部活動の地域移行とは・・・
2022年6月にスポーツ庁での有識者会議で提言された、公立中学校における休日の運動部の部活動を外部に移行する部活動改革の1つです。また、文化庁においても吹奏楽部などをはじめとする文化部の地域移行の方針がまとまったところです。
なぜ、こんな議論が始まったのか。
私は中学から大学までの貴重な10年間を吹奏楽部にささげてきたので、吹奏楽部の例で話を進めていきます。
途中吹奏楽部経験者しかわからない単語もあるかもしれませんがご容赦ください。
〇学校現場での悲鳴(以下実際にあった話)
・コンクールに依頼演奏などで土日は完全拘束。教材研究や生徒指導に手が回らない。
・音楽の先生といえど、吹奏楽経験がなきゃ指導ができるわけないのに、顧問を引き受け必死になって勉強する先生
・部費や中学校内での予算で間に合うはずないのに、家庭からこれ以上の負担はかけられないと身銭を切ってきた先生
・楽器なんてやったことないけど、中型免許を持っているので運搬要員で顧問になっている先生
・配置換えで吹奏楽部の強豪校へ赴任。OB・保護者から「質が落ちた」と言われぬよう必死になって部活を回してきた先生
などなど、これまでの部活動は「学校現場の善意」で成り立っており、これらが限界に達し見直されているのです。
本来業務に専念し、働き方を見直すという意味では「ようやく」という感じがいたします。
また、社会情勢の変化も。
〇少子化の進行
・在校生が少ないため、1学校=1クラブが成り立たなくなっている。
(吹奏楽部の場合、小編成で30名、大編成で50名を想定されている)
〇生徒の興味関心が多様化している
・e-sportsやスケートボードなど全部を部活動にするには限界がある。
・部活動=しんどい、お金がかかる というイメージが定着し加入する意欲が低い
地域移行を進めるうえで、これまでの部活動が果たしてきた
「社会性やチームワークをはぐくむなどの教育的側面」
「生徒の家庭環境に左右されず安心してスポーツや文化活動に親しむことができる場所」
は担保されるべきです。ただ、必ずしも学校でなければ達成できないかと言われればそうではないはずです。
中学~高校生の年代の子たちが大人と触れ合うことは立派な社会勉強です。
安全面の担保をどうするかという問題はありますが、学校じゃなきゃ生徒は守れないということはありません。
こと吹奏楽部においては当面「拠点式合同部活」の導入を試験的にやる
が現実的だと考えています。
吹奏楽部の合同部活については
秋田県大館市、福井県敦賀市など多くの自治体で導入されています。
「拠点をとなる中学校に休日だけ集まって練習する」
「拠点中学校を輪番制とし、複数の中学校の生徒が集まって練習する」
「オンラインシステムを活用して、遠隔で指導や練習をする」
など創意工夫して活動されています。
現京都市で導入するうえで、拠点となる中学校での楽器や楽譜の保管をはじめ、移動や活動中での安全面をどう担保するか、責任者はどこの誰が担うのかなどの課題はありますが、全国に事例が複数あることからも、十分実現可能であると考えられます。
無理に吹奏楽経験のない先生が顧問をやる必要もなく、外部コーチを中心に運営を図ることで質の高い練習も可能となります。
(※ちなみに京都市内中学校に62校設置されている吹奏楽部の65%以上が外部コーチを導入しています。)
地元の上京区においては嘉楽中学校と烏丸中学校には吹奏楽部がなく、近隣の上京中学校や二条中学校には吹奏楽部があります。移動面においても自転車や公共交通機関で十分に通うことができる範囲内にあることから、こういった地域事情も十分に加味したうえで、モデル実施を検討するべきです。
スケールメリットを生かした活動を行うことで、保護者への費用負担の軽減、専門性の高い技術指導の提供、さらに地域間での不公平感の解消にもつながります。特に京都市内中心部では中学校間の距離が他都市に比べて短いこと、公共交通機関が発達しているメリットを十分生かしつつ、まずは行政区単位から試験的実施を検討すること
〇部活でこければ、学校生活もつまづきかねない問題
これまでの部活が学校と直結していたがゆえに何らかの事情で「部活を辞めたい」と感じている生徒が、学校内での人間関係の悪化を恐れて「辞めることができない」という状況を生み出してきた側面は否定できません。
しかも、楽器はやりたいけど「コンクールで金賞をとること」に興味が持てない生徒にとって「入った部活が強豪校」なのは相当なプレッシャーです。逆に「もっとうまくなりたいのに、リソースが足りない結果上達できない」という課題もありました。
ゆくゆくは・・・
「全国大会を目指すチーム」
「大会には出ず、演奏会メインのチーム」
「マーチングメインのチーム」
など、同じ吹奏楽カテゴリーの中から生徒自身の意思で、チームの特性から自由に選び、行き来できるようになることが理想ではないかと考えています。
地域移行は動き出そうしている最中です。
やりながら、一番良い方法をとることになると思います。
しかし、「生徒にとって何が良いか」ということを軸に
「地域も発展する」
「先生も負担軽減になる」
「保護者も家庭の経済状況に左右される子どものやりたいことをやらせてあげられる」
という形になるよう、取り組んでいきたいです。