電話が来た。
以前の教え子からだ。
スケジュールに空きがあったら、
出演する演劇公演を観に来て欲しいという。
ところが、この電話で愚痴をこぼし始めた。
数回の稽古があったのだが、
演出が、ただ「声を出せ、声を出せ」
の一点張りだというのだ。
彼女は、このセリフは相手に聞こえるか
聞こえないか・・・ほどの囁きのはずだ。
いくら本を読み込んでも、それ以外はない。
・・・それなのに、「大きな声!」
を連発されるのが余程不満らしい。
稽古の合間に演出に直接聞いてみたらしいが、
「聞こえなければ意味が分からないだろう?」
そう言われたという。
先生には、書かれたセリフだからと言って、
全部を客席に届けなくていいと教えられた。
「このセリフは、それです」という。
ぼくは本を読んでいないから、
そのセリフが、ぼくの言ったことに
合致するかどうか分からないというと・・・
「じゃ、明日持っていきますから・・・」
本を読んでくれという。
「・・・・・・」
しばらく黙ってしまった。
熱心なのはいい。
ぼくの教えを覚えてくれていたことも
嬉しいのだが・・・・
「明日、改めて電話をくれ」
と言って電話を切った。
明日は、やることがあって・・・
そう言いたかったが、
「おれは、人がよ過ぎるなァ
」