演出には立ち入ることのできない領域が、
それぞれの役者にあります。
それを無理にこじ開けようとするととんでもない摩擦が生まれます。
それがあるのは確かだけれど正体をつかまえるのは難しく感じます。
教養なのだろうか。
資質なんだろうか。
感性ではないのか。
生まれながらにして備わる天性というように理解する資質ですが、生まれながらにして天から授かる性質などというものがあるのだろうか。
・・・これは育てられ方や幼児期の体験、思考の経緯等によって裏付けられたり、あるものは定着したり、あるものは流動的で、その後の経験によって変化するものではないのだろうか。
これは統計もないし、私にはわかりません。
ここで取り上げている「セリフ音痴」も、音楽的素養とかではなく、上の部類に入るのかもしれません。
「おはようございます」
というたった一つの言葉をセリフにする難しさ。
役の人物・・・80数歳まで生きる人であれば、その人生の中の2秒にも満たない挨拶なのだが、その人の、その時だけの一回きりの「おはようございます」なのです。
何で、そんなに難しく考えるの?
と言われそうですが、「おはようございます」の最初の「お」の音をどうするかで、相手へのかかわり方(積極的か等)が変わってくるのは事実です。
つまりは相手のかかわり方へも影響を及ぼすのです。
必要で最適な音のセリフかどうか。
セリフ音痴かどうかにつながるというお話でした。



