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読了しました!一気に読めてとても素晴らしい本でした!

この本が出版されましたちょうど1年前の2012年1月、本書の中で絶対になってはいけない復興における最悪のシナリオとして
「金融緩和は行われず」、「増税だけして」、「復興財源は予算の組み替えでするだけでだらだらと続く」
など田中先生、上念先生によって語られているのですが、予言は的中!恐ろしい、、、

本書は、関東大震災後の昭和金融恐慌(不良債権が原因)、そして昭和恐慌(デフレ不況による)と、東日本大震災後の政策など比較して検証するところからスタートします。正確に書きますと、関東大震災の4年後に昭和金融恐慌(1927年不良債権が原因)が発生するのですが、それは後藤新平という人を総裁にしてて帝都復興院というのを作るのですが、後藤の立てた巨額の予算に反対した大蔵省、日銀によっ、てしょぼい(←本文中の表現w)復興政策しかできなかったがために不況が続き、震災で受けた経済のマイナスを酷くしてしまったということです。昭和金融恐慌とそのあと起きる昭和恐慌(1930年、デフレ不況が原因)は別物で、
本書36pより

田中先生 「1927年の昭和金融恐慌はなぜ起こったのかーー。
その発端は、被災を受けた企業に補償をするために、被災民の借金の返済を遅らせてもいいという法令を出したんです。ところが当時の不況は強烈で、多少の猶予をもらっても、それでも企業は借金を返済できずに、結局銀行の資金焦げつき、金融不安が高まって、当時財閥だった鈴木商店が倒産したり、台湾銀行が休業に追い込まれたりするということが起きてしまった。これによって日本中に金融不安が起こり、昭和金融恐慌に突入したんです。」

とありまして、続きの上念さんが面白いので、36p 続けて書きます。

上念先生 「要は、関東大震災後、しょぼい政策のせいで経済がちゃんと復活できなかったために、銀行が貸したお金が返ってこなかったんです。そしてその時の借金が不良債権(銀行が回収できない貸し出し)化してしまったから、銀行が多くの資金を回収できなくなってしまったいうことですね。」

そして、ここが重要なのですが、37p

「本当はそこで、日銀が紙幣を刷って、市中に資金を潤沢供給する金融緩和政策を行い、不良債権化した手形(銀行から企業への貸出証書)大量購入をやっておけばよかったんです。それをやっていれば、銀行の焦げ付きも起こらず、昭和金融恐慌も起こっていなかったと思います。」

ということなんだそうです!しかし、今回、日銀は東日本大震災においては、ほとんど何もやっていません。(銀行へは大量にお金を流しているのですが、それは銀行が倒産しては困るという日銀との関係性があるからで、でもすぐ引き上げていたりとか、本書内詳しく書かれています。)
政府の復興予算も実質ゼロで、予算の組み換えをしているだけなのですが、それでは、全く経済を回復させることは出来ないのです。最初の2年とかでドカンとお金を入れることに意味があることなども、本書の中盤あたりで、デフレ、インフレについてとデフレギャップ、インフレギャップ、コアコアCPIや、量的緩和など経済学学べます。面白いです!

さて、前半好きなのでまた関東大震災後まで話を戻しますと、小泉伸三、石橋湛山が、デフレというものに気付き、金融政策の必要性を唱え、緩やかなインフレを主張していたのですが、(聞き入れられず)結局、昭和金融恐慌、そして、昭和恐慌に突入するんです。

この昭和恐慌は完全な人災でした。それを行ってしまったのは、当時の大蔵大臣の井上準之助と日銀、政府による金本位制の復活です。日本がデフレ下で大変不況なその時にこの金本位制を導入したことによって起こったのが昭和恐慌なんです。これで国民の生活はますます苦しめられ、その結果国民の怒りがクーデターを起こさせ、井上は暗殺されます。(その後の大蔵大臣高橋是清の金本位制の離脱によって円高から円安に向い景気回復しました。)

なんです!!
よって、東日本大震災によって経済が受けたマイナスというのは大胆な金融政策を政府と日銀が執らなくてはいけないのです!昔だったら、暗殺されちゃいます!こわいです!そして、ケチケチしていると復興は遅れてしまうということや、それによって、ますます不況が続いてしまうということが、歴史からみて分かることなんですね。

今回の東日本大震災の復興財源はもともと他で使う予定だった予算などを震災復興にあてるお金に差し替えただけで、でも私も全然分かってなかったんですが、震災があって他の予算を(子供手当なんちゃらとか)震災復興に当てるというのは良い考え!もちろんどうぞ!と思ってしまっていたのですが、不況下の日本経済においてはそれはなんの解決にすらならないどころか、被災地以外の日本全体の経済の悪化に繋がってしまうんです。
ましてや、増税によって、人々はますます消費を減らし、よって税収も減りますし、デフレを進める政策でしかないのです。経済学を少しでも理解しないと、それではなんの解決にもなっていないどころか、結果的に不況の日本ではそれが誤った政策だということにすら気が付かないのですよね。。

サブプライム問題で受けた日本の打撃とその時の政策(あんま何もしなかったんで、何もしないっていう政策なんですが)海外との比較なども書かれていています。
また、
「名目GDP×税率=税収」
を頭に入れるのが本書最大のポイントなんですが、結局消費税とか税金を上げたところで、消費が落ち込んでしまえば(消費税アップしたあとは消費が落ちるデータも消費税引き上げ1997年からのグラフで検証されています)税収は落ちるので、増税で復興は出来ないんです。このあたりも私の説明より、読んでみてくださいね!

そして一気に飛びますが、第5章ではデフレとインフレについてグラフをみながら国民に及ぶす影響として失業率について検証されています。
「緩やかなインフレ(1~4%)は=景気好調」を意味し、
デフレにおいては、たった1%マイナスへ傾くだけで日本の完全失業率が5%になり、3%の緩やかなインフレのときの完全失業率は2%まで減ります。失業率5%と2%の違いは人口数でみると、失業率2%のとき130万人に対し、5%のときには360万に上るそうです。。とても悲しいことです。。

復興政策における増税がなぜ悪なのか、そして、景気回復のための金融緩和(物価水準目標の制定とともに)がなぜ必要か、是非多くの方に読んで頂きたいです!!