自然科学の俳句・短歌から | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

朝日新聞2008年12月22日(月)
俳壇
 大串章 選
   凍雲の行きどころなく暮れにけり       (和泉市) 中島 伸也
・凍雲は、俳句では「いてぐも」と読むとのことです。
選者評:凍りついたように動かない雲。寒々と暮れてゆく天地。「行きどころなく」に実感がある。

 金子兜太 選
   風起こす口の形に冬の月           (大東市) 谷口 東香
・まるで木枯らしの源となっているいるかのような冬の月。
「風起こす口の形」は上弦の半月を過ぎて徐々に太りながら満月に近づいていく月でしょう。
この時期の月については、英語では"the waxing/new gibbous moon"という表現があるようですが、日本語では歴史的により詳しく何日の月という言い方をしてきたために一般的な名称はありませんね。

歌壇
 高野公彦 選
   金星ビーナス木星ジュピターダイアナ夕空に会すそれぞれの光まといて
                              (日立市) 鯉渕 仁子
・本年12月1日前後の天文現象をきれいに歌にしています。

 永田和弘 選
   いっしょだね生老病死の全過程わたしのなかのミトコンドリア
                              (新潟市) 太田 千鶴子
・ミトコンドリア共生起源説を踏まえていますね。
「パラサイト・イブ」もありました。

日本経済新聞2008年12月21日(日)
歌壇(2008年の秀作・上)
 岡井隆 選
   あるままに時間は青く燃えながら青蘆揺れて夜へと入りゆく
                              (取手) 長瀬 道子
・以前「血の濃ゆきからだ重たくふりむけば上弦の月しろじろと照る」を載せた方です。
実景は後半ですが、それを作者の心は前半のように受け止めたのでしょう。
参考までに、青蘆あおあしは三夏の季語です。

   果てしない宇宙の旅の遊星に子を生みたりし吾のあやしき
                              (生駒) 藤野 薫
・遊星は惑星の別名ですが、「果てしない宇宙の旅」をうまく受けています。
前半は無限の宇宙を旅する地球を詠み、それに後半いきなり自らの出産を対比させ、そのギャップから「あやしき」という感覚が生まれてくるのでしょう。

毎日新聞2008年12月21日(日)
俳壇
 鷹羽狩行 選
   いつとなく何時からとなく日の短か       (東京) 境 惇子
・選者評:言われてみれば、その通りである。それを今まで誰も句にしなかった。
お名前は「あつこ」さんとお読みするのだと思います。

08年回顧・短歌 梅内美華子
   あかねさすGoogle Earthに一切の夜なき世界を巡りて飽かず
                              角川短歌賞受賞 光森 裕樹
・「あかねさす」は昼、日にかかる枕詞。
梅内氏評:ウェブ検索の最大機関グーグルに支配されている私たちの情報世界。・・・ 次々と巡ってゆく先は明るく、画面をのぞく者の顔を照らす。

産経新聞2008年12月21日(日)
俳壇
 星野高士 選
   星ゆる宇宙の果ても近くなり       (東京・墨田) 本橋 須美子
・私はすばるやハッブルによる最遠銀河の記録更新を表現していると理解したのですが、読み込みすぎですかね(^^