『1行物語 第1章 月神アリウスト夜祭』 【声】 | メモ用紙に走り書き。

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『1行物語 第1章 月神アリウスト夜祭』




【 声 】



ヴォイスは白い息を弾ませながら、厩舎に向かった。金髪が歩くごとにサラサラと揺れる。ムーグたちはヴォイスを見つけると、ブフルルル・・・と鳴いた。

「みんな、おはよう。今日はお祭りだよ♪」
そういいながら、ムーグたちに干し藁と野菜の切れ端を与えてゆく。3頭しかいないが、どのムーグも毛並みが良く、たくましい。ヴォイスが触れても、まったく動じずに黙々と藁を食べ続けている。

しばらくすると、1頭のムーグが、隣で食べているムーグにちょっかいを出し始めた。もっと食べたかったらしい。大きな角を、隣のムーグにゴツゴツと当てる。すると、やられたムーグも苛立ち、相手にぶつかっていった。

「こらこら。ケンカはだめだよ。」ヴォイスがなだめようとするが、興奮しているのか、まったく聞く耳を貸さない。どちらも巨躯である。下手をすれば大怪我の可能性大だ。

ヴォイスはスゥッと息を吸い、静かに、そして威厳のある声でこう言い放った。

「静まれ。止めるんだ。」


一瞬、空気がズンッと重くなった。と同時に、争っていた2頭のムーグがヴォイスの声に反応し、ビクッとカラダを固まらせ、動かなくなった。

「そう・・・ケンカは良くないよ。落ち着くんだ。」そう言って、ヴォイスは固まっている2頭のムーグの間に入り、互いの額を優しく撫でた。
すると、今までピクリとも動かなかったムーグが、今まで何事も無かったかのように、フルフルと毛皮を震わせ、ヴォイスに擦り寄ってきた。

「ふふ♪いい子だね。今度は仲良く食べるんだよ。」
ヴォイスは笑顔で、ムーグのカラダを撫でてあげながら、再び餌を与え始めた。

その時はまだ。ヴォイスは自分の能力に気づいていなかった。