『プレッシャー』

Dr:「歩けるようになりません」

リハビリ:「歩くどころか、足が動くかどうか・・・」

そう宣告された脊髄損傷の患者さんがいました。

高いところから落ちて、腰から下の神経を損傷して、両足がほとんど動かない状態でした。

お尻から足先までの感覚がほとんどない状態。

特に左足は、全くといっていいほど、動かないし、何も感じない。

もちろんおしっこも出ません。

精神的にも落ちており、表情が冴えない・・・。

そんな状態で、私が担当になりました。

最初のリハビリの時間で、身体全体の評価をします。

どれくらい感覚が残ってて、どれくらい動かすことができるのか?

足が動かなくても、見落としてはいけないのが、筋肉が動いているかどうか。

左足は、かすかに筋肉がピクっと動く程度で感覚はほとんど無し。

どこまで良くなるか本当にわからない状態でした。

でも私はその日のリハビリが終わった後、笑顔で・・・

「Aさんの頑張り次第で歩けるようになりますよ☆」と一言伝えました。

それから、約半年間・・・

きっと必死だったと思います。

少しずつ筋力がついてきました。

しかし、本人の中の感覚としては、足が動いてるかどうかさえわからない。

私たち健常者は、目をつぶっていても、自分の手足や頭がどこにあって、指を曲げると、曲がってるのがわかります。

それは、感覚あってこそのこと。

足の感覚が全くないので、動いていてもわからない。

触れられてもわからない。

痛くても感じない。

お湯が熱くてもわからずにヤケドをして初めて目で見て気がつく。

そんな大変な状況で、ロフストランド杖(写真参考)という杖で歩行できるようになり、車も両手で運転できるように改造し、遠出も可能となりました。

歩けないとDrに言われた患者さんを、歩けるようにするのが私の仕事。

私にもできる!!と自信を与えてくれたAさんとの出会いから数年・・・

今、転倒して骨折して急性期の病院に入院しているとのこと・・・。

その後は、本当は回復期病院を経由して、維持期の病院に転院してくるのが一般的。

でもAさんは、回復期病院を飛ばして私がいる維持期の病院へくるらしい・・。

・・・

なぜ?

・・・

私のリハビリをもう一度うけたいらしい・・・。

同じ病院内で理学療法士を指名する人はたまにみかけるが・・・

理学療法士を追いかけて、病院を移る人がいるとは・・・


ありがたいことです。


そんなAさんを受け入れてくれる勤務先の病院にも感謝です。

しかし・・・

また歩けるように頑張らないと・・・

プレッシャーの日々が始まる・・・。

でもそのプレッシャーが、私をまた成長させてくれる。