初期宇宙の巨大原始超銀河団 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

・初期宇宙の巨大な原始超銀河団「ハイペリオン」
アストロアーツ10月24日付記事、元は欧州南天天文台です。
http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10247_hyperion

概要>誕生から約20億年後の宇宙に、太陽の1000兆倍以上もの質量をもつ原始超銀河団が発見された。「ハイペリオン」と名付けられたこの超銀河団は、初期宇宙の構造としては、これまでに知られている中で最大のものだ。

>ビッグバンから23億年後、現在から約115億年前という初期宇宙に、巨大な原始超銀河団が発見された。ギリシャ神話の巨神の名にあやかり「ハイペリオン」と名付けられたこの超銀河団は、ろくぶんぎ座方向の「COSMOSフィールド」の一角に位置している。

ろくぶんぎ座は春の星座で、しし座の南に接していますが、一番明るい星が4等星なので目立ちません。
へべリウスが設定した、「新しい」星座の一つです。

Hyperionをハイペリオンというのは英語読みで、日本ではヒュペリオンと表記されることが多いようです。
古代ギリシャ語では、’Υπεριων(表記が少しいい加減になっているのは勘弁してください。)。
男の巨神(ティタン)で、ウラノスとガイアの子どもたちの一人。
近年では、キーツが書いた「ハイペリオン」という詩に因んで、ダン・シモンズが書いた同名のSF長編が有名ですね。
SFの名だたる賞を総なめにしているので、面白いことは間違いありませんが、訳本は続編を全部含めてハヤカワSF文庫8冊で、1冊が400頁以上もある文字通りの大作です。
もちろん私も夢中になって読み通しました。
まあ、欧米人にとってはそれだけ喚起されるイメージが強い名称なのでしょう。

>ハイペリオンに含まれる質量は、太陽の1000兆倍以上と見積もられている。「誕生から約20億年後という初期宇宙にこれほど莫大な質量を持つ構造が見つかったのは初めてのことです。このような大質量の構造は、普通は時間が経った宇宙、つまり、巨大な構造が進化して形作られる時間がじゅうぶんあった宇宙にあります。ハイペリオンがかなり若い宇宙にあるのは驚きです」(伊・宇宙物理学研究所 Olga Cucciatiさん)。

これは暗黒物質も含む質量だと思います。
銀河系の質量が1兆太陽質量程度なので、初期宇宙にこれほど質量の集中した領域があるというのは驚きです。
ただ、銀河団は全体として重力的にまとまっていますが、超銀河団はそうではなく、宇宙膨張によりいずれ解体していくものと考えられます。

>ハイペリオンは非常に複雑な構造をしており、その内部には銀河のフィラメントでつながった密度の高い領域が少なくとも7つ存在していて、「コロッサス」「テイア」「ヘリオス」など個別の愛称が付けられている。ハイペリオンの構造は近傍の超銀河団とはかなり異なるが、大きさは匹敵するものだ、

銀河のフィラメントというのは、いくつもの銀河がひも状に連なった構造です。

>「近くの超銀河団では、物質の分布がもっと集中し、はっきりとした構造が見られる傾向にあります。しかしハイペリオンでは、つながり合っている塊の中で物質の分布は均一で、緩くまとまった銀河が集まっているようです」(米・カリフォルニア大学デービス校 Brian Lemauxさん)。
>こうした違いが生じたのは時間の長さが原因だろう。近傍の超銀河団は数十億年かけて重力で物質が集まり高密度の部分ができたが、若いハイペリオンにはそれほどの時間がないからだ。

超銀河団でも、各部分で重力的に引き合ってはっきりした構造ができているということですが、遠い将来には解体して銀河団が分離していきます。

>宇宙の歴史のかなり早い段階で巨大サイズにまで進化したハイペリオンは、さらに長い年月の後に、近傍宇宙に存在する「スローン・グレートウォール」や「おとめ座超銀河団」のような巨大構造へと姿を変えると予測される。「ハイペリオンを理解し、近傍に存在する同様の構造とどのように違うのかがわかれば、宇宙の過去と未来の進化に関する知見につながり、超銀河団の形成モデルを試す機会が得られます。ハイペリオンについて詳しく知れば、宇宙の大規模な構造の歴史が明らかにできるでしょう」(Cucciatiさん)。

おとめ座超銀河団の一番大きいメンバーは名前の通りおとめ座銀河団ですが、われわれの銀河系が属す局所銀河群も、おとめ座超銀河団に含まれます。
スローン・グレートウォール(Sloan Great Wall)は、10億光年程度の距離にあり、14億光年程度の長さがあります。
グレートウォールというのは他にもいくつかあって、これはスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)のデータから発見されたので、こういう名称が付いています。

宇宙で最も大きい構造がどうやって形成されてきたのか、その秘密も次第に解明されていくことでしょう。