毎日新聞2018年10月22日(月)
俳壇
鷹羽狩行 選
流星や息はづませて子が帰り (和歌山市) 鈴木 憲一
・明るい流星を見たので、それをご両親に教えたくて走って帰ってきたお子さん。
歌壇
篠弘 選
惑星の天体ショーと仰ぐ空をよぎるジェット機の灯の親しかる
(御所市) 内田 正俊
・この夏は金星、火星、木星、土星と華やかな夜空でした。でも、ジェット機の方が日常的で親しみが湧くのでしょうか。
新刊
山田牧句集『星屑珈琲店』(フランス堂)
第1句集。書名通り、珈琲店を営む著者ならではの、市井における臨場感溢れる作品が並ぶ。
どの星を連れて帰らう釣忍
読売新聞2018年10月22日(月)
俳壇
小澤實 選
無伴奏チェロのカザルス銀河澄む (門真市) 田中 たかし
・選者評:パブロ・カザルスのバッハ無伴奏チェロ組曲を聴きつつ、夜空に澄みわたる銀河を眺めている。カザルスの荒々しくも新鮮な演奏には、宇宙を感じさせるものがある。
朝日新聞2018年10月21日(日)
歌壇
佐佐木幸綱 選
白々と月光静まる峡の村刈田の上を鹿の声渡る
(安芸高田市) 菊山 正史
・選者評:「……声聞くときぞ秋はかなしき」。鹿の声をうたう百人一首の歌を思い出す。
佐佐木幸綱・高野公彦 選
愛らしく程よくじゃれてしっぽ振り適度に吠えるロボットの犬
(東京都) 森田 文康
・子ども向けも老人向けもあるでしょうし、今や家電製品もしゃべる時代です。
俳壇
高山れおな 選
秋の星同じ名を持つ人のあり (さいたま市) 久保田 恵子
・失礼ながら作者のお名前であれば、さもあらんと。秋の星はフォーマルハウトか。
評判の理系の姉妹実むらさき (本巣市) 清水 宏晏
・理系であることが分かるのであれば、姉妹とも大学生か大学を卒業して就職されているのでしょう。
切能の笛の高鳴る十三夜 (大阪市) 森田 幸夫
・切能(きりのう)とは、能で鬼・天狗・天神・雷神・竜神などがシテになる曲とのこと。笛の音が異世界を招き寄せるかのようです。
稲畑汀子 選
二次会に行かずに帰る良夜かな (玉野市) 加門 美昭
・選者評:友人たちとの会合を終え、二次会への誘いがかかる。今宵(こよい)中秋の名月と気付き、家路についた作者。
くにうみの神話の島の流れ星 (東京都) 大久保 白村
・旅行に行かれた先で流星をご覧になったのでしょうが、国生みの神話の島とは淡路島のことでしょうか。
名月や絵本閉ぢれば子の寝息 (小城市) 福地 子道
・絵本を読み聞かせてようやく寝付いてくれた幼子を、十五夜の満月が見守ります。小城市(おぎし)は佐賀県の中央部に位置し、平成の大合併で誕生しました。
大串章 選
動物園無数の目光る良夜かな (横浜市) 飯島 幹也
・動物たちの目を光らせているのも、名月の光でしょうか。