年が明けて、2023年1月通院時の血液検査で、数値的に気になるということから、2月の通院日にはCT検査を予約していた。
 その結果、右肺に新たな病変が確認された。前年の3月に再発し、抗がん剤治療4クール目で、治療を中断。その後、放射線治療で叩いておく方が良いと提案されていた、左肺のところはそのまま変化なし。その他には腫瘍の大きな変化は見られずという結果だった。

 「その他には変化は見られな」という言葉で、「良かった」と、ホッとしたかった。右肺の「新たな病変」という言葉は、聞いてはいたけれど、聞きたくなかった。本当はそれが一番、重要なことだったのだろうけど。

 主治医は、ここまで体力も回復して、今なら治療できるとのこと。夫も、再々発したときに、放射線治療を残しておきたい。そんな考えも持っていたこともあり、まさに今がその時だと、考えていたのだと思う。

 発症した最初の抗がん剤治療の時にお世話になった、放射線科の先生との再会。今回もその明るい雰囲気に、それだけでも、患者は気持ちが明るくなるものだ思った。とにかく、入院したくない。そんな夫の希望通り、通院で出来るという説明に、夫も少し笑顔で答えていた。

 私の頭の中では、段取りが駆け回る。仕事のシフト。毎日タクシーで往復するのにも結構体力を使う。大丈夫なんだろうか…。私が車の運転が出来れば…何て、今更言っても仕方ないような事まで頭の中をぐるぐる回る。でも、訪問看護や介護を利用していることもあって、きっと何とかなると、不思議に思えたのは、やっぱり夫の笑顔があったからだった。

 後は次回、作っていただいた治療計画を確認して、その日は体にマークをつけ、いよいよその次から、通院で放射線治療が始まるんだなと思っていた。

 ところが、予約日の前日、

「熱があるから、あしたは無理だな…。」

と、夫が言った。驚く私にさらに夫が続ける。
 
「それに、明日は大雪だって言ってるし、出たくないな。
 あしたの朝、病院に連絡してくれるか。」
 
 治療を始める予定だった2月。関東は珍しく大雪の予報だった。