鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2024年5月28日号)

*もしトラで揺れる台湾

 大紀元に拙稿「もしトラで揺れる台湾の未来 頼清徳政権の難しい舵取り」が掲載された。以下概要を紹介する。

 

 5月9日に台湾の有力政治家である呉ショウショウ氏(当時外相、現在国家安全会議秘書長)が米国誌フォーリンアフェアーズに「ウクライナを守ることで台湾を守る」という論文を寄稿した。この論文は頼清徳政権の外交安保政策の指針を示していると言っていいだろう。

 その論旨は、題名から明らかなように米民主党の主張に沿ったものだ。つまり、米国を含む民主主義国はウクライナへの軍事的ないし人道的支援を継続しなければならず、それが台湾防衛につながるとして、4月20日に米議会がウクライナへの支援を決めたことに歓迎の意を示したのである。

 

 呉氏の論文が発表された二日後の5月11日に、台湾の英字紙、台湾タイムズに米共和党の激烈な反発を示す論文が掲載された。筆者はエリブリッジ・コルビー氏、トランプ政権で国防次官補代理を務めた人物で、対中強硬派の論客である。

 彼の従来の主張は、米共和党の一部の主張と一致する。つまり「米国はウクライナよりも台湾防衛を優先せよ」という主張だ。

 

 ところが台湾の新政権が米民主党に同調し、「ウクライナを優先して構わない」と言い出したものだから、怒りが心頭に発したのであろう。「台湾は、中国が攻めてきたら本当に戦う気があるのか?台湾が戦う気がないのに、米国が戦うことはありえない」という論旨を展開したのである。

 「ウクライナに武器を送らないで台湾に送れ」と主張してきたのに、肝心の台湾自身が「ウクライナに武器を送れ」と言い出したわけだから、「台湾は本当に戦う気があるのか?」との疑問はもっともだ。

 

 コルビー氏は、台湾の防衛費の少なさを問題視している。台湾の防衛費はGDP2.5%だ。米国は3.5%、ウクライナの隣国でロシアの侵略の脅威にさらされているポーランドの4.5%に較べて、台湾は中国の侵略の脅威に対処しようとしているとは思えない。

 ならば台湾が防衛費を大幅に増額すれば、いいはずだが、今年1月の総選挙で与党民進党は国会で過半数割れになっており、防衛予算の大幅な増額など望むべくもない。

 トランプは「台湾を守るか?」との質問に対して、「交渉次第」という姿勢を崩していない。もしトラで頼清徳政権がさらに窮地に追い込まれると見て間違いあるまい。

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 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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