鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2022年8月7日号)

*米国は中国に敗けたのか?

 1996年、中国が軍事演習と称して台湾海峡にミサイルを撃ち込んだとき、米国は空母2隻を同海峡に派遣し、中国は軍事演習を中止した。米第7艦隊の前に中国は敗走したのである。

 今般、中国はペロシ訪台に反発する形で、台湾を包囲して軍事演習を行い、空母2隻すなわち遼寧と山東を出動させた。台湾周辺にはペロシ護衛のため米空母レーガンが控えていた。「おお、これぞ太平洋戦争以来待ちに待った空母対決!」と喜ぶ軍事オタクもいたのである。

 

 だが空母レーガンは一触即発の事態を避けるために、台湾から遠ざかった。96年台湾危機で米国は中国に勝ったというのなら、今般は敗けたとしか言いようがない。退避は退却であり、つまり敗走である。

 空母レーガンは中国の空母2隻を撃沈できる実力を備えている。もしレーガンが遼寧と山東に接近を試みれば、2隻の中国空母は退却を余儀なくされたであろう。米国はチキンゲームに敗けたのだ。

 

 チキンゲームは常に気力の試し合いであり、要するに肝試しである。96年当時の米大統領クリントンは親中的な人物だったが、台湾防衛のためには中国がミサイルを撃ち込む海域に空母2隻を敢(あ)えて派遣する気力があった。

 ペロシは8月2日に訪台したが、バイデンは7月20日にペロシ訪台の計画について「米軍はいい考えだと思っていないようだ」と発言し、台湾防衛のために米軍を派遣する気力のないことを露呈した。96年当時の米大統領は若かったが、現大統領の耄碌(もうろく)ぶりは世界平和にとって、もはや老害であろう。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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