「お前、死ね!」
「それで役者か?」
「馬鹿!」
「ダメだこりゃ!」
「それが芝居か?」
「木偶の棒!」
「こんな役者を食わしてきたと思うと情けないよ」
「お前みたいな奴と一緒の空気吸いたくないよ」
・・・何と言われても、言われないよりはマシなのである。
しかし、言われて反撥し、
やめる役者と、
喰いついて離れない役者がいた。
人格を否定されたと、相手を否定した人もいる。
こんな侮辱を受けるのは耐えられないと去った人もいる。
喰らいつく役者が、次に引き出す言葉は、
「悔しいか」
だ。
何故なら、これには返事ができるから・・・
「はい」
返事ができれば後が続く。
「で、どうする?」
「やります」
「何を?」
「この役をです」
「できないよ」
「できるかどうかわかりません。やるんです」
それから数ヶ月。
「あいつは、たいしたもんんだって言ってたよ」
公演の旅先の食堂で、
「夕べ飲んでる席で、お前のことを言ってたよ」
こんな伝え話を耳にする。
「・・・・」
「嬉しくないのかよ」
「いや、飲んでいての話でしょう?」
「いいじゃねぇか、喜べよ」
「ありがとうございます」
急に飯の味が変わった。
一人になり、台本に目を通す。
「・・・」
「おれは役者だ」
を心で呟く。
「旅路」「いそしぎ」はよかったねぇ。
エリザベス・テーラーと共演も多い。
「じゃじゃ馬馴らし」は傑作だ。