私は正式に中国武術を習った事は有りません。

よって、これから語る化勁や太極拳については、あくまで門外漢である私の独自解釈となります。

それでも宜しければどうぞ!

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「勁」とは「技術が伴った力」と定義します。

そして、勁には「明勁」「暗勁」「化勁」等があります。

他にも色々ありますが、先ずは三つだけ把握してください。すごく簡単に説明します。

 

明勁とは、見た目で解る力です。素人が見ても「パンチだ!」「キックだ!」「投げだ!」とわかる動きです。

暗勁とは、ぱっと見、解りづらい力の出し方です。主に短い距離から一気に力を出す「寸勁」や「ショートパンチ」のようなものが挙げられます。

そして化勁

これは流派や人によって、

 

化勁・・・崩しや受け流しの一種

化勁・・・明勁、暗勁が進化したもの

 

と、大きく分けて二つの解釈に分かれます。

おそらく、「化」の文字から、

 

・相手の力が化わる

・自分の力が化わる

 

の二つの捉え方が生まれたのだと思います。

私は、後者の「明勁、暗勁が進化したもの」という解釈を採用しています。

しかし、化勁を習得するに辺り、推手で行う崩しや受け流しの練習を積むことは必要です。

 

ここの部分が非常にややこしいので、改めて整理して表現します。

 

〇 化勁の習得には、崩しや受け流しの練習が必要

× 化勁とは崩しや受けの事である

 

冒頭で述べたように、これはあくまで私の独自解釈ではありますが、この定義に準じて技術を構築しないと、余程の天才でない限り、高度な技術を習得できないと、私は思います。

 

さて、では化勁とは何か?

一言で言うと、

 

相手が反応できない動き

 

です。

これはどういうことか、前段階の明勁や暗勁から順を追って説明します。

 

明勁や暗勁は解りやすい解りずらいという違いはあるものの、よくよく観察すれば技の発動時には何らかの予備動作が生じます。

また、心理面では大なり小なり、

「技を出すぞ!」

という意識があります。

 

では、推手の際、例えわずかでも「予備動作」や「技を出すぞ!」という意識で相手の何らかの技を掛けようとしたらどうなるでしょうか?

経験がある方はおわかりでしょうが、推手の熟練者が相手であれば確実に墓穴を掘ります。

逆に、攻撃意欲が高い相手は対処が簡単です。

 

推手で主導権を取るには、

「相手の力を感じ取る」

事が必須です。

 

しかし、ずっと「相手の力を感じ取る」だけではいつまで経っても自分が優位に立てません。

そこで、相手の隙を探り、良いタイミングだと感じた瞬間に力を発する必要があります。

 

しかし、仮に相手の隙を見つけたとしても、予備動作や攻撃意思が表れてしまうと、相手はすぐに反応して立て直してしまいます。

よって、相手の力を感じ取りつつ、ベストなタイミングで

 

相手が反応できない動き

 

によって、力を発する必要があります。

この時の「反応できない動き」とは、目にも止まらない速さという事では無く、

 

視覚で認識されても身体が反応できない動き

 

です。

具体的に身体が反応できない動きとは、

 

技が認識されるまでに要する時間約0.2秒以内の動き

 

です。

このように聞くと、「目にも止まらない速さ」をイメージしてしまうかも知れませんが、そういう事ではありません。

話を推手に戻すと、推手で主導権を取るには、「単純な速さ」では無い事は解る筈です。

しかし、技に速度が全く必要ないのかと言いますと、そんな事はありません。

いくら相手の隙を感じ取り、力を発しようとしても、遅すぎても相手に反応されます。

しかし速くしようとしても、また反応されてしまいます。

ではそうしたら良いか?

 

体内の各関節の初動のみを極小さく高速発動する

 

のです。

例えば、右のパンチを出す際、右の拳が構えの位置から動く前に、力を発する為に各関節が動きます。

その動きは、主に肩甲骨や股関節に表れます。

その動きを少しづつ小さく続け、やがては少なくとも服の上からでは解らなくします。

イメージとしては体内で予備動作を完結させるようにします。

予め体内で予備動作を終えてしまえば、初動を極小さく高速発動する事ができます。

 

このような力を蓄えているような状態を蓄勁と呼ぶことがあります。

しかし私は更に細分化して、

 

明蓄勁

暗蓄勁

 

と分けて定義しました。

明蓄勁とは、文字の通り蓄勁が表面化している状態です。

例えばパンチを打つ前に、「パンチを打ちやすい構え」が、力を蓄えている状態であり、わかりやすい蓄勁の状態、すなわち明蓄勁します。

攻撃に適した前段階の構えは、素人であれば明らかですが、経験を積むことで、その明らかな構え、すなわち蓄勁が少しづつ解りづらくなります。

その行き着き先として、力を蓄えている様を、フォームとして可視化させず、体内で蓄勁を行う事を暗蓄勁とします。

つまり、

 

化勁とは、暗蓄勁から相手の力を意識を感じ取りつつ、相手が反応できない力を発する

 

事だと私は捉えています。

 

推手(接触状態)で化勁習得のキッカケを掴んだ後は、接触前の攻防でも応用します。

前述したように私は、

「化勁=崩しや受け流し=接触しないと使えない技術」

という考え方ではありません。

接触しなくても化勁を使えなければならないと私は考えます。

その為には、様々な要素を踏まえる必要がありますが、長くなってしまうので、別の機会にお伝えします。

 

一般的な技術は、大なり小なり技の発動時に予備動作から技が発動します。

この状態を「緩急」とします。

 

緩・・・予備動作

急・・・技

 

故にいくら技が速くても、予備動作は緩(遅い)であれば、認識は可能です。

しかし、化勁はその逆で

 

急緩

 

です。

 

発動前・・・予備動作を体内で終えている

急・・・初速がトップスピード ※イメージ「1ミリだけ速く」

急・・・物理原則に則りトップスピードに達した後は速度が緩やかになる ※イメージ「1ミリ後は緩やか」

 

つまり、第3者の目には遅く感じるのです。

しかし、対峙している人の目には認識しづらいのです。

この急緩の動きで動くと、必然的に太極拳っぽくなります。故に、

 

太極拳は遅く見えるけど実は速い、化勁の習得を目指している

 

と私は思いました。

実際、太極拳は套路(型)と推手を両輪として学びます。

以前の私の考え方は、

 

太極拳は、ゆっくり行う事で正しい動きを身に付け、実際に戦う時は速く行う

 

と解釈していました。

しかし、そもそもゆっくりに見える動きが速いと考える事ができます。

最も、一口に太極拳と言っても、

 

普通にゆっくりやっている「緩緩」の動きか、

化勁の「急緩」の動きか、

 

実践者によって異なりますが、素人目には判断はつかないでしょう。

ただ、一般的に「カッコいい!」と思われる動きの多く型は、

 

技の発動時はゆっくり、技のインパクト時に「バシッ!」と最高速度に達する緩急の動き

 

です。

この動きは、明勁、あるいは暗勁の型と言えます。

段階を踏むという意味では、これらの型は必要です。

しかし究極は「急緩」の動き、つまり太極拳的な動きになってゆくと私は考えています。

 

 

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