宇宙初期の星形成に関する発見二つ | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

いずれもスペクトロ・アセニアムからです。

1.すばる望遠鏡、爆発的な星形成をする「ロゼッタストーン銀河団」を発見
すばる望遠鏡の2月1日付発表です。
http://www.naoj.org/Pressrelease/2011/02/01/j_index.html
長文なので要約します。

こぎつね座の一角に、非常に激しい勢いで星形成をする銀河の集団を発見。
この銀河集団(原始銀河団)は約110億光年(赤方偏移2.5)の彼方にあり、宇宙が生まれてわずか27億年しか経っていない、いわば宇宙の育ち盛りの時代にあたる。
銀河進化の研究に重要なこの時代における原始銀河団はまだ数例しか見つかっていない。

星形成率を調べる方法として、天文学者は電離水素の放つHα輝線(波長656.3nm)を利用してきた。
しかし、遠方銀河では赤方偏移効果によりこの輝線はどんどん赤くなって、距離が112億光年(赤方偏移2.7)に達すると、Hα輝線は近赤外線域(波長2.45μm)までシフトし、地球大気の放つ強烈な赤外線にかき消されてしまう(赤方偏移2.7の壁)。
より遠方の銀河については、波長121.6nm(紫外線域)のライマンα輝線(Lyα)や天体の紫外線連続光放射を調べてきた。
しかし、これらはダスト吸収に極端に弱いという問題があり、このため紫外線観測に基づく現在の超遠方宇宙の姿は実際に存在する銀河の大部分を見落としている恐れがあるという指摘もある。
「紫外線で見る宇宙」と「Hα輝線で見る宇宙」の両方をつなぐために、両方の情報を使える銀河を観測する必要がある。
HαとLyαの両方の輝線を同時に観測できるのは、100億光年~110億光年というごく限られた時代の宇宙であり、この時代に存在する銀河や原始銀河団は、それより近い宇宙(Hαの目)と、それより遠い宇宙(紫外線の目)を繋ぐ「ロゼッタストーン」のような存在である。

なお、ロゼッタストーンとは、1799年にエジプトのロゼッタで見つかった石碑で、古代ギリシア語と未解読の言語の両方で書かれていた。
後者は古代エジプト語であることが分かり、ロゼッタストーンはその解読に貢献したことで知られる。


2.宇宙の最初の星々は単独ではなかった
独ハイデルベルグ大学の2月3日付発表です。
http://www.uni-heidelberg.de/presse/news2011/pm20110203_sterne_en.html
英文なので、抄訳しておきます。

コンピュータ・シミュレーションにより初期宇宙における星形成に関する新たな知見が得られた。
初期宇宙での星形成は、従来、それぞれが孤立して行われると考えられてきた。
星は宇宙ガスの収縮により誕生する。
初期宇宙では炭素や酸素などの重元素が存在しないため、ガス雲は熱エネルギーをうまく放出できないことから、分裂することなくそのまま収縮して、質量が太陽の100倍を超す星が誕生するものと考えられてきた。
しかし、今回のシミュレーションによると、ガス雲が中心の星の卵をめぐる降着円盤を形成する段階で渦巻が発生し、その渦巻の複数の腕にいくつもの星ができることが分かった。
それらの星々の中で質量の小さいものは現在も生き永らえている可能性がある。

下の方の赤っぽい図をご覧いただきたいのですが、もっともらしい気がします。