『名古屋 空手物語 ~怪物志願~ 』第36話


《1980年(昭和55年) 10月以降 昭和道場黒帯後輩 ビッグマグナム教師其のⅣ》


Оクンや俊一クン、分支部長クン達とお喋りしていて、私が余りにブーの事をアホ、バカ云うモンだから、ブー先輩を馬鹿呼ばわりする人を初めて見ましたヨ!!! と云われて仕舞った。特に青龍刀の分支部長クンなどは、大会出場に際してブーの所へ教授・相談に赴いたぐらいだから尚更ダロゥ。
確かに、彼らにとってのブーは大先輩であり、愛知支部としては全日本大会や地方大会に正式の選手として出場し始め、優勝したりし出した時期の先駆者でもあった(此の後、鶴太郎や優作と続きやがて山本健策の時代となって行く)。
まぁ、ブーの御話は此れ迄にもチョコチョコ挟ンで来たし、何れ纏めて語れる時も来るダロゥ(私が退会してからの実績は、少し調査を要しソォだ。ドォせ、本人に訊いたっテ、ゴニョゴニョ云うダケで3分の1も理解不明なのだから…苦笑)。


私の方は近況報告すると、又々Оクン繋がりでオーストラリアの空手家グレース氏と面識を得た。
三協映画『地上最強のカラテ』にも登場していテ、芦原英幸師範にも学ンだと云う。二宮城光が二段の時、既に三段だったと云うのだから、我々にとっては極真の先輩となる。勿論、年齢的にも上の方だ。
会食を供にさせて頂いたが、英語でないと余り言葉が通じないのデ、中学・高校時代は成績が「5」であった私でも会話にならなかった。何ンで日本の英語教育は、全くヒヤリングを重視してないのかネ!!!!! 
今でコソ、尽々思うヨ…文法だとか読み書きなンか全然出来なくても良いから、外国人の教師を雇って会話中心の教育に変えろっチュウんじゃ、文科省!!!


余り会話は出来なかったが、楽しンで頂けたのダロゥかしらん。


お盆休みの間は、空手や武道、武術関係のYou Tubeをつらつらと眺めていた。以前観た映像も、再度ゆっくりと見返してみた。


You Tubeで観られる映像に某老拳法家(合気の達人!? と謳われている)が、若い総合格闘家に伸されるシーンが有る(其の達人の名前は、漫画『バキ』に登場した毒手の遣い手と能く似ている。どちらがドッチを真似したンかネ!?)。
以前にも観ていて、余り気にしてはいなかったが、今回は詳しく眺めてみた。


最初に貰った総合格闘家の左パンチ顔面強打(但し、鼻血を流した程度)デ、もぅ既に戦意を喪失している。一応、試合は再開となるが、再び片腕を掴まれた状態で顔面パンチを連打され蹴りまで見舞われ、今度は俯せに崩れ落ちて仕舞った。
此の方、弟子を相手にしているデモンストレーションでは、殆ど相手に触れもせズ弟子たちを投げ飛ばしたり転がしたりしていたのだが…はっきり云っテ、実戦の体験や経験が全く皆無だとしか思えない一方的な負け方だった。


此の方が60代か70代か年齢は知らないが、私が此の老人と同じ年代だったとしても、こんな試合(観客を動員した会場での公式戦)を組まれたら最初から若い総合格闘家を倒しに行くし、最初はリアルな試合でないと勘違いしたにしろ少なくとも初回の左顔面パンチを貰った時点デ、此の野郎絶対潰したるぞモードのスイッチが入る。鼻血パンチぐらいデ、気持ちが折れて戦意喪失なンて到底信じられんワ。
我々の嘗て遣って来たモノは、最初の顔面パンチを貰ってからが本番開始の組手だった(更に突っ込みを入れるとしたら、仮に実戦体験をして来た武道家ならこんな勝負は初めから受けない選択をする筈である)。
此の映像を観ると、極真空手の創始者大山倍達の気持ちが能く判る。正拳や蹴りを当てる事無く、此れが当たったら一撃で相手が死ぬと実戦を避けて来た空手家に対し、こンなんでは駄目だまるで役に立たないと表明した気持ちが痛い程。
今では、伝統派空手や沖縄空手、合気にも学ぶべき点が少なくないと思っているが、実戦を体験しないで達人扱いされている武道家(武術家)の弱っチィのを久々に観た気分です。


リアルな世界を体験してないと、こんな風になるのかと。私はリアルな世界に生きて来た。そして現在も或る程度はリアルな世界と繋がりを持っているのだが、其れでも達人が居て欲しいと願っているし何処かには実在すると信じているタイプだ。
だからコソ、此の映像は余計に残念過ぎる。此れでは、仮りに本物が居たとしても世間は信じなくなって仕舞うではないか!!
皆が、相手を触らズに投げる映像を観て、全部が全部やらせだと思ってまうダロゥよ。


昔、気で相手を触れズに弾き跳ばす映像を見せられた大山茂総主は突然笑い出し、「こんな事が可能なら、我々が血を流し歯を跳ばして一生懸命遣って来たのは何ンだったんダ」とおっしゃられた。
私もソォ思うが、矢張り達人には存在していて欲しい。
リアルを体験して居ても、年齢的に又心構え一つで足下を掬われる事は有り得るのだ。況してヤ、リアル体験の無い達人など、存在は許されない。 


