シミュレーションの示す中間質量ブラックホールの形成 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・最先端シミュレーションが示した中間質量ブラックホールの形成過程

 アストロアーツ6月7日付記事、元は国立天文台天文シミュレーションプロジェクトです。

 最先端シミュレーションが示した中間質量ブラックホールの形成過程 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>100万個を超える星の運動を再現した世界初の球状星団形成シミュレーションにより、星団中で超大質量星が形成され、その星が中間質量ブラックホールへ進化し得ることが示された。

 

 >現在観測されているブラックホールのほとんどは、太陽質量の100倍以下の小さなもの(恒星質量ブラックホール)か10万倍以上の巨大なもの(大質量ブラックホール)のいずれかであり、その中間に当たる、質量が太陽の数百倍から数万倍の「中間質量ブラックホール」はごく少ない。とくに太陽の数千倍ほどの質量を持つ中間質量ブラックホールは観測的な証拠が乏しく、宇宙のどこでどのように形成されるのかは多くの謎に包まれている。

 

 ブラックホールの最大の特徴は質量なので、通常、質量で3段階に分類します。

 中間質量ブラックホールは、文字通り中間です。

 ただ範囲については「質量が太陽の数百倍から数万倍」とありますが、私は質量の上限は数十万倍と思ってきたのですが、そのあたりはもう巨大ブラックホールに含めてしまうのですかね?

 

 ブラックホールといっても、恒星質量ブラックホールと巨大ブラックホールの実在は確実であり、それらの話題は天文ニュースを見ていて事欠きません。

 それに対して、中間質量ブラックホールについては発見したという報道が少なくて、本当に確認できたものがどの程度存在するのか疑問でした。

 

 なお、中間質量ブラックホールの研究は巨大ブラックホールの前段階を明らかにするという意義もあり、この点は本記事の最後に出てきます。

 いきなりバカでかいものが生まれるというのは不自然なので、それより小さいものが多数合体してできたというのがありそうだからです。

 

 >そのような中間質量ブラックホールが存在する可能性があると注目されているのが、数十万個から数百万個の星がボール状に分布した天体である球状星団で、星団の中心に中間質量ブラックホールが存在することを示唆する観測結果も報告されている。

 

 球状星団の特に中心部は星が密集しているので、多数の星が合体して中間質量ブラックホールが誕生してもおかしくはないように思えます。

 昔からそういう話題はありました。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 中間質量ブラックホールの存在が観測から示唆されている球状星団の一つ、ケンタウルス座のω星団です。

 丸くて密集してますね。

 

 >球状星団の中でブラックホールが形成されるためには、星同士が次々と合体・衝突して非常に重い星が形成される「暴走的合体」が起こる必要がある。この過程を調べるため、東京大学大学院理学系研究科の藤井通子さんたちの研究チームはプログラムを開発し、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」を用いたシミュレーションを実施した。本研究では世界で初めて1つ1つの星の運動を再現した球状星団の形成シミュレーションが行われ、星間ガス中における100万個を超える星の運動が正確に、現実的な計算時間で再現されている。

 

 暴走的合体ですか。名前だけ聞いても凄そうです(^^

 「100万個を超える星の運動が正確に、現実的な計算時間で再現されている」というのは、もの凄い計算量ですね。

 

 >シミュレーションの結果、星の母体である分子雲から星が生まれて形成が進む星団の中で、星同士が次々と合体する暴走的合体が起こり、最終的に太陽の1万倍程度の質量を持つ超大質量星が形成され得ることが示された。このような超大質量星は、最終的に太陽の3000~4000倍の質量を持つ中間質量ブラックホールになることが理論的に予想されている。

 

 星どうしの暴走的合体でまず「太陽の1万倍程度の質量を持つ超大質量星が形成され」、それが「太陽の3000~4000倍の質量を持つ中間質量ブラックホールになる」というのですね。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上から2番目の画像をご覧ください。

 星団内で最も重い星の、質量の時間変化を表すグラフです。

 左は、星の合体による質量増加のシミュレーション結果です。

 右は、恒星進化の理論に基づく超大質量星の質量の時間変化です。

 60万年ほどで太陽質量の1万倍の超大質量星が誕生し、この星が220万年後に太陽質量の4000倍ほどの中間質量ブラックホールになることを示しています。

 というのですが、これまで太陽質量の100倍以上の星の観測例はまれであり、500倍以上だと皆無だと思うので、純粋に理論的な推測です。

 

 >また、今回のシミュレーションで得られた星団の質量とその中で形成されるブラックホール質量の関係は、観測から推定されている球状星団の質量とブラックホールの質量の関係とも一致している。球状星団中に中間質量ブラックホールが存在することを理論的に強く示唆する結果だ。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上から3番目の画像をご覧ください。

 球状星団の質量とブラックホールの質量の関係を示す両対数グラフです。

 星印はシミュレーションの結果です。

 色の差は、星の元となった星間ガスの重元素量の違い(赤が太陽の2%、青が同10%)に対応します。

 破線は、中間質量ブラックホールの質量が球状星団の質量の3%に当たるラインです。

 縦線は、観測から中間質量ブラックホールの存在が示唆されている球状星団です。

 薄い赤と青の領域は、星の進化の理論計算とシミュレーションの結果から予測される、各重元素量の場合の球状星団の質量とブラックホールの質量の関係を示します。

 

 >太陽質量の数千倍の中間質量ブラックホールが球状星団の中で形成され得ることを示した本研究の成果は、未解明である大質量ブラックホールの形成過程を理解するうえでも大きな意義があるものとなるだろう。

 

 最後に、アストロアーツ掲載の一番下の画像をご覧ください。

 シミュレーションで再現された形成中の球状星団を可視化したものです。

 青白い点が星団の星々を表し、その周りの「もや」は星間ガスを表します。

 ガスの色の暗い部分は温度の低い星間ガス(分子雲)、明るい部分は温度の高い星間ガスに対応します。

 

 今回のシミュレーションで、球状星団内部では中間質量ブラックホールが形成され得ることが示されました。

 重要性に鑑み、テーマ「科学ニュース」ではなく「ブラックホール・重力波」に入れておきます。

 

 

 ★ 一昨日と昨日、7月6・7日(土日)、藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦するお~いお茶杯第64期王位戦七番勝負第1局が愛知県名古屋市「徳川園」で行われ、1局目は藤井王位の先手で居飛車力戦となりましたが、2日目の夕方に千日手指し直しとなりました。先後が入れ替わって、持時間が王位1時間、挑戦者2時間20分と大差のなか、渡辺挑戦者の誘導で相掛かりとなり、挑戦者が有利から優勢となっていきました。しかし、難解な最終盤で王位の玉に詰みが生じたものの、挑戦者が詰みを逃して、王位の逆転勝利となりました。「七夕の奇跡」という声もあるほどの名局でした。研究を2局分投入して作戦勝ちになりながら最後に詰みを逃した渡辺挑戦者のダメージは大きいのでは、という声もあります。第2局は、7月17・18日(水木)に北海道函館市「湯元 啄木邸」で行われます。