鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2023年1月16日号)

*今年はどうなる?

 まず最悪のシナリオを紹介する。ウクライナ戦争が今後一層激化した場合、通常戦力で劣勢に立たされるロシアは核兵器を使用するしかない。この場合、米国は軍事介入するだろうが、ロシアとの全面核戦争を避けたいから、通常戦力で反撃することになろう。

 従って米軍は、欧州に大量投入されるから、東アジアにおける米軍のプレゼンスは失われる。中国はこれを好機と捉え、台湾に侵攻する。日本は、この場合、米軍を全面的に支援するすると確約している。従って、中国は米軍の出撃を阻止すべく日本を攻撃することになろう。

 

 この場合、中国は日本に核兵器を使用する公算が高い。なぜなら既にウクライナで使用されているのに米国は核による反撃をしないのを見れば、中国が日本に使用しても、米国は核による反撃をするはずがないと考えるだろうからだ。

 また自衛隊には核シェルターがほとんどないので、核攻撃されれば即日、壊滅してしまう。日本の反撃能力はまだ整備されていないが、仮に整備されたとしても核兵器の威力の前には抑止力にはなりえないのである。

 

 つまり今年、ウクライナでロシアが核兵器を使用し、中国は台湾に侵攻し、日本に核兵器を使用する可能性がある。これは今考えられる最悪のシナリオであり、米バイデン政権は、この最悪の事態を避けるべく水面下で交渉している。

 昨年12月21日にウクライナのゼレンスキー大統領はバイデン大統領とホワイトハウスで会談した。その正確な内容は不明だが、その二日後に、ウォール・ストリート・ジャーナル誌は「ゼレンスキー政権が来年2月24日に合わせて和平案を提示する計画」旨を報じた。

 

 2月24日はロシアがウクライナに侵入した日であり、その一周年を期した和平案である。さらにその二日後の25日にロシアのプーチン大統領は停戦交渉について「妥結の用意はできている」とロシア国営テレビで述べており、水面下で何らかの交渉が行われているのは間違いない。

 

 もし停戦が実現すれば、最悪のシナリオは吹っ飛び、景気は一気に回復し、日本は再び鼓腹撃壌(こふくげきじょう)の繁栄を迎えるかもしれない。もちろん中国が台湾を諦めるわけではないから、平和は一時的であろうが、それでも今年、核爆弾が落ちて来るよりましであろう。

 

 今週土曜日(21日)21時から、軍事トークライブ「今年はどうなる?」を配信します。

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軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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