子供空手ハイキック事件に思う - 小学生のフルコン空手に大会は必要か? | 武道上達法研究会|新大阪・川崎で沖縄空手指導

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先月の空手界でもっとも一般の話題になったのはヤフーニュース等でも取り上げられた少学生空手大会での不意打ちハイキック事件ではないだろうか。

 

 

行為そのものに加えいろいろと話題を提供してくれた事件である。当事者でもなく、入手しているのがネット情報のみのため事件そのものの批評はここでは控える。 ただ、この機会に小学生のフルコン試合についての是非は考えてもいいのではないか。

 

フルコン試合はおおむね昭和44年に開始された極真会館の大会ルール(いわゆる極真ルール)に類似したものを採用している。全身を打撃できるKOルールを採用検討したとの説もあるが最終的には安全のため上段への手技は反則となった。結果として実戦でもっとも多用される手による顔面攻撃を廃したルールとなる。それでも当時は「寸止め無しの実戦空手」を称していたことはマンガの影響もありよく知られている。

 

安全、普及を考慮すれば危険技の排除は仕方がない。また、初期の大会の映像を見れば顔面パンチ反則であっても多くの選手はそれなりに上段への攻撃も考慮した構えをとっており、ボディをゲンコツ押し合いといった試合は少ない。当時は大会も少なく、出場するのは極真、他流(オープン大会のため)の精鋭がほとんどだった。はじめにルールありきではなく、空手としての技術、誇りを優先するといった認識が選手間に持たれていたと思われる。

 

フルコン空手は平成以降ポピュラーになり、子供から初老まで男女が楽しく集えるスポーツとなった。競技人口が増えれば試合によりモチベーションを維持し、組織の拡大が図られるのは世の常。時代を経るごとに精鋭のみの試合でなく「みんなの大会」となっていった。

 

「勝ちさえすればそれでよい」と教える指導者は少ないと思うが試合に出れば勝ちたいのが人情。中途半端な習熟度の選手が一番使いやすく、かつ効果が大きいのが両手を身体の横に下げ、激しく相手のボディを連打しての押し出し技。多くのフルコン道場ではビッグミットやサンドバッグを用いて連打のスタミナと相手を後退させる地力をトレーニングしている。

 

さて、試合に勝つための技法として上記は一概に否定できないもののこれを小学生にそのまま適用し、かつ小学生大会で双方ほぼ同じ方式(押し出し)で決着をつけるのは問題が多いように思える。いくつか例を挙げれば

 

①筋力が未発達な状態で体重を乗せた押し技(あえて「突き技」と呼ばず)を身体に覚えさせる(技術よりも体格重視)

②未発達な体に相手の全力攻撃を当てさせる(健康面への問題)

③極端な接近戦で上段攻撃への対応に無関心となり、剣道や伝統空手に比して敏捷性の育成で疑問が残る

 

といったところだろうか。

 

フルコン空手にはキツさに耐え、攻撃への恐怖心を克服し、基礎体力を養うなどの利点も確かにある。それならば大会でなくとも通常の道場稽古で指導者が管理して行えば十分ではないか。成長に差のある小学生では本人の努力が反映されるとは限らない。柔道は2022年 小学生大会を廃止した(骨抜きな部分もあるようだが)。このような方向性が出ていることはよいことだと思う。フルコン空手の世界でも考慮できないだろうか。