星の構造1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12567291156.html
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しばらく間が開いてしまいましたが、数式編です。
いきなり読んでも分かりづらいので、前回分を読んでから、あるいは横に並べてお読みください。(スマホでご覧いただいている方には申し訳ありませんが、このブログはパソコン画面で見ることを前提に書いています。)
2 恒星構造の基本方程式
恒星構造を記述する基本となる微分方程式は、4種類あります。
それらを次のように呼びます。
(1) 質量保存の式
(2) 運動量保存の式
(3) エネルギー保存の式
(4) エネルギー輸送の式
最後の(4)だけ、a 放射輸送 と b 対流輸送 の2種類あります。
順に説明します。
(1) 質量保存の式
まず、新しい変数を導入します。
Mr = Mr(r) : 半径 r 以内の質量
Mr は、 r の増加関数です。
Mr( 0 ) = 0, Mr(R) = M, dMr/dr > 0
半径 r と半径 r+dr の間の球殻の質量を dMr とすると、 半径 r+dr 以内の質量は、
Mr+dMr となります。
dMr = Mr(r+dr) -Mr(r)
さて、半径 r の球面の面積は 4πr2、半径 r+dr の球面までの高さは dr なので、 その間の球殻の体積は 4πr2×dr = 4πr2dr となります。
その球殻に含まれる質量は体積×密度なので、4πr2ρdr となります。
したがって、
dMr = 4πr2ρdr
∴ dMr = 4πr2ρ
dr
(2) 運動量保存の式
半径 r と半径 r+dr の間の球殻の微小片をとり、その面積を dA とします。
微小片の体積は dr dA,その質量は ρdr dA となります。
微小片の質量に対する重力を考えます。
まず、球殻より外側の質量の重力は相殺するため、無視できます。
球殻より内側の質量は Mr ですが、微小片に対するその重力を考えるとき、Mr が中央の1点に集中していると考えて差し支えありません。
すると、微小片に働く重力は、万有引力の法則により GMrρdr dA/r2 となります。
次に、半径 r での圧力をP、r+dr での圧力を P+dP とすると、
圧力により微小片に下から上方に向けて働く力は P dA、
上から下方に向けて働く力は (P+dP) dA、
圧力による力は、差し引き上から下方に向けて dP dA
となります。
重力と圧力による力とがつり合うためには、
-dP dA = GMrρdr dA/r2
∴ dP = -GMrρ
dr r2
2つの力の向きが逆なので、負号が付く点にご注意ください。
(3) エネルギー保存の式
半径 r と半径 r+dr の間の球殻を考えます。
球殻において、燃焼により単位質量・単位時間当たり発生するエネルギーを ε とします。
球殻の質量は、(1)で求めたように、4πr2ρdr なので、 球殻において単位時間当たりに発生するエネルギーは 4πr2ρεdr となります。
次に、半径rの球面を通って下から球殻に流れ込む単位時間当たりのエネルギーを Lr とし、 半径 r+dr の球面を通って球殻から上に流れ出る単位時間当たりのエネルギーを Lr+dLr とします。
すると、流出入による球殻のエネルギーの減少(純流出)は、
Lr+dLr -Lr = dLr
となります。
時間が経過しても球殻内のエネルギーが変化しないためには、単位時間当たりのエネルギーの発生と純流出が等しくなればよいので、
dLr = 4πr2ρεdr
∴ dLr = 4πr2ρε
dr
(4) エネルギー輸送の式
エネルギー輸送の式には、放射に関するものと対流に関するものの2種類あります。
a.エネルギー輸送の式(放射輸送)
この式の導出は難しいので、結果だけ記しておきます。
dT = - 3 χρ Lr
dr 4aB c T3 4πr2
記号の意味は次の通りです。
χ : 不透明度(opacity)
aB : 黒体放射定数
b.エネルギー輸送の式(対流輸送)
ある気体の塊について、対流による移動前後の密度と圧力を考えます。
気体の塊が最初、周囲と同じ密度ρ、圧力Pをもっていて、移動後の位置で外部大気は密度 ρ'、圧力 P' となっているものとします。
気体の塊の移動後の位置での密度を ρ* とします。
ρ* = ρ(P')1/γ
(P)
ただし、γは比熱比。 移動後の外部大気の密度P‘は、
P' = P +dPΔr
dr
この値を前の式に代入して展開し、Δr の一次の項をとると、
ρ* = ρ(1+dP Δr)1/γ
( dr P )
≒ ρ( 1 + 1 dP Δr)
( γ dr P )
= ρ + ρ・dP Δr ・・・ (1)
γP dr
一方、移動後の外部大気の密度ρ'は、
ρ' = ρ +dρ Δr ・・・ (2)
dr
状態方程式 ρ=P/RT を r で微分して、
dρ = 1 dP - P dT
dr RT dr RT2 dr
= ρ dP -ρ dT
P dr T dr
この式を(2)式に代入して、
ρ' = ρ +ρ dP Δr -ρ dT Δr
P dr T dr
(1) 式とこの式の差をとると、
ρ*-ρ' = 〔-(1-1 )ρ dP +ρ dT〕 Δr
〔 γ P dr T dr〕
塊の移動後の密度 ρ* が周囲の密度 ρ' より大きければ、つまり上の式の左辺が負であれば、大気は安定です。
右辺の〔 〕内が負となる条件を求めます。
圧力勾配 dP/dr も温度勾配 dT/dr も負なので、大気は、両者の絶対値が関係
|dT| < (1-1 ) T |dP|
|dr| γ P |dr|
をみたすとき、安定です。
「温度勾配の大きさが、圧力勾配の大きさから決まるある値より小さければ、大気は安定」ということです。
この式がみたされないときは、直ちに対流が生じて、すぐに両辺は等しくなります。
次の式を「シュヴァルツシルトの安定性条件」といいます。
dT = (1 -1 ) T dP
dr γ P dr
最後に、変数記号と以上で得られた方程式をまとめておきます。
r : 半径
ρ=ρ(r) : 密度(dρ/dr < 0 )
P=P(r) : 圧力(dP/dr < 0 )
T=T(r) : 温度(dT/dr < 0 )
Mr=Mr(r) : 半径 r 以内の質量(dMr/dr > 0 )
(1) 質量保存の式
dMr = 4πr2ρ
dr
(2) 運動量保存の式
dP = -GMrρ
dr r2
(3) エネルギー保存の式
dLr = 4πr2ρε
dr
Lr : 半径rの球面を通って下から上に流れる単位時間当たりのエネルギー
(4) エネルギー輸送の式
a 放射輸送
dT = - 3 χρ Lr
dr 4aB c T3 4πr2
χ : 不透明度(opacity)
aB : 黒体放射定数
b 対流輸送(シュヴァルツシルトの安定性条件)
dT = (1 -1 ) T dP
dr γ P dr
γ : 比熱比
以上で求めた恒星の構造を決める基本方程式を連立させて真面目に解くのは大変ですが、比例関係を使って恒星の諸量間の簡単な関係を導くことができます。
その方法については、次の記事をご覧ください。