生活水準の国際比較(2024/7/22) | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 昨年5月、「生活水準に関する国際比較」という記事を載せました。

 日本を中心に先進国・主要国に関する比較です。

 もう1年以上経ったので、データを更新しようと思ったのですが、取り上げる指標を一部変更することにしました。

 まずこのブログでは取り上げてこなかった一人当たりの経済水準を載せたいと思います。

 これを見ないと、なぜこのブログで不平等調整済み人間開発指数(IHDI)を重視しているのか、読者に分かりづらいと思うからです。

 

 もう1点は、前回はジェンダー不平等指数(GII)とジェンダー・ギャップ指数(GGI)の両方を取り上げて、両指標の性格について議論したのですが、日本の問題点を見るためには後者が適切であるため前者は掲載しないことにしました。

 この結果、取り上げるのは次の4指標となります。

 a.1人当たり名目GDP(IMF統計)

 b.不平等調整済み人間開発指数(IHDI)

 c.世界平和度指数(Global Peace Index, GPI)

 d.ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index, GGI)

 

 「生活」という意味では、経済水準だけの比較ではなく、健康、教育、安全も含めた比較が重要だというのが私の主張ですが、今回は最初に経済水準の比較を行って、どの程度の違いがあるかを見たいと思います。

 なお、私は主観的な満足度・不満に関するデータを比較するのは意味がないと考えています。

 (極端な例を挙げると、独裁者が国民を「お前たちは幸せだ」と洗脳している国の主観的幸福度を見ても意味がないでしょう。他にも論点がいくつもあります。)

 

 次に、日本を他のどの国と比較するかです。

 世界には200強の国と地域があるわけですが、次の基準で選びました。

 (後ろの括弧内は地域(Am米州、APアジア大洋州、Afアフリカ、E欧州)と人口(単位百万人)。世銀統計2023年)

 1.人口2000万人以上の欧米系の先進国 ― 計8か国

  米(Am335)、独(E84)、英(E68)、仏(E68)、伊(E59)、西(E48)、加(Am40)、豪(AP27)

 うち、G7に属するのは米、独、英、仏、伊、加の6か国です。(漢字一文字で表記)

 2.アジアの先進国・地域    ― 計5か国・地域(すべてAP)

  韓国(52)、台湾(23)、イスラエル(9.8)、香港(7.5)、シンガポール(5.9)

 中東などの産油国も所得水準だけでいえばアジアの先進国ですが、たまたま足元に石油が埋まっていたという理由で豊かになった国を先進国扱いするのは私にとって違和感があったため、比較対象から除いています。

 3.東アジアの近隣諸国    ― 計5か国・地域(すべてAP)

  中国(1411)、韓国(52再掲)、北朝鮮(26)、台湾(23再掲)、香港(7.5再掲)

 4.日本より人口の多い11 か国

  インド(AP1429)、中国(AP1411,再掲)、アメリカ(Am335,再掲)、

  インドネシア(AP278)、パキスタン(AP240)、ナイジェリア(Af224)、ブラジル(Am216)、

  バングラデシュ(AP173)、ロシア(E144)、メキシコ(Am128)、エチオピア(Af127)

 

 日本(AP125)を含め重複を除いて、合計25か国・地域を対象とします。

 前回との主な違いは、人口世界1が中国からインドに変わったことと、エチオピアの人口が日本を抜いたので加えたことです。

 

 この種の比較では欧米系の小国が上位を占めるのですが、大国ほど統治が難しい面があるため、欧米系の先進国については「人口2000万人以上」という基準で切りました。

 

 表に世界平均が載っている場合はそれも含めます。

 

 

  a.1人当たり名目GDP(2023年、全191か国、IMF統計)

 直接の出所はグローバル・ノート。有効数字二桁表示、単位はUS$。

 

 順位 国名 1人当たり名目GDP 

 5 シンガポール  85,000

 6 米       82,000

 11 豪       65,000

 18 加       54,000

 19 独       53,000

 20 イスラエル   52,000

 22 香港      50,000

 23 英       49,000

 25 仏       46,000

 28 伊       38,000

 34 日       34,000

 35 韓国      33,000

 36 西       33,000

 39 台湾      32,000

 68 ロシア     14,000

 69 メキシコ    14,000

 74 中国      13,000

 82 ブラジル    11,000

 117 インドネシア  4,900

 138 バングラデシュ 2,600

 144 インド     2,500

 159 ナイジェリア  1,700

 161 エチオピア   1,500

 162 パキスタン   1,500

 (注)  北朝鮮は掲載なし

 

 ・日本は、G7のなかでは一番下です。

 これは近年の円安でドル表示の値が低下した面があるため、円安以前の2021年の値をみると 27位 40,000 となっています。

 その時も、イタリアよりは上ですが、G7のなかで下から2番目です。

 ・ここ数十年経済成長が著しかった中国ですが、それでも西側諸国から経済制裁を受けているロシアよりもまだ少しだけ下です。

 上の表に出てくる68位ロシア~82位ブラジルまでの国々は中所得国とでもいうべきグループです。

 中国がこのグループから脱出できるかどうかに大きな興味が湧きます。

 (え、それより日本の心配をしろって?)

