連結空間とホモトピーなど1 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
-------------------------------------------
3.ホモトピー
単位閉区間 [0, 1] を I で表すことにします。
I =:[0, 1].
ホモトピーの定義: 2つの位相空間 X, Y を考える。 XからYへの2つの連続写像 f, g:X→Y について、f からgへのホモトピー(homotopy)とは、h(x, 0)= f (x) かつ h(x, 1)=g(x) を満たす連続写像 h:X×I →Y のことである。 ここで、X×I には積位相を入れる。(本ブログではまだ積位相の紹介をしていませんが、そのうち必ずやりますので、ご容赦を)
2つの連続写像 f, g:X→Y がホモトピック(homotopic)であるとは、それらの間にホモトピーがあることで、f ~g で表す。
ホモトピーは、位相空間XからYへの射(連続写像)全体の集合つまりhom集合 Top(X, Y) に同値関係を定義するので、その同値類をホモトピー類(homotopy class)といいます。
連続写像 f のホモトピー類を [ f ] で表し、XからYへの連続写像のホモトピー類全体を [X, Y] で表します。
ホモトピックな連続写像の合成もホモトピックであり、それにより連続写像のホモトピー類の合成が定義できます。
位相空間を対象とし、連続写像のホモトピー類を射とする圏を、位相空間のホモトピー圏といい、hTop で表します。
hTop (X, Y) =:[X, Y]
2つの位相空間XとYがホモトピックであるとは、hTop で同型であること、つまり連続写像 f:X→Y と同 g:Y→X が存在して g f ~ 1X かつ f g ~ 1Y を満たすことである。
このとき、X~Y で表す。
ホモトピー同値で不変な性質を、ホモトピー不変(homotopi invariant)といいます。
位相空間の圏 Top からホモトピー圏 hTop への自然な関手
Top→hTop;X|→X,f |→ [ f ]
が考えられます。
圏 Top からの関手で、関手 Top→hTop を経由するものをホモトピー関手(homotopy functor)といいます。
例:n次元ユークリッド空間 Rn は1点空間とホモトピックである。
Rn ~ {*}.
証明: f:{*}→Rn;*→0,g:Rn→{*};∀x, x|→* とする。このとき、g f =1{*} で、 h(x, t)= t x で定義されるホモトピー h:Rn×I →Rn により、f g:Rn→{0} は idRn とホモトピックである。//
可縮の定義:1点とホモトピックな空間を、可縮(contractible)という。
n次元ユークリッド空間 Rn は可縮空間の典型例です。
また、n次元閉円板 Dn={(x1, x2, …, xn) | x12+x22+…+xn2≦1} も可縮空間です。
4.弧状連結と弧状連結成分
・道の定義 : 単位閉区間 I から位相空間 Xの部分集合Aへの連続写像fが存在するとき、f による I の像 f(I ) をA内の道(path)といい、f(0) をその道の始点、f(1) を終点という。
また、道 f(I ) は始点と終点を結ぶという。
・弧状連結の定義 : 位相空間Xの部分集合Aについて、Aの任意の2つの点pとqに対し、pとqを結ぶA内の道が存在するとき、Aは弧状連結(path-connected)あるいは道連結であるという。
「どの2点も線(道)で結べる」ということです。
定理4-1 : 位相空間において、弧状連結な集合は連結である。
証明:「初歩4」定理7-6参照
定理4-2 : 弧状連結集合の連続写像による像は、弧状連結である。
証明:「初歩4」定理7-7参照
定理4-3 : n次元ユークリッド空間 Rn (n≧2) と、Rn から1点aを除いた集合 Rn ∖{a} はいずれも弧状連結であり、したがって連結である。
証明:「初歩4」定理7-8参照
ここで少し寄り道です。
(弧状)連結という性質は、位相空間どうしが同相でないことを示すのに便利であり、その例示を挙げます。
定理4-4:実数直線Rと2次元以上のユークリッド空間 Rn (n≧2) は同相ではない。
また、それぞれから1点を取り除いた R∖{a} と Rn∖{b} (n≧2) も同相ではない。
証明:R∖{a} は不連結だが、Rn∖{b} (n≧2)は弧状連結なので、両者は同相ではない。
Rと Rn (n≧2) は、それぞれから任意の1点を取り除いた空間が同相ではないので、元の空間も同相ではない。//
定理4-5 : 閉区間 I =[0, 1] と 円周(1次元球面) S1={(x, y) | x2+y2=1)} は同相ではない。
証明:I から 0<a<1 である1点aを取り除くと不連結になるが、S1 からどの1点を取り除いても弧状連結のままである。//
定理4-6 : 実数直線Rと半閉直線 [0, ∞[ は同相ではない。 しかし、Rと半開直線 ]0, ∞[ は同相である。
証明:前者;Rのいかなる1点を取り除いても不連結となるが、[0, ∞[ から 点 0 を取り除いても弧状連結のままである。
後者;指数関数と対数関数がどちらも連続全単射でかつ互いの逆であることから分かる。//
定理4-7 : 円周 S1 と2次元以上の球面 Sn (n≧2) は同相ではない。
証明: S1 は相異なる2点を取り除くと不連結となる。Sn (n≧2) は相異なる2点を取り除いても弧状連結のままである。したがって、両者は同相ではない。//
同相であることを証明するには具体的な同相写像を示す必要があるので、同相でないことを証明する方がずっと簡単です。
「弧状連結⇒連結」ですが、逆は必ずしも成り立ちません。
定義:次の式で定義される R2 の部分空間Aをトポロジストの正弦曲線(topologist’s sine curve)という。
A = B∪C = Cl (C), ( Cl は閉包)
B = { (x, y) | x=0,-1≦y≦1},
C = { (x, y) | 0<x,y=sin(1/x)}.
