鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2022年7月15日号)

*安倍総理、ケネディ、伊藤博文

 今回の安倍暗殺事件は半世紀以上前のケネディ暗殺、そして1世紀以上前の伊藤博文暗殺と驚くべき共通項がある。

 

 米国のケネディ大統領は1963年11月にテキサス州ダラスで銃撃され死亡した。直後に実行犯として逮捕されたオズワルドは元海兵隊員だがソ連(現ロシア)に滞在歴があり、背後にソ連がいることは確実だった。

 しかし、真相を公表すれば、米ソの戦争に発展することを恐れた当時の調査委員会は、証拠物件を2039年まで非公開とする決定を下した。オズワルドは逮捕直後にやはり銃撃され死亡し、この実行犯ルビーは4年後に病死しているから、真相の解明は2039年まで待たなければならない。

 

 明治の元勲、伊藤博文は1909年に満州(現中国黒竜江省)のハルビンで銃撃され死亡した。安重根(あんじゅうこん)が実行犯として直後に逮捕されたが、彼が撃った弾は伊藤に命中しておらず、伊藤の体内から検出された弾丸はロシア軍使用の銃の弾丸であった。

 つまり安重根はダミーであり、真犯人はロシア軍であり、銃撃直後に逃走したのである。しかし真相を公表すれば戦争に発展しかねず、1905年に日露戦争にようやく勝利したばかりの当時の日本に、その余力はなかった。

 

 さて、今回の安倍銃撃事件との共通項は明かだろう。実行犯の山上の供述は前号でも指摘した通り支離滅裂なものであり、彼が洗脳されていることは明白だ。背後関係は確実だが、日本には憲法の制約のもと、こうしたスパイ工作に対応する情報機関が存在しない。

 結局、ケネディや伊藤の事件と同様に、単独犯で処理され真相は歴史の闇に葬られることになろう。

 

 軍事ジャーナリスト鍛冶俊樹(かじとしき)

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