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デフレは誰の責任か?
はい、日本銀行の金融政策の失敗の連続によるものです!

というのは、もう殆どの人が知っている共通認識ですが、では、何故このようなデフレを全くそのまま放置した状況に日本が長年いるのか、そしてその間に日本銀行が行ってきた金融政策の失敗(誤り)は一体どういった内容だったのかというのが田中先生のこのご本の中で詳細に紹介されています。

田中先生をはじめとする多くの経済学者やエコノミストの方々が日本銀行の政策に対し疑問を持ち、海外では現FRB議長バーナンキさんや、ポールクルーグマンさん、スティグリッツさん、マンキューさん、もちろん日本の経済学者の方々(しかしそれが日銀出身者ですとつぶされます)も日本銀行の政策に対し、指摘や論文を発表されてきましたが、何故か、そのような政策に対して聞く耳をもたないというか、ことあることに責任逃れをされてき、デフレの原因は絶対に日本銀行以外のところ、社会構造や人々の意識の問題だったり、あげるとたくさんの理由がその時々に出てくるのですが、(日銀理論と呼ばれるものの一部です)それらを述べられ、その、決して日本銀行の金融政策には問題がなかったという日本銀行とこの長年続くデフレ日本経済の流れを、本書はじっくりと読み進めていきます。

まず、日本銀行はどういうところかを書きますと、日本の中央銀行であってお金を発行する権利を持っているところです。
日本銀行の役割、本書プロローグより。

日本銀行法は第一章第一条で、
『日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨および金融の調整を行うことを目的とする』
と設置目的を示し、第二条ではその理念を、
『日本銀行は、通貨及び金融の調整を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする』
と定めています。

とあります。国民経済の健全な発展、です!

本書の中で私が好きだったのは、
第5章の「構造改革主義」の誤解
のところです。小泉構造改革で景気がちょっと回復していたそうで実際に正規雇用が増え、失業率が下がったのですが、それまでに続いて来たデフレ状態のために景気が好転していたことに私たちはあまり実感として気づかなかったようなんです。そして、景気好転してくるとここで出番なのが日本銀行の政策、金融引き締め、です。基本的にバブルやインフレを起こしてはいけない、緩やかなデフレくらいが丁度良いと考えられているようなので、また景気は逆戻り、ということになるんです。

景気や経済というのは中央銀行による正しい金融政策やインフレ目標などを立てて頂くことで良い方向にも悪い方向にも、そして現状維持みたいにも出来ます。現に、日本の場合は少し景気が良くなりそうになりますと、上手い具合にまた逆戻りにさせてしまっているんです。めっちゃ、コントロールできているじゃないですか。(苦笑)その日本の金融政策の誤りを本書の中で、そして世界の経済学者らにも指摘されているそうなのです。

今、アメリカの金融政策では日本の金融政策がある意味反面教師になっているようで、先進国でずっと景気の悪い日本の誤った政策を取らないようにと考えられていると書かれていました。なんだかなーって感じですよね。
では、日本にとって必要な金融政策とはどのようなものか、本書では、国内、そして世界の経済学者の論文なども含め紹介されています。

そして、
・リーマンショックと相似形の昭和恐慌
・歴史の教訓を生かせ 高橋是清のリフレ政策
・行き過ぎたバブルつぶし 失われた10年
・小泉政権下で景気回復した理由
・早すぎた出口政策
・デフレを導く円高シンドローム
・石橋湛山のリフレ論

などなど目次より抜粋して書かせて頂きましたが、とても勉強になるたくさんのお話、ぎっしりしっかりボリューム満点で面白かったです。

あと、実は後半の章のあたりで出てきました驚きの日銀理論は、
「日本銀行のバランスシート(貸借対照表)が悪化することで、通貨の信認が失われ、長期金利が上昇する」という主張がありまして(258P)で、
日本銀行の資産防衛主義と田中先生は表現されているのですが、慶応義塾大学の竹中平蔵教授の著書『政権交代バブル』(PHP研究所)の中の一部も紹介されていましたので以下、本書260Pより書きます。

<私は経済財務大臣を務めているとき、こんな体験をしています。アメリカのローレンス・サマーズ元財務長官が来日し、日銀幹部と三人で食事をしました。当時の日本経済は実質2%成長でしたが、日銀はマネーを0.5%程度しか増やしていませんでした。
経済が実質2%の成長なら、マネーサプライは4%程度増やさないと、2%成長の物価上昇にはなりません。
そこで私は日銀の幹部に「もっとマネーを出したらいかがですか」と尋ねましたが、「日銀のバランスシートが大きくなるから出せない」という答えが返ってきました。
この日銀幹部の発言に、「So what?(それがどうした?)」と驚いたのは、サマーズ氏です。
彼は、日銀にはシニョレッジ(通貨発行の特権)が与えられている。だからバランスシートが大きくなっても問題はない。経済をよくするためには、あえて中央銀行のバランスシートを悪化させることで状況を改善することも考えられねばならない。にもかかわらず日銀は、「バランスシートは大きくしてはならない」という姿勢を崩そうとしない。日銀が日本経済より、自分たちの「勝手な美学」を後生大事にしていることに驚き、呆れて「それがどうした?」といったのです>

とあり、
自分の組織の資産貿易しか頭にない日本銀行の態度が、これまでどれほど世界の経済人を呆れさせ、憤慨させてきたか、うかがい知れるエピソードです。
と、本書の中で田中先生は続けられていました。

本当に読んでいて私もびっくりしましたが、日本銀行はどんな経済学者が意見したところで、自分たちの方針を変えないんですよね、だからずっとデフレで、金融政策はデフレ脱却には向かわないどころかデフレ良し、ってなっているんだと。本来同じ日本人なんですから、日本国のための正しい政策や日本国のために!と一番に考えるのが普通じゃないのですかね。謎、なのですが、それが現実のようです。
「デフレ不況 ~日本銀行の大罪~」是非とも読んでみて頂きたい一冊でした!