予選99.238点、決勝はAi最高得点となる99.775点をマークした小学五年生の北本莉斗君。
Ai最高点をマークする一方で歌い方で気になる点もありました。
予選の推定チャートは
音94安100表92リ99VL98 計483 99.238点(ボ1.989点)
莉斗君の強みは一目瞭然で安定100です。
ビブラートの上手さ10を基盤にしたものですが、詳しく後で説明しますが気になる点もありました。
YOUSUKEさんが安定96点を取っている事からも分かるように(YOUSUKEさんの違う曲は安定89点)、「ごめんね...」は安定が比較的取りやすい曲です。
前奏と後奏を除いた演奏時間が4分2秒と表現力90台後半を取るには厳しい曲のためどれだけ新加点を含めた表現力を取れるかが高得点の鍵となる楽曲です。
抑揚89点ですから抑揚99点なら表現力94点でした。
最高のパフォーマンスではなかったかもしれませんが、及第点以上の表現力で99点台前半まで乗せて圧倒的な力の差を見せつけての予選突破でした。
決勝の推定チャートは
音95安99表98リ99VL96 計487 99.775点(ボ1.000点)
し62こ91フ0
予選よりも表現力を高めた事でAi最高得点を大きく更新しました。
予選で100点だった安定性は駅でも99点と非常に高い安定性を記録しました。
Aiは1発たまたま引っ掛かって点数が出る場合もありますが、莉斗君の場合は点数が出る歌い方をしています。
そこが今回最も気になった点であり、Ai最高点を記録し、決してフロックではない莉斗君の歌い方を参考にする人が多く出る事を危惧しています。
これから指摘することは決して莉斗君を貶めようとするものではありません。
小学五年生ということで、指摘すべきかどうか迷いました。
98点台で終わっていたならスルーしていたと思います。
しかし、莉斗君の歌い方を真似する出場者が増えたり、莉斗君の歌い方が主流になる事はカラオケバトルの番組寿命さえも縮める結果になりかねません。
それだけ重大な事だと判断し、カラオケバトル出場者、カラオケバトルを目指す皆様にこういう歌い方は点数が出やすいものの手を出してはいけないという事を改めて認識して頂くために具体的にどこがNGなのかを指摘していきたいと思います。
まず高橋真梨子さん本人の原曲歌唱をお聴き下さい。
そして莉斗君のフル動画です。
もちろん原曲通りに歌えと主張するわけではないです。
原曲も歌として成り立つためのセオリーを普通に守っているという事を確認して頂くためにリンクを張りました。
莉斗君の今回の歌唱で最も懸念すべき点は、個人的に呼んでいる「スコアラービブ」を用いていることです。
精密採点にはスコアラーと呼ばれる歌を上手く歌う事は二の次三の次(多くは一切考えない)で点数を追い求めている人達がいます(主に音ゲーとして楽しむ)。
もちろんスコアラーのような楽しみ方もありだと思いますし、彼らを否定するつもりは一切ありません。
ただし、カラオケボックスで一人で点数だけを求めて歌う歌い方と、カラオケバトルというTV番組で披露する歌い方は大きく違って然るべきです。
特に精密採点DX-Gから精密採点Aiに変わって歌唱力と点数のバランスを高レベルで追い求めやすくなりました。
スタジアム時代であれば、莉斗君のビブに対してここまで懸念を表することもなかったです。
スコアラービブというのは、綺麗な波形のビブを掛けるために曲の流れの中で不自然なほど音量が大きいビブラートの事です。
スコアラーの歌唱を聴いたことがある人は納得して頂ける思いますが、彼らの歌唱はビブラートの時の声量が不自然なまでに大きいです。
安定性を取るには安定したビブラートを入れる事が非常に重要です。
そのために強いビブラートを掛けるのは理に適っています(しっかりした発声で波長の揃ったビブを掛ける)。
しかし、フレーズ終わりで優しく余韻を残すようにするのがビブラートの本来の役割のひとつでありますし、フレーズの終わりを基本的に強く長いビブラートで終わるというのは歌として成り立っているとは言えないと個人的に思います(ビブラートがぶつ切りになって浮いてしまい点数狙いが強調される)。
