。

 

まだ根付かない菖蒲を

根付かせようとするように・・・。

 

乾ききった花扇の心を

潤そうとするように・・・。

 

優しい雨が降り始めた。

 

 

 

これで・・・

悪しき業は断ち切られた。

 

平次はそう感じた。

 

ずっと淀みで漂っていた

悪しき業は断ち切られたのだ。

 

きっと

花扇の心は動き出すだろう。

 

少しずつ・・

 

少しずつ・・・

 

流れに身を委ねていく。

 

 

 

満たされた心で・・

 

自らの運命と

向き合っていくのだろう。

 

 

 

 

 

慈悲に溢れた

菩薩の涙を吸収し、

菖蒲の花が

与えられた命を

けなげに全うするように・・・、

 

花扇もまた、

自らの命を

全うしていくのだろう・・。

 

 

 

五濁悪世を癒さんと

菩薩の涙が降り続く・・。

 

恵みの雨が

全ての命に降り注ぐ・・。

 

 

 

 

平次がふと外を見ると、

萎れかかっていた菖蒲の花が

蒼々と輝いていた。

 

 

薄明りの中に観た

その輝きは

平次の心をも、

 

優しく・・・

 

優しく・・・

 

包んでいった。

 

 

 

 

吉原の遊女・花扇の物語

春をひさぐ

 

 

 

 

 

あなたは・・・

愛する人に

何を残しますか?

 

 

 

 

 

10月の講座お知らせ

 

10月の音声講座のテーマは、

「四無量心・六度万行」

です。

 

四無量心(しむりょうしん)とは、

”真実の愛”

と言い換える事が出来ます。

 

 

仏教の開祖、お釈迦様は、

どこどこまでも

この世の真実を

追い求めました。

 

そのお釈迦様は、

「慈・悲・喜・捨の4つの心、

四無量心を育てなさい。」

と言いました。

 

そして、

それらの心を育てる方法が、

六度万行(ろくどまんぎょう)です。

 

布施、持戒、忍辱、

精進、禅定、智慧。

 

これら6つを実践していく事で、

あなたの想いがより深く

あなたの愛する人に伝わるのです。

 

 

来月、10月のカルマ論理学講座は、

「四無量心と六度万行」

について詳しく解説していきます。

 

この講座は、

音声付きのメールが、

毎日届けられます。

 

メールを読み、

音声を聴く事で、

四無量心・六度万行について

詳しく知る事が出来ます。

 

 

 

https://ssl.form-mailer.jp/fms/b61a8eb3569713 

からお申込み下さい。

 

こう言ったフォームが立ち上がりますので、

必要事項を明記し

”確認画面へ”を押してください。

 

確認画面にて”送信”を押して頂き、

お待ちください。

 

2日以内に

こちらから確認のメールを差し上げます。

 

yume.kanau.toki001@gmail.com

からメールを差し上げますので、

受信拒否設定をされている方は

解除しておいてください。

 

料金は6000円。

締め切りは9月28日です。

 

締め切り後のお申込みは

お断りさせて頂いております。

 

ご了承下さい。

 

 

お申込みはこちらから

https://ssl.form-mailer.jp/fms/b61a8eb3569713