時空の次元数について4 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

時空の次元数について1 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

時空の次元数について3 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

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 3.時間はなぜ1次元なのか? (承前)

もう一つの興味深い違いは、時間次元が複数(m>1)のとき素粒子が不安定になるということである。
時間が1次元のとき素粒子が崩壊しうるためには、崩壊先の素粒子の組が同一の量子数をもつというだけでは不十分である。
よく知られているように、元の素粒子の運動エネルギーがいくら大きいかにかかわらず、崩壊先の素粒子の組の静止質量の合計が元の素粒子の質量よりも小さいことが必要である。
時間次元が複数になるとき、この制約は消滅する。たとえば、
・陽子は、中性子、陽電子、ニュートリノに崩壊しうる。
・電子は、中性子、反陽子、ニュートリノに崩壊しうる。
・十分に高エネルギーの光子は、どのような粒子・反粒子対にも崩壊しうる。

これら2つの違いに加えて、時間次元が複数のとき「逆向きの因果関係」を意味する奇妙な事象を作り上げることもできる。

しかし、だからといって、どのような観測者も存在できないと決め付けることはできない。
自己意識をもつ存在は我々に似た人間的な生物しかあり得ないとする誤謬は、避けなければならない。
電子、陽子、光子は、運動エネルギーが十分に小さければやはり安定的であろう。
したがって、時間次元が複数の世界のかなり冷たい領域では、観測者が存在しうるであろう。

しかし、時間次元が複数(m>1)のとき、観測者に関するもう一つの問題が存在する。
観測者が自己意識と情報処理能力を使うことができるのなら、物理法則は少なくともある程度の予測を可能にし得るようなものでなければならない。
特に場の理論の枠組みでは、さまざまな近傍の場の値を測定することにより、より遠方の時空点での場の値を有限の誤差範囲内で計算することができる(未来の世界線に沿った時空点については特に有用である)。
この種のうまく設定された因果性が欠如していると、自己意識をもつ観測者が存在する理由がなくなるばかりでなく、(コンピュータや脳のような)情報処理系がまったく存在しなくなるように思われる。

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時空の次元数について5 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

★時間に関する節の2回目です。
前回は「時間次元が複数あるというのはどういうことか」を示し、今回は主に「素粒子の安定性」について論じました。
「逆向きの因果関係」については、残念ながらこの論文では詳しい説明なし。
最後のパラグラフは、この論文全体で一番力を込めて議論しているテーマである「予測可能性」の導入部分となっています。
近傍うんぬんのところは、近くのことが分かれば遠くのことはそれから大体は推し量れるはず。今現在のことから将来のこともある程度予測がつくということです。

次回はいよいよ偏微分方程式が登場する部分を取り上げるのですが、はっきり言ってこういう難しい数式を出すのは素人の科学好きを対象とする本トピの趣旨に反します(^^;
そこで、偏微分方程式そのものは出さないで、できるだけ分かりやすく噛み砕いて説明したいと思うのですが、いかんせん私自身がよく理解できていないので、どうなりますことやら。
そういうわけで、中身の質も保証できませんので、悪しからず(^^;