Bは原点を中心に上下に延びる長さ2の線分。
Cは、xが正の範囲で定義され、x=2/π≒0.637 で 1 をとり、それより右側では正の値をとりながら緩やかに減少してx軸に漸近し、x=2/π より左側では 1 と-1 の間を振動し、x=0 に近づくにつれて振動がどんどん激しくなる曲線。
・トポロジストの正弦曲線は連結だが、弧状連結ではない。
BとCはいずれも弧状連結だが、Aは弧状連結ではない。
連結空間に関する定理のうち、「連結」を「弧状連結」に置き換えてもそのまま成り立つものがいくつかあります。
定理4-7 : 弧状連結空間の族 Xα (α∈A) について、共通部分が空でない ∩α∈A Xα ≠∅ ならば、合併 X=∪α∈A Xα も弧状連結である。
定理4-8 : 整数係数の弧状連結空間の族 Xi (i∈Z) について、すべてのiで Xi ∩ Xi+1 ≠∅ ならば、合併 X= ∪i∈Z Xi も弧状連結である。
本節の最後に、位相空間Xにその弧状連結成分からなる商集合 π0X を対応させることを考えます。
位相空間XからYへの連続写像 f :X→Y により、Xの弧状連結成分 A∈π0X はYの弧状連結成分 B∈π0Y に移されます。
f A = B ∈ π0Y
したがって、商集合 π0X に商集合 π0Y を対応させることができます。
これにより、π0 は位相空間の圏 Top から集合圏 Set への関手となります。
π0
Top → Set
X |→ π0X
f↓ |→ ↓π0 f
Y |→ π0Y
え、π0 が登場するなら π1, π2, ・・・もあるのかって?
あるのです。もう少々お待ちください。
5.局所連結と局所弧状連結
連結から派生する概念として「局所連結」、また弧状連結から派生する概念として「局所弧状連結」があります。
局所連結の定義:位相空間Xが局所連結(locally connected)であるとは、任意の x∈X とxの任意の近傍 U⊂X に対し、xの連結な近傍Vが存在して V⊂U をみたすことである。
・密着空間は局所連結である。
・Rn は局所連結である。
局所弧状連結の定義:位相空間Xが局所弧状連結(locally path-connected)あるいは局所道連結であるとは、任意の x∈X とxの任意の近傍 U⊂X に対し、xの弧状連結な近傍Vが存在して V⊂U をみたすことである。
定理5-1 :局所弧状連結な集合は局所連結である。
弧状連結成分の定義:位相空間Xに対し、「xとyの両方を含む弧状連結集合が存在する」という同値関係~に関する同値類を Xの弧状連結成分(connected component)という。
定理5-2 :位相空間が局所弧状連結ならば、弧状連結成分と連結成分は一致する。
圏論本に載っているのですが、証明略とされています・・・
・トポロジストの正弦曲線は連結だが、局所連結ではない。
∵ 点 (0, 0) の十分小さい近傍は、どう選んでも連結ではない。
・Rの部分空間 [0, 1] ∪ [2, 3] は連結ではないが、局所連結である。
定義:次の式で定義される R2 の部分空間Xを櫛空間(comb space, くしくうかん)という。
A = {1/n | n∈N}×[0, 1], B = {0}×[0, 1], C = ]0, 1]×{0}.
X = A ∪ B ∪ C = Cl (A ∪ C).
[0, 1] から上に向けて長さ 1 の線分がパラパラと生えており、左側 0 に近づくにつれて植生密度がどんどん濃くなります。これを櫛と呼ぶのは言い得て妙です。
・櫛空間は弧状連結だが、局所弧状連結ではない。
∵ t >0 に対して、点 (0, t ) の十分小さい近傍はどう選んでも連結ではない。
・Rの部分空間 [0, 1] ∪ [2, 3] は局所弧状連結だが、弧状連結ではない。
---------------------------- 続 く -------------------------
★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス124
.ni'o «lu .e'e no da do prali lo nu tai klaku sei la .alis. cu kinli sezysku
[新段落] 「こら、そんなふうに泣いてちゃだめだぞ!」とアリスは、厳しく自分に言いきかせました
.e'e : 奨励。励ます/挑発する気持。心態詞(命題態度)UI1類
prali : 利益だ,x1は x2にとっての x3(行動/過程)によって得られた;x2はx3によって利する;x1はx2にとっての利点/アドバンテージだ。-pal-
tai : ~に似た形をした。法制詞BAI類 <- tamsmi 似ている
kinli : 鋭い,x1は x2(箇所)において。-kil-
sezysku : ひとり言をいう,s1=c1は c2という <- sez+sku, sez<-sevzi 自己/自我, sku<- cusku 言う
引用符内の前半の主述語は prali で、そのx1が { no da } 、x2が do 、x3が { lo nu tai klaku } です。
直訳だと「そのように泣いていてもあなたにとって良いことは何もないよ」となります。
出典は、