暖かくなった。
昼間25℃にもなる日がある。
この辺じゃ、
えーっ そんなになったの!?
ってびっくりするくらいの暑さだ。
もう夜も夜明けも10度よりは
下がらないだろうか。
うちのグラジオラスの鉢を
ベランダに出している。
これからは、寒くなるまで
お外で暮らすことになる。
朝と、仕事帰ってきてからと、
あと夜寝る前に
(これなかなか出来ないんだが)
会いに行く。
膝くらいまで大きくなったら
椅子の近くに鉢を置いて、
一緒にギターのバッハ聴こうね、
なんて言ってたんだけど、
膝くらいに延びた頃に
彼女らは
ベランダ暮らしとなった。
そしたら、
なんだか寂しいのである。
雨降ったら部屋に入れちゃおうかな、
まだそんなに巨大になってないし、
そんで一緒に福田進一さんのギターで
バッハ聴こうかな
なんて思うんである。
彼女らがお外へ行ってから
バッハ聴いてない。
あれ?
なんで?
って考えたら、
鉢を椅子の近くに寄せて
一緒に聴くまでとっておくんだ
なんて思ってる事に気づく。
不思議でしょ?
あたしは動物界ヒト科
彼女らは、「界」さえ異にする
植物界アヤメ科さんだ。
感情の交歓なんて、ないんじゃないか。
それでも、寂しいし、
一緒にいられる時を、
私は待ってるようなのだ。
あたし、オカシイのかな。
やっぱり、彼女らの先代と、
一冬過ごしたからだろうか。
寒いのもあったけど、
日照時間が短いから、
蛍光灯の光でも光合成可能と
聞いてからは、
茶の間に置いていたのだ。
夫の夜更かしに付き合わせて
光合成してもらった(つもりだけど
ホントのとこはどうなのかな?)。
ことしは正しい時期に成長しつつ
あるのだから、
やっぱ自然の日照時間にまかせるのが
いいよねって、
温かくなって外に出した。
こんな寂しい気持ちになるとは。
仕事行ってても、
風がつよくなれば
ああ木子の球根から出たあの子は
ほっそりして風に耐えられるんだろうか
寒くて弱っちゃうかな、
とか
陽が射して暖かくなれば、
ああ出してやってよかったな、
なんて思ってる。
過保護なのかな?
いや過保護だと思う。
植物っていうのは、たぶん
置かれたところに咲く力を
持って発芽する。
あの子達だってそうだと思う。
私が出来るのはせいぜい、
土が乾いたら水をやり、
すんなり伸びた葉が傾いだら
支柱をたててやるくらいだ。
でも不思議だ。
ホントに不思議だ。
植物にもヒトって、情が移るんだね。
彼女達がどう思ってるのか知らないけど、
今は、会いに行った束の間、
一緒に聞こえるものを聴いて、
せいぜい同じ風に吹かれよう。
ああもう郭公が鳴いてる。
風に浜の匂いが混じっている。
昼はこんなに子供の声がするんだね。
月が雲から顔を出した。
草の香りがする。
カエルがずいぶん鳴くねー…
これがそのうち、
虫の鳴き声になるのだ。
最近霧の日が多いから、
明日も霧だったら
夜家の中に入れてやろうかな
蛍光灯で光合成だ。
ほんとにほんとに
不思議なもんだね。