生まれなかったことを
我々は神に感謝すべきなのだろう
そうなっていたら我々は
おそらく大変なことになっていた 』
Winston S Churchill
鉄のカーテンを言い出した
と言うよりそれを形成することに
腐心していた頃の
チャーチルの言葉だから
割り引く必要は多少あるかも？
しかしこの人が
つまりユーゴスラビア共和国の独裁者
ヨシップ・ブロズ・チトー元帥
（ 1892. 5 .7 ～ 1980. 5 .4 ）
この人
チャーチルほどの vip でも
15分から20分ぐらいしか
会見時間くれなかったらしいんだ
ユーゴスラビアの若き指導者と
会見したチャーチルがそう言った
ちなみにチャーチルが
そこまで褒めた人物は
他にはいない
アメリカの大統領でも同じ
しかしチトー元帥と
予定時間を大幅に超えて
長時間話をした V.I.P. が
世界に1人だけ
皇太子時代の今上天皇陛下です
天皇陛下の御経綸が伺える話でしょ？
太平総理が亡くなる直前
1980年・昭和55年5月だけど
旧ソ連がアフガニスタンに侵攻
そしてモスクワオリンピック西側ボイコット
大混乱の最中に
非同盟主義の巨星
チトー元帥が死んだ
もちろんアメリカからもソ連からも
そして共産主義国でありながら
国交があったバチカンからも
ほぼ全世界のV.I.P. が参列した
昭和天皇大喪の礼以前では
史上最大の葬儀になった
史上最大の葬式外交でしたね
そのくらい巨大な存在だった
結構エリートの
ドイツ人の友達がいて
大学時代そいつに聞いてみた
なぜチトーってのは
そんなにすごいのか？
そのドイツ人言ってましたよ
『 ドイツ人が強くなったのは
昔からでもない
おそらく30年戦争のせいだと思う
30年間戦争に明け暮れた
ぺストで大勢が死んだ
人口が10分の1になった
それ以後のドイツ人は
強いやつしか生き残っていないんだよ
自慢じゃないが我々はその子孫だ
他のヨーロッパのやつらとは出来が違う
地獄の試練に鍛えられている
そんな俺達ゲルマン民族でも
苦手にしてる奴らがいるんだ
バルカン半島人だ
千年近く少なくとも数百年間
戦争しかしてきていない
男も女も屈強な人間しか生きていない
我々ゲルマン人は
世間では戦争喧嘩が強いことになってるが
おそらくタイマンを張って
ヨーロッパで最強なのは
ドイツでもスウェーデンでも
ロシアでもイギリスでもない
バルカンの人間だ
マケドニア セルビア クロアチア
そしてヨーロッパ一野蛮なアルバニア
この辺りの戦争にちょっかいを出すと
ろくなことにならないんだよ
ユーゴのチトーは
あれだけ仲が悪い
血で血を洗う抗争をやってきた連中を
一人で束ねてきた
それだけでも
恐るべき人間だと言うことは
ヨーロッパ人なら誰だってわかる
彼について
わかっていることはあまりない
彼が幼い頃から
彼を殴って長生きした人間がいない
という事ぐらいだよ
クロアチア人が父親だ
だからセルビア民族主義を弾圧しつつ
クロアチア民族主義も
徹底的に叩いている
その危険性がわかっているからだ
チトーの後にチトーはいない
いずれソ連は崩壊するだろう
しかしその後でまた
バルカンで大戦争が始まるはずだ
ヨーロッパは全員が
ロシアを含めて躊躇するだろう
第一次世界大戦が始まった場所だ
第二次大戦が本格化したのも
ルーマニア油田とバルカンの権益で
スターリンとヒトラーが対立したからだ
バルカンは『地獄の門』なんだ
だから誰も手を出したがらない
スターリンの最初のつまずきも
チトーを敵に回したことから
始まっている
スターリンはチトーを憎み
大量の暗殺者 smersh を送ったが
皆殺されるか捕まるかした
切り落とされた右手だけが
返ってくることが
よくあったらしい
汝の右手が罪を犯したら切り取れ
右手だけが地獄に落ちる方が
ましだからである
と言うわけだ
これがバルカン流だ
あろうことかチトーは
あのスターリンに向かって
今後暗殺者を差し向けるような
ことがあれば
我々は逆に
ソ連に最強の暗殺者を
しむけることになるぞ！
そう言ってスターリンを
『恫喝』してるんだよ
チャーチルが持ち上げるのも無理ない
恐るべきタマだよ
ちゃっかりと
キリスト教徒でもないトルコ
そしてトルコと仲の悪いギリシャとも
緩やかな軍事同盟を結んだ
仮想敵国はソ連だ
それをだしにアメリカから
最新兵器の援助を無償で引き出している
非同盟の旗振り役は
戦争に強い国があまりないからね
チトーのユーゴは違う
いるといないとでは大違いだよ
国連の安全保障活動にも
早くから参加している
さらには共産国でありながら
バチカンとも早くから
正式な国交と協定を結んで
強力な情報網を作っている
バチカンには今でも
スイスの番兵がいるだろう？
しかし用心棒だったら
ユーゴスラビア兵は最強だよ
20世紀のスパルタ兵みたいなもんだ
バチカンもちゃんと計算してるんだよ
キューバのカストロも
たいしたタマだけど
喧嘩自体が強いわけじゃない
ユーゴは現実に喧嘩最強だよ
誰も手を出したがらない
ドイツも数百年がかりで
手なずけようとしたがダメだった
ロシアもイギリスも同じだ
あんな連中を束ねているんだから
それは大した奴だよ
チャーチルが持ち上げるのも無理ないな
『 バルカン問題 』は
ヨーロッパ人に永久に解けない謎だ
それを一時的にせよ
解決してみせたのがチトーだ
頭は切れまくり喧嘩も最強
鋼鉄の度胸と神経
しかも通すべきスジは通す
チトーだからできたんだよ 』
そんならしい
それにしても今上天皇陛下
チトー元帥との会見記録というのは
歴史的に大変貴重な
アーカイブですよね