ジャイアンツのコーチングスタッフ
木村拓也氏が逝去した。
カープからジャイアンツに移籍して、
今年からコーチとしてのスタートが期待されていた。
人の一生は分からない。
人は生まれたその時から「死のカード」を手にする。
生まれたもの全てに渡され、
何時も何処でも、わたしたちは持ち歩かなければならない・・・
それが、このカードなのだ。
十年前、知人の息子が中学3年で命をなくした。
サッカーの練習中の急死だったと聞く。
中学生ながら、プロサッカーチームから、
誘いを受けるほどの子だったという。
告別式は訪れる人の行列が数キロ続いたという。
以来、母親は抜け殻のように家に閉じこもったと聞いた。
「まだまだ、これからの人生だったのに・・・」
多くの人たちは、嘆きの思いを母親に送ったが、
彼女は返事を返す声を失っていたという。
人は、産声を上げることもせず命を終らせることもある。
100歳を越えて生きる人もある。
そのすべてが大きな使命をもって生まれてくるように、
ぼくは思っている。
人生とは、命を得たその人だけのものではない。
命を生み出した人、それにかかわった人、
その周りにいる人々・・・その人たちとの関りのすべてを
称して人生といえるのではないかと思う。
本人の命は、
本人のものだけと思うのは大きな間違いだ。
父や母は、今もぼくの心に生き続けているように・・・
中学生の息子を亡くした母親が、
劇団で上演した「母」を観劇してくれた。
この劇を通して、彼女はみごとに立ち直った。
その理由は聞いていない。
死を受け止めるにも生きなければならない。
死のカードを否定できる人は誰もいないだろう。
忘れていても、必ず、どこかのポケットに入っているカード・・・
このことを考えると、
今のあることを、しみじみ大切に思うのである。
いま耳にする音を大切にしたい。
いま見える風景を大切にしたい。
そして、あなたを大切にしたいと思うのである。