自分の信条で堂々と拒否する、イスラエル兵役拒否者からの手紙 | みなるんのブログ

自分の信条で堂々と拒否する、イスラエル兵役拒否者からの手紙

 

 

 

その1です。

シェアさせてもらった本からの抜粋です。

『一九八二年六月、当時の首相メナヘム・ベギンと国防相アリエル・シャロン将軍の強い願望によってレバノンへの侵攻が始まった。

それまでにも数多くの人々が、パレスチナ占領地区での予備役軍務に対する良心の痛みと闘ってきた。

このような人々は、隣国に対する攻撃戦争への参加を求められると、さらに大きなジレンマに苦しむことになった。

彼らは「やりすぎだ!」と思った。

口語ヘブライ語の表現では「イエシュ・グブウル ―― 限界がある」という意味になる。

イエシュ・グブウルはこうして誕生し、選択的兵役拒否を存在理由として運動を進めてきた。

イエシュ・グブウルが最初にやったのは、

レバノンでの軍務に反対する予備役兵の請願を支援することだった。

やがて、運動の範囲はさらに広がっていった。

投獄された拒否者に対しては精神的、物質的な支援を行い、

本人の抗議声明を公表し、家族や扶養者を経済的に援助し、刑務所の外で集会を開き、支援のための世界的ネットワークを作り上げた。

 

イスラエルでは、戦前の日本と同じように「徴兵制」がしかれていて、一八歳以上の国民は、男性が三年間、女性が一年九か月の「兵役」につく義務があります。

そのうえ、兵役を終えた後も、男性は四五歳になるまで、毎年約三週間兵役につかなければなりません(これを「予備役」といいます)。

ですから、兵役を拒否することは、

徴兵されて入隊を拒否する若者の場合でも、

あるいは、予備役の軍務を拒否する場合でも、

法律に違反することになり、罰せられることになります。

ここに収められた手紙や声明を書いた人々のほぼ全員が、命令に服しなかったことで刑務所に収監された経験をもち、三回から五回ほど投獄された人も何人か含まれています。

 

兵役拒否者(Refusenikレフュゼニク)の中には、

高校を卒業したばかりの若者も多い。

彼らは、平和主義的思想や政治的理由によって、法律が定める兵役につくことをはっきりと拒否した。

一方、圧倒的多数の者は、

「選択的拒否」者として知られるようになった年長の予備役兵である。

彼らは道義的、政治的理由によって、

ある種の任務もしくは特定の作戦への参加を拒否するが、

その他の容認できる軍務は積極的に果たすことを明言している。

 

選択的兵役拒否は、

軍事的、政治的権威に対する道義的、政治的挑戦であり、冒涜行為であると考えられた。

体制側メディアは激昂し、軍の指揮官は拒否者を投獄した。

家族や友人から縁を切られた者もいた。

軍当局はこのような「不服従」行為に対してきわめて慎重な対応をとった。

国防軍の機密司令部は、

拒否者を軍法会議にかけることを差し止めて、

その代わりに略式裁判にかけることを要求した。

 

略式裁判では、

部隊指揮官が裁判官となって最高三五日の禁固刑が言い渡される。

従来の軍事規則であれば、故意の不服従行為は決して容赦されない(とりわけ、拒否行為が「扇動的な」政治的、道義的信念によって支持されている場合には。しかしイエシュ・グブウルにとっては、かえって都合がよい)。

実際にも、一部の拒否者に対して、厳格な軍事裁判を実施することを主張した将軍もいた。

 

軍事裁判であれば、

数か月ないし数年の禁固刑が言い渡される。

何人かを選んで見せしめにすれば、拒否運動を粉砕できるだろうというのが、強硬派の思惑だった。

だが、軍事法廷にすると罰則の適用範囲を拡大できるが、

それと同時に被告の権利も強まるからである。

軍事裁判の被告には弁護士がつき、証人召喚の権利も与えられる。

イエシュ・グブウルはあらゆるチャンスをとらえて、一件を軍事法廷に持ち込み、政治問題化する意志を表明してきた。

軍事法廷での審議となると、

首相、国防相、国防軍参謀総長が呼び出されて、被告が無視した命令の合法性を弁護しなくてはならないからだ。

国防軍は内心では、拒否者に「最後の決戦」を挑みたいと願っているのだが、正面きっての対決をずっと避けてきた。

将軍たちが、被告側の弁護士とやりあいたくないと思うのには十分な理由がある。

弁護士は、イスラエル国内法および国際法に照らして考えるなら、

被告の受けた命令には(レバノンへの侵攻であれ、パレスチナ人による暴動の鎮圧であれ)、多少なりとも非合法な部分があるという点を楯に、被告の命令不服従を正当化しようとするだろう。

これは、イスラエルの政治的、軍事的指導者にとっては、何としても避けたい議論なのだ。

 

 

【現地レポート】

「イスラエル高校生の兵役拒否」を取材して

井上 文勝

 

二〇〇一年九月六日付けヘブライ新聞紙上にて発表されたイスラエル高校生六二名連名による「兵役拒否」ニュースは、対パレスチナテロに団結するイスラエル社会にショック・ウェーブをもたらし、国内は騒然となった。

ただちに出た賛同者として前イスラエル文部大臣シュラミット・アロニ女史からの

「すばらしいことです。がんばってください」などがあったが、

シャロン連合政権のパレスチナ対応を告発し続ける野党「極左」派メレツ党首ヨシ・サリード氏から「君たちは間違っている。国民義務の兵役はしなければならない」との拒否者たちにとっては思いがけない声明が出され、有名な「ピース・ナウ」でさえ沈黙するなか、

「パレスチナからの無差別テロで無実の人々が殺されてゆく今、何故に!」との攻撃が降ってきた。

 

拒否者の一人、ハガイ・マタール君には

「近所の者から」と題し、

「君をこどものころから知っている者として書く。君は腰ヌケの反逆者になった。パレスチナテロリストの共謀者だ」

との手紙さえ届いた。

 

一方、内外のアラブ語紙は「イスラエルの革命!」と報じた。

 

そんななか、二〇〇〇年九月三〇日にガザにての交戦中、テレビカメラが目撃するなか、父と共にピン止めされ、ついに死んでゆき世界の同情を集めた少年モハマッド・アル・ドーラ君、の父とほか数人のパレスチナ人遺族代表たちからは

「あなた方の勇気ある行動に心を打たれました。

このような行動こそが流血を止めるのです」

とのメッセージが送られてきた。

 

・・・私たちは若者であるあなた方が兵役を通して市民を守るとの義務を感じることは自然であろうと思います。

よって、あなた方の、占領地にては兵役を拒否する、との高尚な心情を最も高く評価します。

全民族の制圧を続けるための無意味な殺りく行為で愛する者達を失った私たち遺族は、無実なパレスチナ人の血で自分の手を染めることを拒否するあなた方に敬意を表します。

私たちは心から支持と祈りとをあなた方にお伝えします。

そして、あなた方の決断をあなた方の同世代が間もなく受け入れることを・・・。

 

あなた方の成功を願い、祈りを込めて。

イスラエル軍によるパレスチナ遺族モハマッド・アル・ドーラの両親と他9遺族家族。20019