歓喜院聖天堂 貴惣門
歓喜院聖天堂は本殿が国宝に指定されている。これは国の重要文化財に指定されている貴惣門である。彫物大工は本殿の中心的な彫工が石原吟八郎といわれているに対してこちらは石原常八主信である。吟八郎の何代目になるか分からないが直系の系列になるのは墓地が共通であることからも間違いない。
聖天堂の彫刻は色彩がついいて綺麗であるが、こちらは欅に彫ってあるだけであるが彫刻としての完成度はこちらの方が高い。
まずは正面の目抜きの位置にである。虹梁の上の龍は子引きで左右は番にも見える。主信は子引き龍を多く彫っているが
こんなのは初めてではないだろうか。
左は母親らしく、優しさもみえ、右はいかにも父親の威厳が感じられる。水引虹梁も鷹の様に見えるがこれも父母と子供を表している様である。
子引きはこの番の龍の上の飛龍も子引きに見える。左の母龍の上は子飛龍で右の父龍の上が親飛龍である様だ。彫刻では翼の付いた龍を飛龍と呼ぶが、龍そのものが想像上の神獣で中国では翼の付いた龍は応龍と呼ぶ。応龍にしても鯉が龍になるとき翼が生えた状態とか、龍が空を飛ぶ能力がさらに優れて龍の最終形になったとか言われている。
中国では龍が九匹の子を産んで様々な力はあるが龍にはなれなかった言われ、子引き龍なんて日本の想像らしい、まして応龍に至っては子供がいるはずがないらしい。
貴惣門の内部側に入口上は玉巵弾琴である。玉巵とは絶世の美女で、一弦の琴を引き、白竜に乗って四海を飛遊し、玉巵がその琴を奏でるとたちまち百禽たちが集まり聞きほれるとか。天上界の女帝、西王母の末娘で、太真王の妻であることから太真王夫人とか単に王夫人とも呼ばれてる。
主信の作品では子引き龍が子引きが多くあるが、夫婦そろっての作品はここ以外には無いと思われる。もちろん主信以外にはまずないと思う。貴惣門の彫物は龍や飛龍に限らず、獅子や持送りの鳥まで子引きになっている。
貴惣門は岩国藩(山口県岩国市)士の長谷川十右衛門良治の設計という。利根川の大水害の復旧工事を幕府から命じられ、この時聖天堂の林兵庫正清と知り合った。十右衛門は斎部流工道の奥義を極めその名を知られていたそうである。また錦帯橋架け替えの棟梁も務めたという。十右衛門から設計図を受け取って、すぐにでも取り掛かるかに見えたが聖天堂の本体がままならない状態であったので資金面を含めて時間が必要であったという。
それから約百年弘化四年(1847)に発案、竣工は嘉永四年(1851)という。大工は林正清の五代目林兵庫正道という。正道は羽生の名門宮大工家の三村正利の弟で林家に養子として入ったといわれている。三村正利は早くの内に師匠で父の治朝をなくし、父の盟友であった、石原常八主信の助力で、野田の愛宕神社本殿を見事に仕上げたという。その後も多くの寺社を手掛けている。
平成28年発行の「熊谷市史別編 妻沼聖天山の建築」によると貴惣門の建築と彫刻で手掛けた彫刻師を石原常八主利とあるが、板倉雷電神社、大間々光栄寺、小川町八宮神社なども手掛けているとある事から頃は主信の間違いで主利はその長男で利信ともいわれ、石原常八の三代目といわれている人物と思われる。
主信は常八雅詖(まさとも)の二代目といわれているが雅詖69才の時の子になり、実の親は別にいると思われる。しかし、生まれた時から二代目を継ぐ運命であったことは明白で、雅詖の墓地は別の所にあるが、主信は石原吟八郎と同じ墓地にあるという。
複雑ではあるが吟八郎に息子がいた痕跡はなく、二代目吟八郎といわれている明義の墓もどこにあるか分からない。想像の域を脱しないが初代吟八郎の娘の子が主信の父親とも考えられ、雅詖の妹が吟八郎の後添えであるとするとその辺がすっきりする。
では主信の実の父親は誰かという事になる。思い当たる方はいるが証拠はない。誰であれ名門の御曹司である事は間違いなと思われ、主信のその才能が抜きんでていることは確か、目を見張る作品のオンパレードである。
寺院名 妻沼聖天山
所在地 埼玉県熊谷市妻沼1511
主本尊 大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)
文化財指定 御本殿(国宝)貴惣門(国指定重要文化財)他に国指定有形文化財 9件
貴惣門
建造年代 弘化四年(1847)発意 嘉永四年(1851)竣工年
大工 林兵庫正道 (設計 長谷川十右衛門)
彫工 花輪 石原常八主信・利信
(外部であるので車椅子で拝観可能です。貴惣門は拝観料はかかりません。本殿は拝観料が掛かります)
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(彫工の作品は建物の一部であるため取り外しは出来ず、出来ても、一点ものです。したがって商品として取引されるものではなく、正当な持ち主以外が持っていたらそれは、「ほぼ盗品」です。例え落ちていたもの拾っても、窃盗に問われる場合もあるし、知らないで買ったり貰ったりしても、罪に問われる場合があります。)










