鍛冶俊樹の軍事ジャーナル

(2021年5月28日号)

*韓国重視のバイデン政権

 先週、ライヴ配信されたトーク番組がUPされた。下記をクリック

https://youtu.be/poOrJvMyL6E

 

 21日にホワイトハウスで開かれた米韓首脳会談については、番組でも触れたように米国の対中強硬策に韓国も加担を約束したと見られることから、会談は成功したと断言してよい。だが、これは米国にとっての成功であって、日本にとっては必ずしもそうではない。

 今回、日本の防衛関係者を驚かせたのは、米国が韓国の弾道ミサイルの射程の制限を撤廃した点だ。これで韓国のミサイルは北京を射程に収めることが可能になったが、同時に東京も射程に入ってしまう。韓国の日頃の反日的言動から、これに不安を感ずる日本人は少なくあるまい。

 もちろん、日米韓3国は防衛協力関係にあり、日米同盟、米韓同盟がある以上、韓国が日本をミサイル攻撃する訳はない。従って、今後、韓国のミサイルは中国に向けられることになり、日本は不安を感ずるどころか、赤飯を焚いて祝杯を挙げるべき慶事と捉えるべきだろう。

 

 しかし慶事は新たな不安の前兆なのかも知れない。昨年、米国は日韓を含む東アジアの同盟国に中距離核ミサイルを配備すると示唆した。また韓国に対しては高高度迎撃ミサイルTHAADの追加配備を要求した。

 米韓会談には国防長官のオースチンが同席していたから、これらが議題にならなかった筈はないが、共同声明では触れられていない。そして唐突にミサイル射程の制限の撤廃が決まっている。つまり米国の要求に対する代替案として射程の制限が撤廃されたのだ。

 具体的に言えば、米国の中距離核ミサイルを韓国に配備する代わりに、韓国製の弾道ミサイルに米国製の核弾頭を搭載することになろう。朝鮮半島の非核化とは矛盾する動きだが、かつて東欧にソ連が中距離核ミサイルSS20を配備した時を思い出してもらいたい。

 

 このとき、米国はソ連にSS20の撤去を要求しながら、同時に中距離核ミサイル、パーシング2を西独に配備したのである。核戦争の恐怖におびえたソ連は、核軍縮交渉に応じて、1987年、中距離核戦力全廃条約(INF)が締結されたのである。

 こうして米ソ冷戦末期に東欧は非核化された。米国が米中冷戦の現在、東アジアで同じ道筋を目指していても不思議はない。しかし、この方策は韓国に一時的にせよ核武装を認めることになり、日本が韓国の核の傘に入ることを意味するのである。

 

 明日、午後8時から伽藍みーTUBEで、トークライヴを生配信する。本日のテーマや昨今の国際情勢、その他の質問にも気楽な形でお答えするので、お見逃しなく!

https://www.youtube.com/channel/UCtYCuV7GOkNqxmeLYxdX5UA

 軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)

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