 

 

 さて、生活の質の大きな部分が経済水準に依存することに異存ないでしょうが、すべてそこに還元できるわけではありません。

 他にも、健康や教育水準(識字率を含む)も大きな役割を果たします。

 いくら金持ちでも早死にしてしまっては意味がありません。

 また、教育水準は国民一人一人が自分の人生を自分で決めるために大変重要です。

 (昨今の日本のように学歴でマウントをとる愚行のためにあるのではありません。)

 これらも大きくみれば経済水準と正の相関がありますが、必ずしも一致しないのです。

 健康は平均寿命で代表させることができます。

 平均寿命を比較すると、主要先進国(もちろん産油国を除く)のなかで米国の平均寿命だけが80歳に達していません。(女性だけとっても同様。その理由は分かりますか?)

 いくら経済が上手くいっていても、こんな国に住みたいとは思えないのは私だけではないと思います。

 また、経済水準を代表するのは1人当たりGDPですが、所得分布が不平等であれば必ずしも国民大多数の生活水準の高さにつながりません。

 したがって、不平等度も考慮に入れる必要があります。

 それらをすべて複合した指標が次の不平等調整済み人間開発指数(IHDI)です。

 

  b.不平等調整済み人間開発指数(IHDI)(2022年、全165か国、国連開発計画UNDP)

 人間開発指数(Human Development Index, HDI)とは、各国を平均余命、教育、識字、所得指数の複合統計により人間開発の4段階に順位付けした指数。

 不平等調整済みHDIとは、HDIに所得格差のような国内の不平等を加味した指数。

 人間開発指数 - Wikipedia

 List of countries by inequality-adjusted Human Development Index - Wikipedia

 

 順位 国名     2022年  2021年  

 9 独       0.881   8 0.883

 12 英       0.865  16 0.850

 13 加       0.864  14 0.860

 14 豪       0.860  11 0.876

 19 日       0.844  16 0.850

 20 韓国      0.841  21 0.838

 21 香港      0.840  23 0.828

 26 シンガポール  0.825  27 0.817

 27 米       0.823  25 0.819

 28 仏       0.820  24 0.825

 31 イスラエル   0.808  29 0.815

 34 伊       0.802  35 0.791

 38 西       0.796  37 0.788

 43 ロシア     0.747  42 0.751

 66 中国      0.662  67 0.651

 71 メキシコ    0.641  72 0.621

  世界平均      0.576    0.590

 89 インドネシア  0.588  87 0.585

 95 ブラジル    0.577  90 0.576

 112 バングラデシュ 0.470  104 0.503

 118 インド     0.444  108 0.475

 134 パキスタン   0.360  129 0.380

 132 ナイジェリア  0.369  138 0.341

 147 エチオピア   0.324

 (注) 台湾、北朝鮮は含まれず。2021年は全156か国

 

 ・日本は上位にあり、G7のなかでは中間程度です。

 前年と比べて、円安の影響でわずかに低下しましたが、1人当たりGDPほどの低下ではありません。

 ・イタリアとスペインは先進国のわりに低いです。

 ・これもロシアの方が中国より上ですが、その差が1人当たりGDPよりも大きいのは、中国の方が不平等度が大きいためです。

 ・インド亜大陸のインド、パキスタン、バングラデシュの3か国はいずれも低いです。

 アフリカのエチオピアとナイジェリアはそれよりさらに下です。

 ただ、インド亜大陸の3か国はいずれも前年と比べてはっきり悪化しています。

 ・世界平均が低下したのは、インド亜大陸3か国の低下と下の方の国々の人口増加によると思います。

 

 

  c.世界平和度指数(Global Peace Index, GPI)(2024年、163か国、経済平和研究所)

 「安全・安心」「国内・国際紛争」「軍事化」の3カテゴリー、23項目にわたって分析し、国・地域における平和の相対的な位置を測定する指数

 GPI-2021-web-1.pdf (visionofhumanity.org)

 

