コントユニットTOO『Golden Science』下北沢『劇』小劇場。
司会者「竹村太吾の作・演出になるコントLIVEです。ただ、コントと言っても主宰の竹村が演劇畑であることもあって、立ち上げのときからかなり演劇寄りの内容になっていましたが、今回の公演はよりいっそう、その色合いが強くなっていて、コントライブというよりはシュールな短編演劇集と称した方がいい作りになっています.ことに関口ふでの、老いたレズの死を描いた作品など、笑い要素はいくつかあるものの、ラストに至るまで、もの静かな諦念を描ききった、演劇作品としても質の高いものになっています」
お笑いファン「それは認める。竹村の意図がただ笑わせることにないこともあきらかだろうが、しかし前回まではそれでも、笑いのポテンシャルが極めて高いものが含まれていて、いちおうコントの名を冠していて違和感のないものだったが、今回はそういうものもなく、コントというか笑いを期待してきたものにはちょっと肩すかし感があったことは否めない。ちょっと残念だった」
演劇おじさん「尾米トゲルはついこないだ観た『尾米タケル之一座』の人間だし、関口ふでやゴブリン串田も別の公演で何度も観たことのある役者。改めて世界が狭いなあ、と思った」
女優ファン「前回『カレンちゃん』のキレッキレ演技で大ブレイクした一木花漣が今回はおとなしい役ばかりで、ちょっと残念だった。その分、高田唯がぶっ飛んでいたな。あと、越智春奈が美人役で大変印象に残った。ここのユニットは女優さんをうまく使うなあ、というのが印象。うまく使う以前にいい子を集めているが」
ルナティックファン「いい女優といえばあぁルナティックシアターの大村琴絵がここでは毎回いいのだが、彼女も今回はちょっとおとなしめだった。最初の「大村」という“木の役”は良かったけど」
コメディ研究家「コントとコメディの違いは何かというと、コントは“笑わせる”こと自体が目的であり最終到達地点なんですが、コメディはあくまで笑いは“ツール”であって、笑わせることでテーマを浮き彫りにさせ、観客にそれを伝えるという手段なのですよ。そういう意味では、竹村のやっているのはコメディであって、コントでは最初からないですね」
役者ファン「ただ、役者さんたちがみんな、実に楽しそうに演技しているのはわかります。ここの芝居の作り方は竹村曰く“こういうのをやりたい、と提示すると、あとは役者さんたちが勝手に作ってくれる”とのことですが、みんな、そういう状況での芝居作りが楽しくて参加してきているのかもしれません」
演劇ファン「ただ、笑いが少ない、またはゆるいのがいい演劇という公式は成立しない。最初の、植物研究所の話などは、もっと笑いを大きくした方が植物の嫉妬という演劇的テーマを広げられた作品だと思う。竹村の持っている奇妙な雰囲気は非常に現在の小劇場界で貴重だし、優れていると思うが、なら脚本にもう少し練りこみを入れた方が、理解者というかファンがつくと思う。ファンにあまり親切でない、ということがウリの劇団も、そりゃ珍しくはないけれど」
うがち屋「ふつうの、観客サービスを第一義に考える劇団に飽きて、少し意地悪をされてみたい、というようなマニア向けのユニット、と言えるんじゃないかな。実際、少々Mっ気あるファンだったら、たまらないですよここは」