鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2024年8月28日号)

*領空侵犯されて訪中?

 26日、長崎県の男女群島沖の日本領空を中国軍機が約2分間、侵犯した。2分間とは短いと思う人がいるかもしれないが、その間の飛行距離は十数キロメートルに及ぶ可能性があり、とても短いとは言えないのである。中国による領空侵犯は過去に2例あるが、軍用機による侵犯は、これが初めてである。

 中国軍機が日本の領空に接近した段階で、空自機がスクランブル発進して警告を発しているはずであるから、うっかりミスと言う事はあり得ない。要するに意図的な軍事作戦としか考えようがない。では、その意図とは何か?

 

 翌27日、日中議員連盟の二階俊博会長らが訪中したが、事前に予定されていた訪中であるから、ここを狙って仕掛けたと見て間違いない。本来であれば、訪中をキャンセルすべきなのだが、二階らはキャンセルしなかった。これこそ中国の思う壺(つぼ)である。

 二階らは中国で抗議するつもりらしいが、中国側は「状況を調査中」などといってお茶を濁すに決まっている。米国を含めた諸外国から見れば、日本は領空侵犯されて中国に膝を屈したとしか見えないだろう。

 

 航空自衛隊の対応も情けないものだった。1987年12月にソ連(ロシア)軍機が領空侵犯した際に空自機は初の警告射撃を行った。外務省もソ連大使を呼びつけて抗議し責任者の処罰を要求した。ソ連側は悪天候と計器の故障による事故と釈明し責任者の処分を約束した。

 絶対に自国の非を認めないはずのソ連が非を認めた珍しい事例だが、この4年後にソ連は崩壊したのである。

 今回、空自は警告射撃を行わず、外務省は中国臨時代理大使を呼んだものの、訪中団はキャンセルせず、日本は中国に対して腰砕けの醜態を国際社会にさらしたわけである。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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