 順位 国名    2024年  2021年  

 5 シンガポール  1.339  11 1.347

 11 加       1.449  10 1.330

 17 日       1.525  12 1.373

 19 豪       1.536  16 1.470

 20 独       1.542  17 1.480

 23 西       1.597  31 1.621

 33 伊       1.692  32 1.652

 34 英       1.703  33 1.658

 43 台湾      1.818  34 1.662

 46 韓国      1.848  57 1.877

 48 インドネシア  1.857  42 1.783

 87 仏       2.088  55 1.868

 89 中国      2.101  100 2.114

 93 バングラデシュ 2.126  91 2.068

 116 インド    2.319  135 2.553

 131 ブラジル   2.589  128 2.430

 132 米      2.622  122 2.337

 138 メキシコ   2.778  140 2.62

 142 パキスタン  2.783  150 2.868

 144 エチオピア  2.845

 147 ナイジェリア 2.907  146 2.712

 152 北朝鮮    3.055  151 2.923

 155 イスラエル  3.115  143 2.669

 156 ロシア    3.134  154 2.993

 

 数字が少ないほど、平和であることを意味します。

 前回使ったデータが古かったのか、2021年から2024年に飛んでいます。

 ・日本の順位は前回より下がりましたが、それでもG7のなかでは上から2番めです。

 今の日本について「軍国主義の復活」とする批判は根拠がないと思います。

 ・ウクライナに侵略戦争を仕掛けているロシア、パレスチナに侵攻しているイスラエルはもともと低い数値がさらに悪化しており、またミサイル実験を頻繁に繰り返す北朝鮮も低い順位となっています。

 ・アメリカの順位が低いのは、日本など同盟国の軍備の肩代わりをしているためという面があります。

 ・フランスの順位が大幅に低下したのは、国内治安の悪化によると思います。

 ・北朝鮮と休戦状態にある韓国は、事前の予想ではもっと順位が低いかと思っていたのですが、先進国と同水準です。

 ・それ以外のパキスタン、ナイジェリアといった国々が低い理由については、前回は国力に比べて軍備を増やし過ぎているためかと思ったのですが、むしろ治安の悪さが影響しているのかもしれません。

 

 

 日本の明らかな欠点である男女間格差、ジェンダーの問題については、前回は2種類の指標を挙げて比較しましたが、今回はジェンダー・ギャップ指数(GGI)のみを取り上げます。

 

  d.ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index, GGI)(2023年、146か国、世界経済フォーラム)

 経済・教育・政治参加などの分野で世界各国の男女間の不均衡を示す指標

 ジェンダー・ギャップ指数 - Wikipedia

 

 順位 国名     2023年  2022年  

 6 独       0.815  10 0.801

 15 英       0.792  22 0.780

 18 西       0.791  17 0.788

 26 豪       0.778  43 0.738

 30 加       0.770  25 0.772

 33 メキシコ    0.765  31 0.764

 40 仏       0.756  15 0.791

 43 米       0.748  27 0.769

 49 シンガポール  0.739  49 0.734

 57 ブラジル    0.726  94 0.696

 59 バングラデシュ 0.722  71 0.714

 75 エチオピア   0.711

 79 伊       0.705  63 0.720

 83 イスラエル   0.701  60 0.727

 87 インドネシア  0.697  92 0.697

 105 韓国      0.680  99 0.689

 107 中国      0.678  102 0.682

 125 日       0.647  116 0.650

 127 インド     0.643  135 0.629

 130 ナイジェリア  0.637  123 0.639

 142 パキスタン   0.575  145 0.564

 (注) 取り上げた国の数は146か国で、前回と同じ。ロシア、台湾、香港、北朝鮮は含まれない。

 

 ・日本はもともとかなり低いのですが、前回と比べてもむしろ少し悪化しています。

 ただ、日本よりバングラデシュやエチオピアが上にあるからといって、それらの国々の女性が日本の女性より恵まれているわけではありません。

 これはあくまでもそれぞれの国において男女間の不均衡の程度を表すものです。

 それでも、女性が虐げられていることで有名なインドとほとんど変わらないというのはなんだかなぁ・・・

 ・日本は別格(^^;)として、他のG7諸国をみると、イタリアが下から2番目となっています。

 

 

 ★ 今日7月22日(月)は二十四節気の一つ大暑(たいしょ)。今日から立秋の前日までは一年中で最も暑い時期とされ、理科年表のデータもそれを裏付けます。一日の最高気温が35℃以上の猛暑日、一日の最低気温(夜明け前)が25℃以上の熱帯夜のダブルパンチが続きます。寝る前に空調を切って寝ると、寝苦しくて夜中に目を覚まし、結局また空調を入れることに。だんだん体が参ってきます。皆さん、頑張ってこの夏を乗り切りましょう。