此れは、大山空手の中では既に伝説に成っており又、御本人も亡くなって居られるから語っても構わないと思うが、太氣至誠拳法の創始者澤井健一先生が大山道場創生期の安田英治師範代に裏拳デ病院送りにされた話が有る。
恐らく一本組手か約束組手の様なつもりで「君、何処からでも掛かって来なさい」と声を掛けた澤井先生に対し、鬱陶しいから潰して仕舞えと大山館長に命じられた安田師範代が本気を出した結果だと思われる。
澤井先生が頻繁に極真の本部道場に顔を出し、道場生を捕まえては組手の指導をしていた話は、芦原館長や盧山館長の書籍内にも掲載されていたし先生からも直に訊いた。愛知支部で使う組手の手首を使用した引っ掛けなどは、太氣至誠拳法の技らしい。


或いは近年の話(御存命だし)なのデ、未だ余り詳細を語れないが、矢張り太氣至誠拳法のカレンバッハ師範(我々の頃は、カレンバッチと云っていた)が、某空手団体流派の道場生に「何処からでも掛かって来なさい」と鷹揚に構えてたらタックルで倒され、馬乗りのマウント状態でボコられた話など。
カレンバッハと云えバ、来日当時は大山道場の全黒帯指導員が倒され、其の頃緑帯だった先生もペッチャンコに潰されたと云う強豪である。四国に渡っていた芦原師範ぐらいしか勝てる人は居なかったンじゃないかナ。幸い藤平昭雄(大沢昇)と云う大山空手屈指の大物が、カレンバッハの進撃を食い止めたのだけれど…つまり、そんな強豪でも演武や模範組手のつもり(気持ち)で臨んだら、コチラを本気で潰ソゥとしている若い格闘家に不覚を取ると云う事だ。
此れらの勝負は実際見聞した訳では無いが、私は決して年齢差のみで勝負に敗けた訳では無いと考えている。恐らく、目上の人を自然と立てる武道界の決まり事に染まらない最近の若者格闘家に油断した結果なのではないだろぅか。


恥ずかしながら、私にも此の体験は有る。
私が現役の頃の愛知支部に先生よりも年上の剣道と合気道の道場を経営されて居る方がみえていた。仮に國雄さんとしておこうか。國雄さんは私より下の帯であった。
昇級審査だったか昇段審査だったかの時、國雄さんの相手役に私が指名された。同じ帯で同年代の方が居なかったからダロゥ。
私の脳は真っ白になった。果て!? 私は闘って良いのかしらん…其れとも受けオンリーなの??? 何も云われない先生がドチラを望まれているのか、私には判らなかったのだ。私の年齢は、國雄さんの半分か3分の2以下である。幾ら剣道や合気道の高段者とは云え、空手に関してダケは格下同然。況してヤ、此処は実戦喧嘩空手の愛知支部であり、其の頃は30代後半や40代の方が遣れる組手ではなかった。


当然、私は本気を出してはいけないのでしょうネ…ぼ~っと突っ立ってたら、いきなり足払いでスッ転がされた。
同輩や後輩達も周りで眺めている前で・・・プッつん!! 気が付くと私は3、4発國雄さんの顔面を引っ叩いて仕舞っていた。其処で私の攻撃が止まったのは、先生から叱責を受けたからである。
「コラ、コラ、コラァ!!! 受けンかィヤ、ぼ~っと突っ立っとるから殺られるンだヨ」


お、お、お、おっしゃる通りで御座います~ぅ・・・笑( ̄◇ ̄;)


しかし、You Tube映像の某老達人は此の例とも違う。最初から弱いのが、自分の道場内ダケでの達人錯覚に見事嵌り込み、我を忘れ現実を無視して本物のプロに観客を動員した会場で試合するなどの暴走を起こした結果の顛末が此れなのだ(一応、「と思う」としておきましょうか)。
もぅ一度、強調しておこう。独り好がりの稽古のみデ、達人並みの身体動作を身に付けたとしても、生涯のどの時点であれ一度の実戦体験も無い武道家は全く使い物にならないと。


以前にも書いたカモ知れないが、宇城憲治創心館館長の師匠でも在られた沖縄古伝心道流空手道心道会の座波仁吉会長は、型を身に付けた処デ掛け試し(真剣勝負)を経験していなけれバ、使い物にならないとおっしゃられていたと云う。
私の瞳にYou Tube映像の某老達人は、実践経験が皆無と映ったけれど皆様はドォ思われましょうか・・・・・・


あららら、今回も雑談の方が長引いて仕舞いましたナ。


ビッグマグナムのエピソードを一つダケ挟ンで次回に回します。


ビッグマグナムが校庭の花壇の世話をしていた時、校庭に一台のバイクが乗り込ンで来ました。バイクで校庭を走り回っていたバイク野郎は、ビッグマグナムを見付けるとバイクを降りて近付いて来ます。
ビッグマグナムは花壇に落ちている煉瓦ブロックを一つ拾うと後ろ手に隠し持ち、バイク野郎の接近を待ちました。勿論、ド頭をかち割る為です。
相手がヘルメットを外した瞬間、ビッグマグナムは煉瓦ブロックを頭上に持ち上げ様とします。
しかし、相手が先に言葉を掛けました。
「あのォ~すいません。○○先生、いらっしゃいますか!? 僕、此処の卒業生で担任の先生だったンですヨ。久し振りに会って御挨拶したくテ・・・」
「・・・・・・お、おお応ゥ、ソォかァ・・居るゾ。今から教員室に案内したるワ」
相手に見付からない様に煉瓦ブロックを花壇に投げ捨てるとビッグマグナムは、バイク野郎の肩に腕を回し親しげに教員室へ連れ立って行ったのでしたとサ。

 

【※此の作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、一切関係ありません】