演劇人生 -114ページ目
彼はどうしているだろう・・・
妻を亡くした友人のことである。
昨日会いに行き、
寂しそうな彼を見て一日になる。
何か、彼の寂しさがぼくの心にも
住みついてしまったような気になる。
いま窓を開けて周辺の高層層ビルの
窓明かりを眺めている。
一、二度深呼吸をする。
彼は14階に住んでいる。
東京タワーが見えていた。
彼は今ごろ何を思っているだろうか・・・
あの階から飛び降りたら、
瞬時のうちに奥さんのもとに行けるだろう。
もしかしたら、
彼を待っているかもしれないのだ。
「あなたは一人では生きられない人よ」
彼にささやく声が聞こえるように思える。
いや、彼には任務がある。
新築のビルが出来上がったとき、
この写真を真新しい部屋に連れて行く
その仕事が残っているのだ。
死ぬのはそれからでいい。
新しいビルの屋上からだって
飛び降りられるんだから。
彼からもらってきたように思える寂しさ・・・
それを感じようとすると、
このような思いに襲われてしまう。
明日にでも電話を入れてみよう。
六本木に住む友人がいる。
二人の子どもたちはとうに独立して、
夫婦2人住まいだったが・・・
3ヶ月前に奥さんが脳血栓で他界した。
彼から「会いたい」という電話を
もらっていたが、それから1ヶ月経た昨日
お昼の弁当を買って訪ねた。
親子どんぶりとヨーグルト、春雨スープ、
黒烏龍茶・・・
如才のない明るい奥さんで、
どこで出会っても
大きく手を振り声をかけてくれた。
旦那である彼の生活の大方は彼女の
支えあってのものだった。
昨年からビルの建て直しのために仮住まいの2人で、
新居は来年春の予定だった。
「それを待てないなんて・・・」
彼のことばは途切れた。
69歳だった。彼は75歳・・・
「悲しいのは当然だ」
「何をやっても面白くないだろう」
これは当然だということばしか思い浮かばなかった。
ぼくからの精一杯の慰めのことばだった。
「たいていは男が先に行くのに、
逆になりゃ、残された方は辛いのは当然だよ」
彼は「そうですよ」と即答した。
そして、「最近、我々の年齢の人が
死ぬニュースばかり多いのに・・・」
と嘆いた。
「しかし、それは違うなァ。確かに、
ニュースになる死亡記事は多い。
しかし、生き残っている人はその何万倍も
多いんだよ」
彼は、その一人である。
喪失感は拭い去りようもない。
じかし、それを背負わされることは
生き残るものの宿命なんだよ。
先に逝った人はそれを背負えないままだ。
折角、背負える人生を与えられたのだから、
しっかり背負って生きていこうよ。
こんな話をして帰ってきた。
北青山にあるイタリアン・・・
表参道といったほうがわかり易い。
「オステリア・マラネッロ」
先日、友人と渋谷で会った後、
自転車だったので、帰りにちょっと
・・・という思いで店前で片足をおろし、
2~30秒店内をのぞいてみた。
「う~ん・・・」
この後、約束がなければ寄ってと思うが、
そうは行かない・・・「さ、帰るか」と
思ったその時、「ごうさん!」と声がかかった。
長岡シェフと吉岡マネージャだった。
「見えたから飛び出してきた」
「元気?」
やぁやぁ・・・
この気さくさがこの店の特徴だ。
長岡氏といえば一流シェフである。
何にもまして、お客さんに美味しいものを
提供したいという気持ちの強い人だ。
どんなに手を尽くそうと、
お客さんが口に入れる時の様子を
真剣そのものの表情で観ている姿を
何度となく見ている。
「・・・・・」
今、何をどんな風に味わっているか・・・
彼の唇も微妙に動いている。
そして、「よしッ!」という表情はない。
役者として、このシェフを演じるのは
難しかろう・・・そんな思いを持ったことがある。
彼は旭川の出身である。
故郷は間もなく厳しい冬を迎える。
山形県天童市がぼくの故郷です。
そのふるさとで発行している新聞があります。
それに載った文章です。
「不思議」で書いたレストランでの演劇・・・
これまで4回、7ステージを制作してきました。
第一回目、表参道「オステリア・マラネッロ」
三園ゆう子の「母」(三浦綾子原作)語り&
映画音楽(菊池有希子のヴァイオリン)
第二回目、表参道「オステリア・マラネッロ」
ジャン・ルナール原作「にんじん」
第三回目、赤坂「新葡苑」
「赤坂6丁目カフェ」
(さとうまさみ作「高円津カフェ」から)
第四回目、赤坂「新葡苑」
「最後のひと葉」O・ヘンリー原作
この記事を見たというレストランから
連絡をいただいて、今度お伺いします。
それぞれのレストランの特徴を知り、
料理を知り、接遇のレベルを知らなければ
安易にOKは出せません。
レストランに高いレベルを要求すれば、
創る舞台にもそのレベルが要求されます。
これまでの多くがそうであったような、
「料理は美味しかったけど・・・」
「芝居は良かったけど・・・」
そのどちらも欠けてないプランが必要です。
また通常の客層の薄い曜日を利用しますので、
ランチであったりディナーしますが、
料金設定も無理のない様に
しなければなりません。
ランチは、¥3,000とすれば、
レストランに¥2,000、
劇団は¥1,000の割合です。
ディナーは些か値がはり¥5,000~7,000
対¥1,000の割合でした。
結果、その後、お店のお客さまの層も広がり、
劇団の観客層も広がってきています。
アドックがお芝居をした店の料理は・・・
「美味しい!」「満足ッ!」の声に満ちています。
また、このような小規模の公演活動ですが、
「不思議」に書いた「最後のひと葉」のお客さまと
「壁」のお客様との出会い・・・
劇団四季や○○座なら
あって当たり前といえる話かも知れませんが、
劇団アドックでは、その確率は奇跡に近い・・・
しかし、その奇跡のベースは
ここにもあるのは確かなのです。

