湾岸産油国6か国 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 世界の国々シリーズの第2弾です。

 今回は、湾岸産油国6か国を取り上げます。

 湾岸とは、中東にあるペルシア湾沿岸の意味です。

 今回取り上げる湾岸産油国6か国は、ペルシア湾最奥のクウェートからペルシア湾南岸に沿ってサウジアラビア、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦、オマーンの6か国です。

 これら以外にイランとイラクもペルシア湾岸にある産油国ですが、どちらも地域大国で以前から日本人にもよく知られているので今回は含めないことにします。

 

 まず、6か国の英語名は次の通りです。

 クウェート Kuwait、サウジアラビア Saudi Arabia、バーレーン Bahrain、カタール Qatar、アラブ首長国連邦 United Arab Emirates; UAE、オマーン Oman

 

   湾岸産油国6か国の主要項目

  国名      首都    面積    人口 一人当たりGDP  独立月日   

 クウェート   クウェート 1.8万km2   430万人 33,000ドル 1961年6月(英)

 サウジアラビア リヤド   210万km2 3,700万人 33,000ドル 1932年9月(統一)

 バーレーン   マナーマ  760 km2    150万人 28,000ドル 1971年8月(英)

 カタール    ドーハ   1.1 万km2  270万人 79,000ドル 1971年9月(英)

 アラブ首長国連邦 アブダビ 8.4万 km2  950万人 52,000ドル 1971年12月(英)

 オマーン    マスカット 31万km2    460万人 22,000ドル 1971年10月(英)

 

 まず場所の説明から。

 これら6か国は、西アジア・中東のアラビア半島に位置します。

 アラビア半島と対岸のイランとは、ペルシア湾により隔てられています。

 アラビア半島の大部分は、サウジアラビアが占めています。

 他の5か国はアラビア半島の北側にあり、ペルシア湾(あるいはオマーン湾)に面しています。

 

 クウェートは、北と西がイラク、南がサウジアラビアに接し、東はペルシア湾に面しています。

 

 バーレーンは、ペルシア湾のサウジアラビア側に浮かぶ小さな島国です。

 面積は、シンガポール(720 km2)や香港(1,100 km2)と同程度です。

 しかし、人口はシンガポール(590万人)や香港(750万人)と比べてかなり少ないです。

 

 カタールは、アラビア半島北東部からペルシア湾に突き出したカタール半島を領土としており、サウジアラビアに接しています。

 首都ドーハは、日本では1993年10月に行われた日本対イラクのサッカーの国際試合通称「ドーハの悲劇」で有名ですね(^_^

 

 アラブ首長国連邦は、アラビア半島のペルシア湾南岸およびオマーン湾西岸にあります。

 西と南はサウジアラビア、東はオマーンと接しています。

 

 オマーンはアラビア半島東端にあり、アラビア海(インド洋)とオマーン湾に面しています。

 面積は、日本よりやや狭い程度です。

 北西でアラブ首長国連邦、西でサウジアラビア、南西でイエメンと接しています。

 また、アラブ首長国連邦の北端、ホルムズ海峡に面した位置に飛び地を有しています。

 

 以上の6か国は、その面積では小さな島国のバーレーンからアラビア半島の大半を占めるサウジアラビアまで何桁もの極端な差があります。

 しかしにもかかわらず、いくつもの共通点があります。

 

 a.これらの国々は、いずれも砂漠の国です。

 大きな河川などの水資源にも恵まれていないので、一般的な農業には不適です。

 ただ、一部地域では特定の作物について優位性があります。

 ナツメヤシは数千年前から栽培されており、最近は「デーツ」という名称で乾燥したナツメヤシの実が日本にも輸入されています。

 

 b.一部の地域は、現在のイラクの地に栄えたメソポタミア文明との関係で、紀元前4千年からの古い歴史を誇ります。

 

 c.いずれの国もアラブ人が中心であり、公用語はアラビア語、宗教はイスラム教が主流です。

 ただ、イスラム教といってもスンナ派、シーア派、両者以外とさまざまであり、またスンナ派のなかも分かれています。

 

 d.いずれの国も、王国あるいは首長国です。

 サウジアラビアとは「サウジ家のアラビア」という意味です。

 また、アラブ首長国連邦は、その名の通り7つの首長国からなる連邦制国家です。

 ただし、実質的に絶対君主制に近いか民主的な立憲君主制に近いかは、国によってかなり差があります。

 

 e.サウジアラビア以外の5か国は、イギリスの植民地となった後に独立しています。

 このため、アラビア語以外に英語も実質的に共通語となっています。

 

 f.いずれの国も産油国であり、主要産業は原油と液化天然ガス(LNG)の生産です。

 それによって経済成長を果たし、国によって程度の違いはあるものの、カタールのように日本より豊かな国もあります。

 一人当たりGDPはすべて2万ドルを超えており、前回ご紹介した中央アジア5か国が2万ドル未満だったのと比較すると、同じイスラム教の国ではあっても大きな経済格差があります。

