この人の『絵』シリーズは
好きだ。
絵の話以外の本は読んだことないが。

著者は

新潮社のプロフィールによると、

ドイツ文学者だそうな。

美術史家とか、どこぞの美術館の

学芸員さんなのかと思っていた。
Wikipediaによると、生年不詳。

 

Wikiさーん、寄付は、したいの。

でもクレジット払いとか、GooglePay払いとか、したくないの。

コンビニ払いも作っていただけません?

 

私にとっては『怖い絵』『運命の絵』シリーズは

まずハズレがありません。

両シリーズとも、

 

字が大きいし、絵が入っててキレイだ照れ

その当時の人たちの生活や

考え方を

絵1枚から残酷なほどに読み解いてくれる。

 

西洋の女性も、

日本の女性に勝るとも劣らない

ヒドイ扱われ方だ。

ヒドイ扱い方をされてきたから

女は激しく強く、権利を勝ち取って

行ったのかも知れない。

イロイロ考える。

 

『怖い絵 泣く女篇』

「レディ・ジェーン・グレイの処刑」

こんな場面を絵にするんだびっくり

って、そこからしてショックだった。

 

※表紙にもなっている絵ですね。よほどショックだったのか内容をあんまり覚えていない。でも面白かった。この若い女性、9日間だけイギリスの女王さまだった。陰謀に陥れられ、短い女王在位と人生を終えた。まだ十代だったみたい。この本をきっかけに、何冊か読んだ。

 

女性の境涯にゾッとしたのが、『怖い絵3』。

近代西洋でさえも、

女は、養ってくれる男性を喪ったら

身を売るか死ぬしかないんだな、

と思った。

「かわいそうな先生」

で、女家庭教師はなぜこんな憂い顔を

しているのか。

「ジン横丁」

では落ちる所まで堕ちた人々の

地獄絵図の真ん中にいるのは

乳飲み子を抱えた街娼だ。

著者は、女の一生のリアルを

紹介してくれる。

 

※この本では、自分を凌辱した父親を殺した罪で斬首された美少女ベアトリーチェ・チェンチも扱っています。ターバンを巻いた絵は有名。ターバンを巻いてるっていうことは、処刑直前ということ。

 

さて。

『運命の絵 なぜ、ままならない』。

表紙はダヴィッドの「マラーの死」ですね。

マラーはフランス革命の指導者だそうで、

民衆寄りのジャコバン党で文筆活動を行っていた人。

没落貴族の娘・シャルロット・コルディに殺害された。

 

この絵、日本に来たことがある。

もう40年近く前、大阪で観た。

その時思った事は、

なーんでこの人、風呂場で殺されたんだろう?

と思ってたのだけど、

皮膚病が悪化し、硫黄水入りの風呂に

つかって生活していたのだそう。

へーえそうなのかあ。

ふやけそうだな。

とにかく、積年の疑問が解決してよかった照れ

なんで面識のないシャルロットを

女性と同居していた

マラーが浴室にまでいれちゃったのか

本書でご確認ください。

 

興味深かったのは

「デルフォイの巫女」を描いた絵について。

ミケランジェロの天井画が有名ですね。

 

著者は、同じテーマを描いた絵を紹介する。

こっちはイギリスの、ジョン・コリアと言う

画家の描いた「デルフォイの巫女」

デルフォイは古代ギリシャの「パワースポット」。

山奥なんだそうだ。

メタンやエタン、エチレンガスが噴き出す

岩盤の割れ目に

三脚を置いて座り、

予言の力が得られると言われた

月桂樹の葉を噛んで予言を授かる。

そんなトランス状態に入った巫女さんを

この画家は描いた。

きっとこれが本当なんだろうなあ。

ガス自体は人体には無害だけど、

空気中の酸素濃度を低下せる働きがあるので

巫女さん達は酸欠状態、長くいると

催眠作用が働くんだそうだ。

いかにも、人間ならぬものの言葉を

伝える「よりまし」の正統派というか…。

見た事も無い、ちょっぴりの記録しかない、

しかも大家ミケランジェロの先行作品がある

「デルフォイの巫女」のリアルみたいなのに

迫った絵を紹介してくれた。

 

この本にはもう一つ、ジョン・コリアの

作品が乗っている。

「クリュタイムネストラ」だ。

この人はトロイア戦争に勝利した

将軍・アガメムノンの奥様。

夫は

前夫との間に生まれた娘

を戦勝祈願の生贄として殺した上、

勝利して妾候補の女を連れ帰って来る。

(その間に自分は間男していたんだけどキョロキョロ

その、夫と愛人を殺し、

部屋から出てきた姿。

右手に血の滴る斧を床につき、

2人を殺した返り血で衣を真っ赤に染め

周囲を

「なんか文句あるの!?ふん」

とでも言っているように睥睨している。

人を殺してきたばかりの女の凄惨な姿が、

見ていてなーんか

清々しくも気分がよろしい。

こんな画家もいたんだなあ。

有名どころ、こんな人も居たんだという画家、

いろいろあって、この本も楽しかった照れ

 

 

※手術室の絵も出てきます。ナイチンゲール以前の看護婦さんの社会的地位にびっくりびっくり昔の手術はコワイ。16人もの修道女がギロチンにかけられる絵がオペラになり、その演出がまた衝撃的で…。いやーあ、絵って、コワイですねえ照れ