1番の最初のフレーズを聴くだけで違いがよく分かります。
好きだったの それな「の」「に」
原曲は「の」よりも直後の「に」の方を弱く優しく歌っています。
歌詞を考えても「な」を一番強くして「の」「に」と徐々に落とす方が適切だと思います。
莉斗君の「の」を小さく歌って「に」を強くフルビブで歌っていてビブラートが強調され過ぎて違和感を感じます。
何度も言いますがビブラートを綺麗に入れて安定性を稼ぐという点では大正解です。
スタジアムであれば息漏れビブは裏減点に繋がっていたので、スタジアムであればビブをある程度の強さで歌わざるを得なかったのは理解出ます。
莉斗君が決勝で歌った駅は堀優衣ちゃんが大学生大会決勝で歌っています(機種は精密採点DX-G)。
フル動画を見ると優衣ちゃんはビブラートをしっかり曲に合わせて使えています。
しかし、その代償として裏加点が減点されていました。
現在はAiですので息漏れビブの裏減点が存在しないので、優しくビブを掛ける事が出来ます。
スコアラーのような力を掛けて曲の中で不自然なビブラートではなく、優しく曲と調和した綺麗なビブを習得しようとするのがAi時代のあるべき姿だと思います。
もう一点懸念していることは、こぶしをこれでもかと入れる必要があるのではないかと誤解される事です。
莉斗君は予選で43回、決勝で91回のこぶしが入っています。
予選よりも多くこぶしが入ったから表現力が上がったと誤解して、こぶしを過剰に入れる出場者が増えないかと心配しています。
43回でさえ必要十分以上です。
こぶしは入れ過ぎると歌を台無しにしがちです。
無理にこぶしを入れようとすればなおさら不自然な歌になってしまう可能性が高まります。
こぶしを100回近く入れないといけないという流れになって欲しくないので明確に否定しておきます。
あるスコアラーはまだはっきりと分かってはいないと断っているものの
しゃくり60回こぶし60回アクセント40回ハンマリング40回
を提言しています。
この情報を参考に組み立てているカラバト出場者・出場希望者も多いかと思います。
スコアラーはこぶしを自由自在に入れる事が出来る事に加え、歌としての完成度は考えないのでこぶしをガンガン入れようとします。
しゃくりこぶしアクセントハンマリングの目安の回数は企業秘密なので公開したくないのですが、番組が変な方向に行く事は防ぎたいのでこぶしの回数についてサポートしている方々にお伝えしている情報を公開します。
「最低二桁、出来れば20回入れて下さい」
皆さんが考えているよりも少ない数かもしれません。
しかし、この回数でも十分な表現力を狙えます。
表現力98点を獲得した俵優馬君はこぶし1回でこの表現力でした。
俵君の場合は他の項目がこぶし不足をカバーしたのですが、極端な話こぶし1回でも表現力99点が狙えます(俵君は抑揚93点だったので99点が狙えた)。
Aiは歌唱力も追求しやすい機種です。
各出場者の良い歌を長く聴くために王道で点数を取る流れになって欲しいと切に願っています。
今回はたまたま莉斗君が最初にこのような歌い方で高得点を出したので莉斗君に対して厳しい内容になってしまったかもしれませんが、一番伝えたい事はこういう歌い方は点数が出るものの、TVで披露するにはそぐわないという共通認識を皆さんが持つ事です。
Aiは歌唱力をより発揮しやすい機種だと思うので、素敵な歌が長く聴けるように切磋琢磨出来たらよいと思います。
筆者もスタジアム時代とは比較にならないくらい点数と歌唱力の高レベルのバランスを考えてサポートしています。
<2021年4月5日追記>
2021年3月28日放送のU-18大会にて、莉斗君はスコアラービブを修正し、ロングトーンで真っすぐ伸ばしてからのビブを基本とした綺麗な歌い方で歌いました。
こぶしに関しても予選で23回、決勝45回と過剰なこぶしを入れることなく歌い、歌い方が改善しました。