??????? | 演劇人生

演劇人生

今日を生きる!

母子が歩いていた。

自転車のブレーキをかけ、

片足をついてやり過ごそうとした。


何と、歩きながらとはいえ、

母親はiPhoneだかスマートフォンだかを

覗きっぱなしで、前方を窺う気配はない。

停止に近いぼくの自転車の方に歩いてくる。


5~6歳くらいの男の子は

母の洋服のすそを引っ張って

知らせようとしてくれた。

母は、「やめてよ!」と目を上げ、

やっとこちらに気付いて方向を変えた。

劇団生活

ここで、たいていなら、

ぼくに「ごめんなさい」は言わなくても、

子どもに対して「ありがとう」くらいは

言うのが当たり前と思いませんか。


「バカね、そんなに引っ張ったら、

危ないじゃないの」


危険を知らせようとした子どもは、

声を出さなかった。

そっと気付かせようとした子どもを思うと

涙が出そうになる。


気のいいぼくもムッっとした。

「バカは、親のあんただよ」

言いたいのをこらえた。


子どもを悲しませるかもしれないと思ったからだ。


ペダルを踏み出す気になれず、

歩き出した母子を見送った。

母親は相変わらずiPhoneか何やらの

画面をのぞきこみながら歩いていく。


子どもは後ろに続く。

・・・と、遠慮気味に(と思えた)、

子どもがこちらを振り向いた。

「・・・」

ぼくは、心で「ありがとう」と言った。


男の子は、向こうに向き直って走り出した。

母親の「ダメよ、走っちゃ。危ないから」

という声が聞こえた。


子どもは聞かずに走り、

店のたて看板のかげに入り、

顔だけ出してこちらをのぞき見ている。

笑顔だった。


「・・・?!」

ぼくは、

この一連の事態をどうとらえればいいのか、

わからなかったし、今もわからずにいる。


ただ一つ、

「あの時、母親に毒づかなくてよかった」

これだけは確かなことに思えてくる・・・

それ以外は、なんと言えばいいのか

さっぱりわからない。