 また、アラビア半島の南端に位置するイエメンが内戦などにより最貧国かつ失敗国家とされているのを見ると、原油が埋まっていたかどうかだけでその違いが生じたのでは?とも思います。

 (自分たちが一生懸命働いて豊かになったのではなく、たまたま足元に石油が埋まっていたために豊かになれた国を先進国扱いすることには、私は強い抵抗があります。ただ、日本の原油輸入はこの地域を中心としており、それがなければ戦後日本の経済成長もなかったのも事実です。この地域との友好は日本にとって重要です。)

 資源枯渇の恐れもあることから、産業の多角化を目指している国もあります。

 

 g.fに関連して、国により割合は異なるものの、外国人労働者が多数存在する点が指摘できます。

 Wikiによると、各国の人口統計は次のようになっています。

 (調査年の古いものもあるので、参考程度に見ていただきたい)

          自国籍 外国籍 

 クウェート    40%  60%

 サウジアラビア  69%  31%

 バーレーン    46%  54%

 カタール     13%  87%

 アラブ首長国連邦 13%  87%

 オマーン     70.6% 29.4%

 

 豊かな国が豊富な労働力を必要とし、貧しい国からの出稼ぎ労働者が集まるというのは、シンガポールなどとも共通した事情です。

 そのおかげで国民は豊かな生活を送れるのです。

 ただ、外国人の存在と宗教上の対立が結びつくと、政治問題に発展する場合もあります。

 

 

 ここから個別の国に触れていきます。

 

 クウェートが一躍有名になったのは、1990年です。

 1990年にイラクがクウェートに侵攻し、一時イラクに併合されました。

 しかし、翌1991年の湾岸戦争でクウェートはイラクによる占領から解放されました。

 

 サウジアラビアは、イスラム教発祥の地であり、聖地メッカを擁し、全世界から巡礼を受け入れています。

 イスラム教スンナ派のうち特に厳格なワッハーブ派を国教としてきましたが、近年はスンナ派の他の宗派にも広げられてきています。

 半世紀前は写真の所持が偶像崇拝だとして写真の頭の部分をはさみでちょん切られたという話も聞きましたが(真偽は不明)、近年はポケモンやアニメなどの日本文化も受け入れられています。

 トルコやイランと並ぶ地域大国とされます。

 

 バーレーンでは、王家をはじめとする支配層はイスラム教スンナ派です。

 しかし、歴史的に対岸のイランとの関係が深かったこともあり、国民の大多数(75%)をシーア派が占めています。

 このため、1994年以後シーア派による反政府運動が激化し、2001年の国民投票により絶対王政の首長制から立憲君主の王制へ移行しました。

 

 カタールには、1996年に設立された衛星テレビ局のアルジャジーラがあります。

 アルジャジーラは中東のCNNと呼ばれ、アラブ系メディアとして英語とアラビア語でニュースを24時間放送しています。

 公正で検閲を拒否し政治的圧力を受けないとする評価の一方で、カタールの内政には言及しない、バーレーンのシーア派反体制派に批判的などの指摘もあります。

 

 オマーンは、17世紀半ばから19世紀末まで、インド洋全域を商圏とし、特に東アフリカ海岸部を勢力下に置きました。

 これをオマーン海洋帝国といいます。

 特に、1832年には東アフリカ沿岸の奴隷・象牙・香辛料貿易の拠点でもあったザンジバル(南半球)に遷都しています。

 しかし、1856年には国王の死去に伴い国土がオマーンとザンジバルに分割され、さらに帆船から蒸気船の時代に移ると急速に衰退し、1891年にはイギリスの保護国となっています。

 

 

 ★ アメリカの大統領選では、トランプ前大統領(78歳)とのテレビ討論会でバイデン大統領(81歳)が精彩を欠いたことから、民主党支持のニューヨーク・タイムズ紙が社説でバイデン氏に出馬辞退を促す事態となっています。アラエイトどうしの戦いはアメリカのためにも世界のためにもならないと思うのですが、彼らを追い落とす、より若い政治家がいないのは不幸なことです。