<ちょっとひと休み>

「はーい!そしたら、好きな場所選んで描いてください。
 参拝の人に邪魔にならんようにね。
 そしたら解散!」

先生の声が広い境内に響く。
写生大会の日。
首から画版を下げて、手には絵具のセット。
いや…下書きだけだったのかな。
記憶が定かではない。

所謂有名どころの五重塔や本堂を写生する友達から離れて、
白塀の続く道を行くと、門越しに藁ぶきの屋根が見えた。

「ここ、ええんとちがう?」

一人では無かったと思う。
一人きりで行動できるようなタイプでは無かった。
けど、大勢の中に居るのも疲れる。
かといって、手をつないでいつも二人でトイレというのも違うと思っていた私。
そのくせ、一人は怖いくせに。

たぶん同じような感性の友達4人くらい、で藁ぶきの家を描くことにした。

それぞれが好きな角度を探して、座る場所を決める。
くっついて座る友達。
少し離れて傍に座る友達。

私は一人、藁ぶきの家に一番近い、門の傍から見上げるようにして座った。
薄ぼんやりだが、なぜかその絵を覚えている。
めったに光を浴びることが無かった子どものころ。
何かの絵画コンクールで賞を取った。

「ほんまに珍しいこともあるもんやな。」
母親の言った言葉さえ覚えている。


豊臣秀吉が「醍醐の花見」に際して自ら基本設計をした庭園。
「三宝院」は特に馴染みが深く、醍醐寺そして上醍醐へも登った記憶がある。
子どもの頃は、当たり前にそれらの重要文化財があり、歴史に対して興味も無く、
今となっては猫に小判んだった気がする。

また、毎年2月に行われる「五大力さん」も懐かしい。
そういえば、大抵の出入り口に、お札(御影)も貼ってあったなぁと思い出す。

「五大力さん」は本当は「五大力尊仁王会」だということも、下記サイトで知った。

世界文化遺産 京都 醍醐寺


『金堂前では、五大力さんに力を奉納して無病息災、身体堅固を祈り、男性150キロ、女性90キロの紅白の大鏡餅を抱え上げて、その時間を競う奉納餅上げ大会が行われます。』

と、公式サイト内にも案内があって、当たり前の事なんだろうけれど、
還暦も過ぎた私の記憶の中の行事が、今もなお続いていることに、改めて凄さを感じた。