軍事ジャーナル(10月17日号)

 「中国は有人宇宙船の打ち上げに成功し、北朝鮮は中距離弾道弾ムスダンの発射に失敗した。中朝の技術格差はかくの如し」などと中国を讃えて北朝鮮の貶すのは、やはりマスコミの安易な比較論であろう。
 中国の現在の主力戦闘機はロシア製のスホイ27である。戦闘機を独自開発できない国が宇宙船を独自開発できる筈はない。戦闘機がロシア製なら宇宙船も当然、ロシア製である。原油安で経済的に困窮するロシアは宇宙技術を含む軍事技術を中国に売って、中近東での戦費を賄っているのだろう。
 北朝鮮のムスダンは本誌で幾度も指摘したように中国製だ。つまりロシア製の宇宙船が中国で成功し、中国製の弾道弾が北朝鮮で失敗したというのが真相なのである。ロシア製品が見直され、中国製品の欠陥がまたも露わになったとも言えよう。

 もっとも武器輸出においては最初に欠陥品を安く供与し、後で修理改修費を高く取って儲ける手法が中露などで、しばしば取られる。ムスダンは中国が無償供与したと見られるから、その分改修費に上乗せする算段だろう。同時に制裁履行を迫る米国の顔も立てたことになるから、中国もしたたかである。
 だが、中国の宇宙船がロシア製だからと言っても、中国が米国の宇宙覇権に挑戦している事実に変わりがなく、それはロシア製の武器で海洋進出して米国の海洋覇権を脅かしている中国と同じである。
 また北朝鮮に欠陥品を意図的に供与したとしても、武器支援をしている事実に変わりはなく、北朝鮮が核ミサイル技術を獲得してしまった現在においては、この失敗は日米韓にとって一時的な気休めにしかならない。
 つまり中国は海洋、宇宙、朝鮮半島において明確に米国に挑戦し、その覇権を争奪しようとしている。一方ロシアは中近東で米国の覇権に挑戦している。もはやパックス・アメリカーナは風前の灯火なのだ。

 中国の軍拡を支えているのはいうまでもなく中国の経済だが、米国はどうやらその中国経済を支える決意をしたらしい。人民元のSDR入りがそれであり、中国から米国への輸出品に高額の関税を主張するトランプへのネガティブキャンペーンがそれである。
 ウォール街は明らかに中国経済の崩壊を恐れているのである。まことにレーニンの言った如く、資本主義者は自分の首を絞める縄をも売ってしまうのである。

チャンネル桜で「地政学入門」が遂に放送開始。全25回シリーズ。是非視聴されたい。
http://www.nicovideo.jp/watch/1475838508